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ゲットゴールのりお  作者: おしりファルコン
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君はウェンディ

シャングリラ率いる風紀委員会は、野球部員は微罪でも「ウェンディ」に認定し再教育イベントに強制参加させる方針を固めた。ただし野球部の有力人物「のりお」は除くとした。不良2派閥が野球部の自陣引き入れを画策していたこともあり、風紀委員会は野球部をあえて静観していた。しかし、のりおが抵抗勢力レジスタンスと協力関係にある可能性を考慮した結果、これまでの方針を転換して上記に至る。具体的に「のりお以外」とした理由は、のりおを再教育イベントに強制参加させた場合の戦局(風紀委員会vs.不良二派閥vs.レジスタンス)の変化が読み切れないため、そうした理由の慎重論からだった。

朝のホームルーム前の教室。

「佐藤くん、昨日の松平って子、いい評判聞かないよ?」

「違いない」

のりおは少し顔がニヤけた。

坂本はのりおのリアクションをみて危機感が沸いた。


「松平さん、写真愛好会の一人会長で、好き勝手に写真撮って、迷惑って人いるよ?」

「それは聞いた。新聞部が風紀委員会のお抱えだったから、そこ退部して自分で立ち上げたんだってさ。」


坂本は、そんな話もしたのかと、あきれた顔をしてしまった。

「へー。そういうの凄く頭の悪いことだってお父さん昔、言ってたなー。」

「そういってやるなよ、俺、もう松平のレジスタンスに協力したんだ。一応、仲間なんだ。松平は仲間。部活みたいなもん。」

「そうなんだ。お父さんはああ言ってたけど、私は凄く素敵な試みだと思うし、なんでもチャレンジするし批判にも負けない強い子だなって思ってる。そういう子が将来社長とかになって、ひいては日本を etc...」




そのあと、耳をそばだてて聞いていた小泉に「あんなんじゃだめだ、だめな女になる」と坂本は言われてしまった。



昨日、のりおから松平に伝えた内容の抜粋、

「シャングリラ:空手やってた。喧嘩してるとこみてない。」

「ジョバイロ:柔術やってる。喧嘩してるとこみてない。」

「長谷川:おうちが道場。負けたとこみてない。」

「その他の風紀委員:数知っとけばいい。」

「ラインバレル:木村鉄治。自分で救急車を呼んでから喧嘩をはじめる。」

「ビー玉:ラインバレルを唯一、てっちゃんと呼ぶ。」

「ミスリル:砲丸投げ。168cm72kg。病院送り8件、うち入院3件。手下が替え玉逮捕。」

「その他の不良:数知っとけばいい。」

以上を伝えた。


松平は聞くだけ聞いて、

「のりお目線じゃないか。あまり参考にならない。」

と前置きしたうえで、

「ミスリルの人望はどれくらいだ?好かれているのか?」

と聞いてきた。

のりおが

「大田さんの威を借る狐、みたいなところがあったけど素で面白いところあって嫌われてはいなかった。」

と答えると、少しだけ考えて松平は、

「ミスリルとタイマンして勝てば十中八九、ミスリル派はラインバレルのもとに帰るだろう。よってミスリルを潰して抗争を一旦終わらせる。」

と言った。

それを聞いたのりおは、仲間になる件、前向きに検討すると言った。

坂本がウザかったので、もう仲間になったことにしたが、本当はまだ検討中だった。




帰りのホームルームの前、坂本が話しかけてきた。

「佐藤くん、さとみ(小泉)が言ってたんだけどさ。」

「なんだよ」

「大学生だとさ、もう私たちくらい仲のいい男女のグループって。」

「うん?」

「付き合ったりするんだって。」

「へぇ」

「それで佐藤くんさ、いま大学生だったとして。」

「え?」

「誰と付き合ってると思う?」



「はーーーーーーー?!」

のりおは仰天した。

二塁ランナーだったとき牽制死したときの思い出がよぎった。

「ちょ・・・」

不覚にも耳が赤くなっている気がした、まずい、そう思ったのりおは小泉をチラッと見て

「こ、こいずみ・・・」

そもそもの発端だし大丈夫だと思った。助けてくれ小泉と思った。


すると、耳をそばだてて聞いていた小泉がガバァっとこっちを振り返って、

「ムリムリムリムリムリ!!!」

「ざっけんなこらてめえ!!!」

「撤回しろきさまーーー!!!」

顔が真っ赤だった。


将棋の強い人が言っていた。

悪い手を指した次の手が本当に悪い手。



「だって大丈夫そうじゃんお前。」

のりおは言ってしまった。

あくまでさっきの意味だ。

しかし、


ドカァッ!


