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ゲットゴールのりお  作者: おしりファルコン
12/19

ラインバレルさーん

20時から不良(正統派)と不良(ミスリル派)の和解交渉。その直前の一幕。

5月19日、19時。


校門前に集結した不良(正統派)28名。

彼らはラインバレルの指図でいったん校門前に集められた。


ビー玉が集結した不良達に言う。

「お前らは、いつも通りやれ。」

「てっちゃん、それから、俺と客分の松平と藤倉には仕込みがある。くれぐれも仲間内でツッコミはいれんな。めんどくせえからな。」


「わかったわ!」

「わかりました。」

「わかりました、ラインバレルさん。」


するとラインバレルが言う。

「場所はH7だ。わからねー2年は3年に聞け!」


H7とは廃病院倉庫。肝試しスポットで有名。

ちなみにHは廃病院を意味し、数字は詳細。



「H7だってよ。」

「大田さんがミスリルとヤった場所だ。」

「それはH4、廃病院の・・・」

「H4は死体置き場だったとこだ、そんな趣味じゃねーよ大田さんは。」

不良達は場所を確認がてら雑談する。


するとラインバレルが右手で前髪をかきあげながら言う。

「お前ら楽しそうだな?」


ハッとする不良達。

どよめいていた校門前がシーンとなる。


するとニカっと笑いラインバレルは言った。

「喧嘩しに行くんじゃねんだ。しっかりやれ。」


「はい!」

不良達は声をそろえて返事をした。


そして静寂。

5月下旬の夜。

夏のようで夏ではない。

この時期に特有の匂い。

予報では来週は雨。




「あの・・・」

すると不良の一人が恐る恐る近づいてきた。


「あの、ラインバレルさん。」

ラインバレルに話しかける。


「あ?てめ、なにラインバレルさんに話しかけてんだ2年。」

3年ゲーセン組の松本が割って入る。


「いや、あの言いにくいんすけど、ラインバレルさんとハタシアイしてぇって剣道部が・・・」

「・・・4人、俺んとこ来てて。」


ハハハハハハハハハハ


笑う不良達。

「え?いま?」

松本は確認する。


「はい、いまです。」


どよめく不良達。

「え?」

「え?なんで?」

「は?みんないるんですけど?」

全員、意味がわからない様子。

なんでわざわざ集結している時を狙うのか。


「剣道部!バカなのよおおおおお!」

岡崎が絶叫する。


「あれか?」

ラインバレルが、校門前の広場に面している剣道場、その脇にいる人影を指さした。



「あ、はい。そうなんですけど・・・」


バキッ


言い終わる前に松本が殴る。

「ラインバレルさんのお手煩わせてぇのか、てめんとこ来たら刺してでも黙らせろ!」


アハハハハハハハハハハ


笑うラインバレル。


「いいって。やってやるよ。岩田をヒデにとられて、喧嘩もせずにミスリルと和解して、なーんかスッキリしねんだ。はははは。」


そういって人影に近づくラインバレル。

なにも恐れていないかのようにスタスタと、両腕も普通にフラフラさせながら距離をつめる。


それに合わせて人影がササっとラインバレルの前に陣取る。

そして構える。

木刀。

その距離およそ5メートル。

ラインバレルを中心におよそ120°の扇形。

よく見ると緊張して息遣いの荒い者もいる。


「おい木村。てめえの手下の原山が岩田、重態にさせてよ・・・」

「もしかしたら岩田、二度とモノ握れねえかもしれねんだ。もう車椅子かもしれねえって。」

「許せねんだよ。マジで・・・」

剣道部員たちが言う。


「1、2・・・」

自分から見て左端から、指で番号をふるラインバレル。


「・・・3、4」

番号をふり終わるとふーっと息を吐いてしゃがみ込む。


「てめえええええええ!ざっけん・・・」

4が吠える。


「救急車1台お願いします。」

呟くラインバレル。次の瞬間。


ドゴオオオオオ!


右手に携帯電話。119番をしながら、3を左手で殴るラインバレル。

夜。黒の学ラン。踏み込みが見えないくらい速い。

軽量級特有。ビー玉や岩田にはないスピード。

ジャブ、しかし体の勢いと、縦拳から180°捻りながらの左。


カララーン


3の木刀が落ちる。


ドザァッ


3も地面に落ちる。



「おおおおおおおお!」

後ろで見ていた不良達が一斉に声を上げる。



ダダダダダダダッ


そのまま前方向にダッシュして逃げるラインバレル。


「ははは!3!」

倒した部員の番号を叫ぶラインバレル。



「やろおおおおおお!」

吠える4。


「追うな!追うん・・・」

場数を踏んでる2は不用意に追うことを諫める。


ザアアアッ ダダッ  ザッ ザザッ ダダダダダ


2が言い終わる前に弧を描きながらダッシュで戻ってくるラインバレル。


ダダダダダダダ


「えっ?え?え?」

その前方には完全に虚を突かれた1。一番手前に1。



「なめるなあああああ!」

1も吠える。


ザッ


1と交戦するであろうラインバレルを横から打突できるよう、1の右前で構える2。

この状況で何もできない4。


ダダダダダダダ


迫りくるラインバレル。


「ヤアアアアアアア!」


呼吸を整え、間合いを読む。


ダァッ


踏み込む1。

狙うはラインバレルの面。


ダダッ ダンッ


勢いそのままジャンプするラインバレル。


ヒュオオオオオオッ


その身体は、面を打突する1の木刀を越え、頭上を越え、後ろに抜ける。



「え?」

「ちょ!」

驚く2と4。


「うおおおおおお!」

急いで振り返る1。


ダンッ ダッ ドガッ


しかし着地と同時に反転したランバレルの両足タックルが1に入る。


「オオオオオオオオ!」

1を持ち上げるラインバレル。


「ラッ!」


ドガアア!


1を振り回し2にぶつけるラインバレル。


「うっ・・・」

「ぐぅ・・・」


ドサッ ドドオオオオオ


倒れる1と2。



「うっ・・・ああああああ!」

「うわあああああああああ!」

「ラ、ラインバレルさーん!」

「ラインバレルさん超強い!」

「ラインバレルさーん!」

不良達は大喜び。


ドサッ カラーン


腰を抜かし尻もちをついて倒れる4。

木刀が転がり落ちた。


「おい4。俺ら急ぎなんだ。車きたらお前でろ。3な。3。」

少し息が荒いラインバレル。


「岩田、岩田にそんなに恨みがあんのかよ・・・」

泣く4。


「ねーよ。無事だといいな。いつでも相手になってやるよ。ふっ・・」

そう言って不良達の元へ悠々と戻るラインバレル。


「てっちゃん!」

迎えるビー玉。


「おお、ヒデ。そうだ喧嘩は見てて楽しくねーとな。」

ラインバレルはそう言うと、廃病院に向けて走り出した。


5月下旬の夜。

夏のようで夏ではない。

この時期に特有の匂い。

予報では来週は雨。


皆、走って付き従った。

本当はチャリで行きたい連中も黙って走った。

それくらいラインバレルの背中が好きだった。


つづく

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