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ビクトリアパーク

ビクトリアパークの停滞場所にいて気がついたが、たくさんあるボート生活者のほとんどが知り合い、または仲間同士で、ほとんどコミュニティー化していたのだ。


停滞期限はあってないようなものだった。

ロンドン中心部と違って取り締まりが甘かったのだ。

長く停滞しすぎて、カナルを管理している機関に警告を受けてからやっと移動するという感じだった。

もちろん短期滞在者も多いし、新しいボート住居者たちにも寛大だ。

皆がとてもフレンドリーなので、居心地は悪くなかった。

気がつくと、旦那は数日でたくさん友達ができていて、特にMAという旦那より少し年上のモッズスタイルを少し崩したような兄ちゃんと仲良くなった。

MAは古着屋さんで働いていて、彼にはSHというロック好きそうな若い彼女がいた。

そして黒いかわいい猫と一緒に、わたしたちと同じサイズのボートで暮らしていた。

モッズスタイルやロックと言えば、よく考えると、今までどの場所に停滞してもカナルの住民はオシャレさんが多かった。

みんなそれぞれ個性的で、しかもアーティストや映画のダイレクター、デザイナーと、クオリティの高い仕事をしている人たちが多かった。

同じボート住居者なのに、テムズ川の住民たちとは種類が違った。

テムズの住民はエンジニアや修理屋、大工などが多い。

だからかどうかは何とも言えないが、彼らはオシャレなどとはかなり縁遠い。

同じところと言えば、両者ともお酒好きでパーティー好き、そしていつもお金がなかった。

それでも、カナルのおしゃれさん達は、ちょっと高めのパブやバーに集まって飲むのが好きなようだった。

スタイルは違っても、稼いでいる分を娯楽に使うところはテムズ川の住民たちとあまり変わらない。

ということで、と言うかなんなのか、なんだかいつの間にかわたしと旦那も、気がつけば皆と一緒にバーで飲んでいたりしていた。


って、これじゃあテムズ川にいたときとほとんど変わらないではないか!?

まだボートに必要なものは全て揃っていないし、借金だってある。


わたしも旦那も八方美人なのか、嫌と言えないのか流されやすい性格なのか、それともただ単に楽しいこと好きなのか、仲間とツルんでいたいのか、自分たちもなんなのか分からないが、「余計なお金を使うから今日は参加しません」と言えばいいのに、ほとんど毎日彼らと飲みに行き、夏という季節も手伝ってか、ビクトリアパークで行われる野外フェスティバルで浮かれまくって過ごした。


旦那は休日になるとMAと古着屋巡りをしたり、アートの展示会などに行ったりしだした。


旦那よ、いったい何が起こった?


しかも「最近服も買ってない」などと言い出し、今まで絶対に思いつきさえしなかったモッズ風のジャケットまで買ってくる始末......


おいおい、今までTシャツとボロジーンズでハッピーに生きていたではないか......


これは大変だ。

旦那が変わって行く!


わたしは旦那が少し遠い世界に行きだしたことに気づき、そろそろ止めに入らなければ、と思いだした。

とは言え、今までのように酒を飲んで騒ぐわけでもなければ、バカのように飲みまくる訳でもなかった。

バーで少し飲んで、ボートの前か公園でビール1、2缶で仲間と寛ぐといった感じだ。

見た目も小綺麗になってきた。

話し方さえ変わったような気がする。


これっていいのか? 悪いのか?


でもまあ、影響されすぎというか、短期間でここまで変わるとは......


とりあえず旦那は新しい環境にすっかり馴染んでいるようだった。


わたしはと言えば、馴染むようにしていたといった感じだった。

当たり障りなく、問題も起こさないようにと。

なにせテムズ川のコミュニティーの倍以上の大きさと人なのだ。

安心感というよりは、正直に言うと気が張る。

なぜだか自分でもなんとも言えないが......


子供も産まれ、だいぶ離れてしまったWが来ることはほとんどなさそうだったが、また新しい仲間たちの中で色んなことが起きそうな予感がした。

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