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ウィンザー城へ

わたしたちが次に到着したのはシェパートンという町だ。


停泊場所は通りや民家から離れていて、川沿いにあるちょっとしたプライベートの庭という感じのところにあった。

森林の中にあるので、ボート利用者以外は滅多に人はやって来ない。

Wのお気に入りの釣りスポットも近くにあるし、居心地がいいのでWは「2、3日ここに停泊する」と言った。


わたしと旦那、NAは特に急いでいる旅でもないので、Wと一緒にいることにした。


他のボート仲間たちは、翌日次の目的地に向かった。


仲間の人数が減ってもWは1人で3人分は賑やかなので、途中AもMAちゃんを連れて遊びに来たりと、楽しかったが、のどかな環境にいるのに、落ち着いてゆったりくつろぐのは、夢のまた夢だった。


シェパートンには有名な映画などがたくさん制作された歴史的なスタジオがあって、いつか見てみたいと思っていたのだが、結局3日間いつもと変わらないように川沿いでダラダラと過ごしてしまった。


3日目、わたしたちは一気にウィンザーまで向かうことにした。


道中、わたしはゆっくりと通り過ぎる景色を眺めながら、これからのことを考えた。

時間がゆっくりと流れているようでも、実は子供が産まれるまであっという間なのだ。


ラッキーな事にチャイルドシートやバウンサーなど大きいものは全て、Aや義姉など先輩ママたちからお下がりを頂いてあったので、あとはベビー服などの細かい物を買い揃えるだけだった。


なんと、わたしの母親がはるばる青森から、来ることになっていたので、母親と買い物に行くのもいいかと思っていた。


問題はベビーベットだった。

狭いボートにベットを置くスペースなどどこにもない。

少し前にある友人にその話をしたら、彼女は「ハンモックに寝かせたらいいじゃない。南米にいた時は親たちが赤ちゃんをハンモックに入れて木に吊るして畑仕事をしていたわよ」と言った。


いやいや、数時間ならまだしも、継続して寝かせるにはハンモックはどうかと思われます......

と思っていたが、それも真剣に考慮しておかなければいけないのかと思うほど、ベビーベットの場所確保は難しい問題だった。


旦那に相談すると、「ベビーベットもそうだが、子供がハイハイなど始める前に、床を新しいフローリングに敷き変えたい」と言った。


そうか、子供が産まれてしまったら、ボートの中がホコリだらけになる作業は難しくなる。

今からやっておかないと後々大変だなあ。

って、フローリング!?

ちょっと高いんじゃ......

なんか敷くだけじゃダメ?


旦那は衛生面と今後ボートを売ることを考えると、思い切ってフローリングを敷いた方がいいと言う。


それはそうなんだけど......

うちにそんなお金あったっけ?


わたしの頭の中はベビーベットとフローリングのことでいっぱいになった。

って言うか、どうしてわたしたちはいつもギリギリで何かしようとするんだろう。

のんきにクルージングなんて楽しんでていいのだろうか......?


よく考えると、赤ちゃんの時代はあっという間に終わって、子供は動き出す、走り出すのだ。

薪ストーブだって危ないし、ボートの外に出たらそこは川だ。

洗濯物が増えるとか水をたくさん使うとかの他に、考えなければいけないことはたくさんあった。


なんだかんだと旦那と話したり考えたりしているうちに、目的地に近づいていた。


思わず歓声をあげてしまうぐらい美しい景色が目の前にあった。

ウィンザー城だ。

木々に囲まれたなだらかな丘の上に、中世のお城が建っている。

そこだけが空に浮かんでいるように見える。


旦那は「ホリデー中なんだから難しいことを考えるのはやめて楽しもう!」と言った。

お腹の子供のことを思ってストレスを溜めないようにしているからか、いつも一緒にいる旦那に性格が似てきたのか、わたしも今のうちに楽しんでおこうと思い、考えるのをやめた。


心配することはたくさんあるし、いつも貧乏だけど、こうやってボートに乗りながら、テムズ川から美しいウィンザー城を見れるのは、すごく贅沢なことだと思った。


何も考えずに、ただ景色に見とれていて突然思いついた。

「ああ、わたしたちのベットの足元の壁に棚をつけて、そこをベビーベッドにすればいいんだ」

すごいことを思いついた。

旦那に言うと、「それはいい考えだ!」と言った。


考えているときは何も案が浮かばないのに、考えるのをやめた途端いい案が浮かぶなんて、わたしの頭の中は一体どうなっているんだろう。


目的地のウィンザーに到着した。

なんだかすっきりして、楽しいホリデーを過ごせるような気がした。


そして、いつもそう思うと、その後でまた何か問題が起きるのだった。

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