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ゲットゴールのりお  作者: おしりファルコン
3/19

We are the Resistance !

中庭までの道中、かいつまんで、松平は校内の情勢を説明した。

そして自分たちレジスタンスが抵抗勢力であることも説明した。

「全然知らなかった」

と寶井は言う。


松平はキッと足を止めて振り返って寶井をみた。

「そういうの、すごいしらばっくれてるようにみえるんだけどな。」

松平は寶井を睨んだ。


「はいはい、わかりんこー」

のりおは松平を追い抜いてスタスタ歩いた。

遠目に中庭で誰か待っている人影が見えたため。


寶井は本当に何も知らなかった。

知らずに野球ばかりしていた。

そもそも暴力に関心のない少年だったため、大田在校中と現在の差分に興味がなかった。


一方、のりおは野球部が悪く思われているのは薄々感づいていた。

自分の存在で陰口に留まっている気もした。

喧嘩も増えたと思っていたが、寶井とは逆に場慣れしているから気に留めなかった。

ただ、3年生の間で、公開処刑や再教育イベントなどシャングリラの独裁が行われていることは部長経由で聞いていたし校内放送もみて覚えていた。


中庭にいる人影の中には、のりおの知る人もいた。

剣道部の烏丸からすま、科学部の藤倉、弟が野球部にいる吹奏楽部3年の八重樫先輩。

彼らがレジスタンスのメンバーか。


「おー、八重樫先輩がいる、したらなんだ、悪い人の集まりじゃないんだねー?」

寶井も八重樫先輩は知っていた。


「悪い、誰か一発殴ってくれないかコイツら。」

「私のこと女だと思って、さっきからなめてやがるんだ。」

松平が言う。


松平の目的、

1.不良グループ、風紀委員会に関する詳細情報を得ること

2.あわよくばのりおをレジスタンスに引き入れる

3.さらにあわよくば野球部とレジスタンスで同盟を結ぶ

そのための大前提が、野球部の潔白、その徹底検証。


すると一人、スタスタ歩いてきた。

剣道部の烏丸。

「俺がやってやる!」

烏丸は、ガンつけながらなんか言ってきた。

野球部なんてクソ、廃部にしろ、悪党の手先・・・

口調は丁寧語なので余計ムカついた。そこでのりおはつい手が出た。


ドカァッ!


「ハイハイハイハイ!」

「わかりんこ!!!」


のりおは殴った。右フック。ウザかったため。


殴られた烏丸は、衝撃で右によろめいた。

しかし右足でこらえた。


「く・・・この・・・」


ドドォォッ!


一瞬、右足でこらえた烏丸が右足を滑らせて倒れた。


「うっし!」

のりおは軽くガッツポーズをした。

フック系のパンチで力任せに殴られるとこうなる。


「そんじゃ俺ら、帰るな、なめてんのはてめーらだバーカ!」

帰ろうとするのりお。






「待てよ・・・のりお・・・」

「お前、こんなんして帰れると思ってんのか・・・」

意外にも寶井だった。

寶井はクソが詰まったような顔で正面を見ていて、のりおを見ていない。


「チクったりしねーけど・・・最低限・・・人を殴ってこんなんしたら詫びだ・・・」








「あらー」

「あらあらあらあらあらあら」

「アラァァァァ!!!」

科学部の藤倉が叫んだ。


「なーかーまーわーれー!」

藤倉のテンションが高い。



「勉強もスポーツもできるやつのせいで、勉強だけできる僕は忌み嫌われる存在だった!」

「ゲットゴールのりおなんて大嫌いだったぞ!」

藤倉はそう言うと近づいてきた。


のりおは藤倉も殴ろうと思って前に出た。

しかし寶井が肩をつかんで離さない。

「やめろのりお・・・お前いま許されるかどうかの瀬戸際だ・・・」

相変わらずクソの詰まったような顔。



藤倉は目の前まで来た。

そして得意げに言う。

「よし、僕のことも殴れよ、のりお!」


のりおは寶井をチラッと見た。

寶井は黙って手を離した。


バシーーー!


右フック。しかし手ごたえがない。

藤倉は右に首を捻って手ごたえを消した。


驚くのりお。

ゆっくり振り向く藤倉。


「残念!僕!喧嘩!できまぁぁぁぁす!!!」


「わかった、悪かった」

のりおは思わず謝ってしまった。


「てめーら、まじ、お天道様はみてるからな・・・・」

これが寶井の最後の言葉だった。

そのあと寶井は小声でブツブツ何か言っていた。



「お天道様がみてるってのは賛成だ」

「いま大田の手下だった連中が暴れてるのさ」

「野球部、後輩だったじゃないか」

「一応、弟から聞いてるけどさ、本当に何にもしらないのかい?」

「いっしょになって、なにかしちまったんじゃないのか?」

三年の八重樫が言う。


「いや、大田さんの手下だった連中とは、昨年にカラオケで忘年会して以来、疎遠です。ウチの先輩方みんなそうだと思います。」

「去年はサッカー部と喧嘩ありましたけど、大田さん卒業してからは何も。」


「何も悪さしてないのに疑っちゃ可哀そうか。」

八重樫は言う。


「いや、何も悪さしていないというか・・・」

「無理くないですか、逆に何したら信用されますか?」

のりおは素直に言った。


さっきまで機嫌悪そうだった松平。

しかし急にパァッと明るい表情になった。

そして言った。

「そうだ!その言葉が聞きたかった!」

「潔白な人間の典型的なセリフだ!」

「信じるぞ!佐藤のりお!」


「は?」


「レジスタンスに入れ!」

松平は目を輝かせて言った。


「あのなぁ・・・」

逆にのりおがキレる寸前になった。


「まて、のりお、まってくれ」

さっき殴った烏丸だった。


「あれくらいで殴ることはないだろう。俺は平気だが、損だぞ。」

烏丸は立ち上がった。


「俺たちは本気で学校を大田のいなかった頃に戻したい。しかし、恥ずかしながら何も手立てがない。色々と知っているくせに何もしない、そんなお前らに半分本気で文句があった。さっき殴った件はチャラにするから情報をくれ。」


おかしい、さっきより背が高い、とのりおは思った。


「情報って言われてもな・・・」

のりおはピンとこなかった。


「忘年会したんだろ、ミスリル、ラインバレル、シャングリラ、こいつらの手下に、最低限どんな奴がいるのか。できれば性格、主義主張、ファイトスタイルや戦闘能力など、教えてほしい。」


「ああなんだそういうのか、ならほぼ完璧に知ってるから教える。とっくに知ってんのかと思った。」

烏丸らの要求事項は、のりおが当たり前に知っていた内容だったため、頭の中で情報という単語に紐づいていなかった。のりおは大田のお気に入りだったため、大田が受験勉強を始めるまではしばしば連れまわされていた。よく知っていた。


「あの・・・」

「八重樫先輩、ひとついいすか?」

「先輩、3年じゃないですか。話聞く限り、レジスタンスとか、あぶなくないですか?」

「言っちゃ悪いけど徒手空拳じゃないすか。」


八重樫は答えた。

「3年生が1人もいないなんて可哀そうじゃないか。」

「吹奏楽部の仲間には言ってあるし、まだ1年の弟に手荒なことは、さすがにないだろ。」

「私は大丈夫だ。のりおも加勢しろ!ゲットゴール♪のーりお♪」



つづく

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