シャワーが壊れた
冬の間、十分な暖房設備がなかったので、わたしと旦那はシャワーを浴びるのが恐ろしかった。
まるで修行でもしてるかのように寒くて仕方がないのだ。
ドライヤーも使えないので、濡れた髪のままで寝ると寒すぎて眠れない。
それでも、わたしも旦那も仕事に行くので、いつも清潔にしておきたかった。
ちょうどその頃、近くのジムで入会料無料のキャンペーンをしていた。
半年契約だと1年契約より割高だが、半年分の契約をした。
地域のコミュニティセンターが運営しているジムだったので、毎月の値段も手頃だったが、それでも二人分だとなかなか痛い出費だった。
しかも、ジムはほとんど利用せず、シャワーばかり浴びに行っていたので、それを考えると高くついていたと思う。
そんなわけで、その年冬、わたしはほとんどボートのシャワーを使わなかった。
冬の間中、ボートもあまり動かすことができないので、ジムの利用は水も節約できるし、本当に助かった。
3月に入って少し暖かくなって来たので、わたしはこのままジムの契約が終わっても、ボートのシャワーで乗り切れると思っていたある日、思いもよらないことが起きた。
わたしが仕事から戻り、バスルームに行くと、なんと!シャワーが壊れているではないか!
壊れているというか、壊された?
シャワーのホースが壁から外されていて、パイプがむき出しになっている!しかも、プラスチックのパイプがわざと叩き割ったかのように割れている......
シャワーに何が起きたのか!
旦那に聞くと、ボート仲間の一人がどうしてもシャワーが必要で、使おうとしたら水が出なかったのだという。キッチンの水道は普通に使えるので、旦那はシャワーのパイプに何か以上が起きたのかと思い、ホースを取り外したら、勢い余って壁に埋め込まれたパイプごと割れてしまったのだという。
旦那、大雑把なのは知っているが、ここまでやるとは......
どうせ、ホースがはずれないので、無理やりもぎ取ったのだろう......
それで、これはいつ直るのかと旦那に聞くと、「パイプはそんなに高くないから、すぐに買って、一週間以内には直るだろう」と言った。
わたしは、運良くジムに入会しておいて本当に良かったと思った。
なぜなら、シャワーは一ヶ月以上たってもそのままだったのだ。
パイプとシャワーホースは準備してあるのに、結局大ががりな修理が必要だったため、ボート仲間の一人が直してくれることになった。
ボート仲間たちは、電気屋、大工、エンジニア、アーティストなど、色々な人がいて、貧乏などしなくても良さそうなのだが、自営業のため、やりたい時に仕事をする程度の人たちがほとんどだった。
やりたい時と言っても、本当にいつ仕事をしているんだろうと不思議になるぐらい、遊んでばかりいる。
そんなわけで、ボート仲間に何かの修理をお願いしても、やってもらうまでの時間が長い。
皆お金をもらわず、ビール何本かを受け取るだけで、ほとんど無料でやってくれるので、あまり強くは言えない。
わたしたちも、どこか壊れるたびに修理屋を呼べるほどの余裕はないので、待つしかない。
この「待つ」という作業のために、わたしたちは何度も振り回された。
結局シャワーはジムの契約が終わるギリギリ前に直った。
焦った旦那が、何度か修理をお願いして、やっと修理屋は重い腰を上げてくれた。
ありがたいのか、なんなのか......
それから旦那は、何かが壊れたら、ただ仲間に修理してもらうのではなく、一緒に手伝って学び、自分でも修理できるようにした。
初めのうちは仲間に手伝ってもらうが、そのうち自分でできるようになる。
そうなったら、もう誰かに頼んだり、長い期間待たなくてすむ。
ボート生活はいろんなところが壊れたり故障する。
こっちが直ったと思えば、今度はあっち。
いつも構ってもらいたい子供のようだ。
金銭的に余裕があれば、いいクオリティーの物が買えるし、修理屋も呼べる。
貧乏なら、とりあえず安いもので済ませるので、すぐに故障する。
だからまた、仕方なく安い物を買う。修理屋も呼べないので、仲間がやる気になるまで待つしかない。
いつになったらこんな生活から抜け出せるのだろう。
わたしたちのボート生活初めての春は、故障、壊れるの連続で始まった。