斎藤に殴られた。

悶絶するのりお。

あまりの強打にしばらく机に突っ伏した。

のりおは、ありがとう、と思った。




しかし事件は次の日に起こった。

朝のホームルームの後。

先生がいない時間帯。

見知らぬ男子生徒が教室の入口に立っている。

皆がなんだろうなと思ったあたりで、大声で叫びだした。


「僕は!風紀委員!このクラスのウェンディ!斎藤君!むかえにきたよ!」


すると斎藤の机の手前までスタスタと歩き


「♪斎藤君、今日から君はウェンディ、でもきっと、いつかはきっと、優等生♪」


と歌いだした。


「今週金曜日から、再教育が完了するまで、斎藤君はシャングリラファイトクラブで長谷川副委員長とガチファイト!!!」

「毎週だからね!」


すると斎藤がガタっと立ち上がり

「嫌です!」

と言う。


すると次の瞬間、


プッシュー


「ぐあぁぁぁぁ!」


痴漢を撃退するアレを斎藤の顔面に吹きかけた。


そして

「僕は、大河内、ボクシングをやっている。」

「次は殴るよ?」

と言った。


「やめろっ」

半笑いの小泉が立ち上がる。

「斎藤を連行したらっ許さないぞーお」

半笑いのまま大河内を指さして、なんかポーズ決めながら、口調もおかしい。

よくみると手がフレミングの法則みたいになってる。


のりおが立ち上がる。

「とうとう来やがったな風紀委員」


「ボクシングやってるよ?」


「ボクシングなんて関係ねーよ」

「なあ斎藤?」

「え?」


ドカッ


斎藤をチラ見した大河内を一発殴った。


「この・・・」


構える大河内。

顔面がすっぽり隠れるくらいガードが高い

そして左右にダッキングしはじめた。


「ダッキング10001回できるからな・・・」

「お前が10000回できたとしても10001回目の攻防で勝てるんだよ・・・」


ドカァッ ガッシャーン


後ろから斎藤もいった。

強打した大河内は隣のカワの女子の机に突っ込んだ。


すると寶井が立ち上がって叫ぶ。

「野球部って!」

「人殴る集団じゃ!!」

「ねーからああああああ!!!」


するとまだ半笑いの小泉が言う。

「やめろっ」

「騒ぐなっ」

「おおごとになるっ」

「ひっ」

「闇に葬るぞっ」

さっきのポーズだった。


すると坂本が立ち上がり椅子を持ち上げる。

そして起き上がりかけた大河内を、


バキィ!


椅子で殴りつけた。


「これで悪いのは私!私がウェンディ!」


血が流れる額を手で押さえながら大河内が言う。

「お前ら絶対に許さん!全員ウェンディ!!!」




「待て!大河内!君に話がある!」


廊下から声がした。

松平だった。


「大河内!これをみろ!」


松平は教室にあがりこむと、写真をバラまいた。


「こ、これは!」

「シャングリラ様がシャングリラ様になられる前のお写真!!!」

「素晴らしい!」


「全部やる!」


「いいのか?!」


「家に腐るほどある!」

松平がそう言い切ると、

大河内は手近な数枚をサッと無言で拾い上げ、無言で尻ポケットに入れ、無言で教室を出て行った。


「おおおおおお」

クラス中がどよめいた。


「松平・・・」

「・・・のりお、そうだな、想定した以上に風紀委員会の手が早いな。」

「いやそんなことはいい・・・」


のりおは床に膝をつき、安堵の涙をこぼしながら、

「助かった」

と言った。


坂本は借りをつくってしまったと思った。


つづく。

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