買ったつもり 飲んだつもり
節約、節約と思いながら楽しそうなものが何でもあるところで暮すのは結構キツイものだ。
わたしも旦那も、気になるバーや洋品店などがあると、ついつい足が行ってしまう。
物は買わなくても見ているだけでいいが、クラブやバーを見つけて中に入り、飲まないわけにはいかない。
わたしは一杯で雰囲気を楽しんで十分満足できるが、旦那が飲む一杯は一瞬で終わる。
結局何杯か飲んで、その後面倒なのでテイクアウトなんかで夕飯を済ませようとしたからには、すぐに破産寸前だ。
ということで、一つの滞在場所につき、1日だけ外食か、飲みに出る日を設けることにした。
新しい停滞場所は2週間滞在可能だったので、その1日がとても貴重だった。
それでも外食なんてできるのだから文句は言えないが、できることならやってみたい、毎日のように外食して、どこかでゆっくりと飲んで、休日はおしゃれなカフェでランチして、その後雑貨などを買いに繰り出し。
わたしと旦那、そんなことばかり考えていたので、そのうち「買ったつもり」「飲んだつもり」で出歩いてばかりになった。
服屋に入ったら試着だけして「買ったつもり」、バーの窓からどんなもんかと中を覗いて「飲んだつもり」というように。
旦那なんかは缶ビール片手に店の中を覗き込むので、かなり怪しい。
TとJはさすが何度かロンドンカナルで生活を送っていただけあって、浮かれもせずいつも通りに暮らしていた。
それに比べて、わたしと旦那、毎日が発見の日々で観光者のようになっていた。
それでも、仕事から戻ると二人でボートで地味な夕食を食べてから「飲んだつもり」に出掛けて、週末はマーケットで見て回るだけでも十分楽しめたし、なかなか順調にお金をセーブしていた。
このまま行くと、念願のバッテリーとインバーターを買えそうだ。
これがあれば、発電機で電化製品を使いながら電気の充電もできるので、燃料費がかなり節約できる。
この先しばらくは、停滞場所がロンドンの中心地になっていく。
場所も楽しそうなところばかりだが、「買ったつもり」「飲んだつもり」でなんとかやって行けそうだ。
と、わたしは大喜びした。
旦那のビールの本数もテムズ川にいた時にくらべて激減した。
そして何よりも、二人だけでいる時間が増えた。
お金なんて使わなくても、旦那と小さなことを共有しあっている毎日が楽しいのだ。
季節は夏になって行く。
カナルの生活もどんどん楽しくなって、貯金にも心にも余裕が出てきそうだった。
って、人生そんなに素晴らしくできていない。
晴れた日が長く続かないように、カナル生活にもまた嵐のようなドラマがたくさん待っていたのだ。
その時はもちろん、この先にどんなことがあるのかも考えずに、やっぱりカナルに来て良かったと思った。
テムズ川の仲間がまだ恋しいと思うこともあったが、離れて暮すのは自分たちにとっていいことだと思った。