貧乏とは修行
春も真っ盛り、もう少しで6月になろうとしていた。
ボート生活を始めてから8ヶ月も経ったのだ。
そのわりには、わたしたちの生活は当初とあまり変わっていなかった。
まったく進歩がないのだ。
わたしの銀行口座はマイナスまではいっていなかったが、少し気を抜くとマイナスになりそうな勢いだったし、旦那なんてその時点で、まだマイナスから抜け出せないでいた。
家電のプラグは12ボルトのままだし、発電機だってWのを使わせてもらっている。
シャワーやエンジンは直ったが、これらだって、またいつ壊れるかわからない。
切り詰めた生活を更に切り詰めて、少しでも貯金をしておかなければ。
そう思っていた矢先、また壊れたのだ。
今度はボイラーである。
ジムの契約も切れてジムを脱退したので、シャワーはボートで浴びることになった。
少しして、急に水が熱くならなくなった。
お湯はエンジンでも作れるが、エンジンが故障したら、ガスで沸かすこともできる。
でもボイラーが壊れたら、どうやってもお湯は作れない。
ALも、Sも見てくれたが、どうやらボイラーが古過ぎて動かなくなったので、新しいのに買い換えなければいけないらしい。
日本円だと6,7万円はする。
ムリだ。
どう考えても、今の状態ではボイラーは買えない。
わたしは「またジムに加入する!」と主張したが、旦那は「ジムに使う分を貯金して、暖かくなってきたから、水でシャワーを浴びて、寒くなる前にボイラーを買う」と言った。
寒くなる前と言っても、イギリスは9月に入ると肌寒くなってくる。
3ヶ月程度でどれぐらい貯金できるのだろう。
でも、旦那の言うとおり、少しガマンすれば、いくらかは貯金できる。
そして少しムリしたら、ボイラーを冬前に買えるかもしれない。
わたしは泣く泣く旦那に同意した。
6月になって日がかなり長くなってきた。
夜の9時を過ぎても夕方並みに明るい。
それでも気温は低い。20度前後だ。
気温の低い朝や、夜にシャワーを浴びると心臓麻痺で死にそうなので、昼間の暖かいときにシャワーを浴びなければいけない。
ということは、夏らしくなるまでシャワーは休みの日にしか浴びれない......
気温が上がったとしても、水のシャワーは結構キツい。
わたしはいちいち「ひいい!」と言いながら、旦那は「うおおー!」と叫びながらシャワーを浴びることになった。
今度は一体、何が壊れるんだろう。
そう考えると恐ろしいを通り越して、脱力状態になる。
貧乏というのはかなりの修行だと思った。