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ゲットゴールのりお  作者: おしりファルコン
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大河内くん断罪

風紀委員会vs.不良2派vs.レジスタンスという未曽有の校内情勢。「かつての学校の王・大田」その後輩である野球部は火中の栗。野球部へのコントローラビリティを欲する風紀委員会は素行不良として「のりお」と同じクラスの「斎藤」を連行しようとするも、担当した「大河内」がレジスタンス「松平」の賄賂で調略され失敗。

5月17日、風紀委員会臨時会。


「次の議題です。」

「野球部2年生斎藤君のウェンディ認定が現場の判断で取り消された件について。大河内。」

定例会の司会進行は副委員長の長谷川。


大河内が起立する。

「大河内です。」

「のりお君を殴打した斎藤君のウェンディ認定は、近隣の生徒達から過度の反発があったため、現場の判断で取り消しました。」

大河内は言い終わると着席した。


「・・・」

「・・・」

驚いた表情のシャングリラとジョバイロ。


「・・・おい。」

長谷川は、顎を引き、メガネの中央をクイッと中指で上げながら言う。


「釈明にもなっていない、前へ。」

長谷川は厳しい口調で言う。


「え?」

大河内にとっては予想外の展開だった。

余裕で通るイイワケだと思った。


「前に来い!」

怒鳴る長谷川。

静まり返る平委員たち。


「いやあの、過度に反発された場合は現場の判断を認めるって長谷川さん言ってたじゃないですか・・・そっちはだいぶ前に言われたことですけど・・・」

大河内はスタスタとシャングリラの上座に向かって歩きながらイイワケを続ける。


「長谷川。」

シャングリラが口を開く。

ピタっと足をとめる大河内。


「あなたの責任じゃないわ。」

ため息をつきながらシャングリラが言う。


「あ、あの、すみません、過度に反発・・・すみません、あの・・・」

するとシャングリラの後ろで立っていたジョバイロが、ニコっと微笑んで右手を大河内に差し出し、近づいた。握手を求めているようだった。


「あ、あの、僕の判断は適切・・・」

そう言いかけて口を閉ざす大河内。

大河内はジョバイロの右手を右手で握り返した。


するとジョバイロは急に真顔になり、力いっぱい大河内の手を握った。


ギリギリギリリリッ!


「うっ・・・!」

「あ、あの・・・は、ははははは、ジョバイロさん!」


大河内も握り返した。

握り返さないと右手が壊れるため。


しかし、

「ああああああああ!!!やめ、やめー!」


ドオォッ


「がああああああ」


床に膝をつく大河内。

ジョバイロの力が圧倒的だった。


するとシャングリラが喋りだした。

「大河内。野球部をウェンディ認定して、それを取り消して帰ってくるなんて、どう逆立ちしても最悪よ。なんでそんなに堂々としているのかしら?」

シャングリラは長谷川をみている。


長谷川はブルブルと震えながら、しかし顔は険しかった。

「す、すみません、大河内を使ったのには、わけが・・・」


「そんなことはいいんだよ、長谷川。」

ジョバイロが大河内の手を握ったまま言う。

ジョバイロはニコっと微笑む。

「あえてこんなボンクラをけしかけた理由なんて、いま直面している結果論からみたら、もうどうでもいいんだよ。風紀委員会は、大田さんの後輩として野球部を扱う方針を転換した、ウェンディ認定はその布告だ。野球部が既に他の勢力と友好関係にあれば、その勢力へ、野球部の方から庇護を求める展開が予想される。だから布告と同時に野球部員を人質にすることが必須だったんだ。そうした意味で大河内は最悪だ。」

「しかし大河内は、どうしてそうなったのか、詳細な説明を一切していない。」

「大河内は明らかに隠し事をしている。」

ジョバイロは何がそんなに楽しいのか、にこやかだった。


「そうね。そうだわ。」

シャングリラは目を丸くして、ジョバイロを見ずに言う。


「収賄です。」

長谷川は答えた。

「根拠はなんだ?」

ジョバイロはニコっと微笑みながら長谷川に聞く。


「あああああああ!!!」

「いい加減にしろ!私の見立てだ!ジョバイロ!」

「おまえみたいにゴチャゴチャ理屈ぶら下げてられるか!収賄だ!」

「我々にだけ不利益な不測の事態なんだぞ!他に何がある!」

長谷川はジョバイロに怒鳴った。


「おおおおおお」

一斉に声をあげる平委員たち。

そしてすぐまた静まり返った。


するとシャングリラが軽く手をあげて長谷川を制する。

そして語る。

「落ち着きなさい、長谷川。」

「既に友好関係にある勢力が野球部を助け、我々の出鼻を挫くために賄賂を働いた。」

シャングリラは悩みに悩んだ。


そして、

「松平?」

シャングリラは大河内に聞く。


「え?」

大河内は時間が止まった。図星だった。大河内は、写真研究会の松平からシャングリラの昔の写真数枚で手懐けられた。

「えっと」

「えっと」

「うんとね」

「えへへ」


バキバキバキイイイイイイ!


ジョバイロが大河内の腕を捻り上げて骨を折った。


「ぎゃぁぁぁああああああ!」

大河内の悲鳴がこだました。


シャングリラは残念そうな顔をして、静かに言う。

「あらあら何を配っているのかしらね。油断できないわ、松平の場合。」

「長谷川。平委員全員の査問は、後日、私が直接やるわ。」


「は、はい。シャングリラ様。」

姿勢を正す長谷川。


そして今度は大声で叫んだ。

「いいかお前ら!誠心誠意、シャングリラ様の査問をうけていろ!」


それを聞くとシャングリラは満面の笑みを浮かべ、満足げに席を立ち


「みなさま、ごきげんよう」


と静かに言う。


するとジョバイロが下座に向かって大声で叫ぶ。


「はいっ!せーの!」


すると下座の平委員が声をそろえて叫ぶ。


「おつかれさまでございます!」


去っていくシャングリラに立礼する長谷川。座ったまま礼をする平委員たち。ジョバイロは共に退室した。


臨時会は閉会した。


つづく

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