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予想外の出費

2008年10月。

イギリスは秋真っ只中だった。

もう水でシャワーを浴びるのに限界があった。


夏中、わたしは少しだけお金をセーブできた。と言っても貯金などとは言えない金額で、少し息を吹きかけたら飛んで行ってしまいそうな額だ。


旦那はあと少しで銀行口座マイナスから脱出できそうなところだった。

それでも、ボイラーを買うにはまだまだ全然足りない。


そんなとき、電気屋のSがタイミングの悪い、いい話を二つ持って来た。

一つはSがよく行くボートセンターで在庫処分で残ったボイラーを半額で処分したい、と言っていたと言うのだ。在庫は一つしかないので、今買わないとすぐに無くなるだろうとのことだった。


二つ目は、SとANが新しい発電機を買う予定だが、2つ以上買うと一つに対して二割ほど安くなるということで、わたしたちも一緒に買わないかと言う。


必要なものが二つもバーゲン価格で買えるチャンスだ。

でもわたしたちにはお金がない。


旦那が言った。

「二人でまた銀行口座マイナスにして買おう。どっちにしろ買う予定のものだ。マイナスにしてまた少しずつ埋めていくのと、貯金してから買うのは、あまり変わらないだろう」


えー!またマイナスにするのー?

しかも、少しではない。大きいマイナスだ。


わたしに考える余裕は無かった。


旦那が言うには、ボイラーは冬前に絶対必要だし、発電機を買えば、いつもWのに頼らなくてよくなる。

だからいつでもカナル(運河)に移動することができる、と言うのだ。


発電機までムリに買わなくてもと思っていたが、いつでもカナルに移動できると聞くと、やっぱり自分たちの発電機が欲しくなる。


結局、次の週にはボイラーも発電機も買ってしまった。


旦那はボイラーを交換して大喜びだ。温かいシャワーをいち早く浴びて幸せそうだ。

そして、念願の発電機が届いて、感動している。

発電機のエンジン音を聞いて、「オレだけの音だ。すばらしい!」と、訳の分からないことを言った。


わたしは、「ついに買ってしまったか...... 」と、少しショック状態だった。


3ヶ月後にはクリスマスが、正月がくる。

12月末にはボートのライセンスも払わなければいけない。

私書箱のお金も払わなければいけないし、ボートの保険だってある。

インバータとバッテリーだって必要だし、ボートのローンは容赦無く毎月引き落とされる。

このまましばらくマイナス生活から抜け出せないような気がして、気が遠くなりそうだった。


旦那はそんなことなど考える性格ではないので、満足そうにわたしに言った。

「オレたちの生活も、中流階級並みになったなあ」


は? 中流階級?

旦那よ、明日からは人並み以下の食生活だよ......


発電機もせっかく買ったが、ガソリン代が高いから、しばらくはあまり使えないよ......


そんな中流階級生活って、聞いたこともないけど。


秋真っ只中、わたしの気分は、すでに暗くて寒い冬真っ只中だった。

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