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新しい仕事

平和な正月も終わり、一週間後にわたしと旦那はオックスフォードの新しい職場になる施設に出向いた。


中は室内の大きな遊び場と幼児用コーナーと食事もできるカフェがあった。外には遊技場とピクニックができるエリアもあり、施設内にはプライベートで貸し切れるような個室も2つぐらいあった。

そして、スタッフルームも充実していた。


もとからそこは、子供の遊び場の施設だった。

経営困難に至って閉店し、それをわたしたちの雇用主がそのままの状態で買い取ったのだという。


施設自体は申し分ないのだが、しばらく人の手が入っていなかったので、施設内は本格的な掃除や改装が必要だった。

それなのに雇用主は、「一週間後にオープニングパーティーをする」と言って、わたしたちは泊まり込みでその準備をすることになった。

なんと、その一週間の間に新しいスタッフを数人募集して、面接し、オープニングパーティー当日から何のトレーニングもなしに働いてもらうのだそうだ。


なんだか全然何も計画されてなく、かなり行き当たりバッタリでいいのか?と疑問に思いながらも、わたしたちは一週間とにかくやれることをやり尽くした。


オープニングパーティー当日。

どこから呼んできたのか、三流芸能人までセレモニーに参加し、カフェも「新鮮で無添加の食材を使い、ヘルシーなメニュー! 」と宣伝しておきながら、キッチンの設備が追いつかず、結局サンドイッチなどありきたりのメニューと出来合いのオーガニックスナックやケーキなどを無理やり揃えただけだった。


朝10時オープン。

週末なのに昼ぐらいまで誰も客は現れず、午後にポツリ、ポツリと人が入り始めた。

心配していたが、とりあえず3時過ぎにはたくさんの人が集まってくれた。


わたしたちの雇用主と旦那が必死でショーをしたり、三流芸能人が聞いたこともない歌を歌ったりして盛り上がったが、カフェの食べ物が追いつかず、わたしとスタッフは機械のようにサンドイッチとコーヒーを作り続けた。

レジ担当の雇用主の旦那は、慣れない仕事に目が回ってしまい、ミスばかりしてメチャクチャだった。


わたし言えば、どんなにイギリス生活が長いからと言って英語が現地人たちに追いつくはずもなく、一度に色んなことを言われても意識が一瞬どこかに行ってしまったみたいになるので、相手がなんのことを話しているのか分からなくなり、ちょっと使えない人状態になってしまった。


「ふー、こんなんだったら、先が思いやられるよ」と不安になってしまった。


無事になんとかオープニングパーティーが終了し、これから改善しなければいけない課題はたくさんあった。夜中近くまで後片付けとミーティングに追われた。

雇用主夫婦と旦那とわたしは、ほとんど寝てなかったが、翌日からまた気分も新たに仕事を再開しなければいけなかった。


翌日、前日の賑やかさはどこへやら、集客はたったの3家族ほどで静かに1日が終了したので、わたしたちは久しぶりにまともにボートに帰ることができた。


夜7時に帰宅して、朝は8時出勤。

行きも帰りも旦那は運転をしなければいけないが、わたしはボウっと助手席に座っているだけなので、そんなに悪くない。

運転手の旦那には悪いが、わたしはまあまあやっていけそうだった。


オープンしてから3週間がたった。

週末は少し賑やかになるが、平日はガラガラだった。


わたしたちが働いていた施設は民家から少し離れた場所で、周りには工場や寂れた建物があり、バス停や電車の駅も離れていたので分かりずらく、車がなければ行けないようなところだった。

客を呼ぶには時間がかかりそうな感じだったのだ。


日々あまりにも暇なので、雇用主が「スタッフの働く日数をしばらく減らす」と言ってきた。

旦那はメインなので週5日出勤のままだが、わたしを含め、あと3人いるスタッフが週3日に減ることになった。


わたしは少し安心した。

スタッフたちとも慣れてきて雰囲気もいい感じにはなってきたが、なんだか毎日眠くて異常に疲れるので、日数が減るのは好都合だったのと、もともと時給が前の仕事の倍ほどだったので、週3日にしてもまだやっていけそうな給料をもらうことができたからだ。


その時、イギリスは冬真っ只中で例年よりも寒い冬だった。

もう少し暖かくなったら客も増えて賑やかになるだろう、と誰もが予想していた。


それが一ヶ月もしないうちに大変なことが起きて、思わぬ展開になることなど誰も思いつきもしなかったのだ。

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