18th shot
今回、さもするとR-18Gとされるやもしれない描写が発生しますので、拷問系の話は苦手、という方は読み飛ばしてしまって下さい。次回の前書きに18thのあらすじを載せます。
あの宴会の後、竜人の集落へどうやって行くかパーティで話し合っていると、丁度ここからその集落の最寄りの町までの護衛依頼があったのでそれを引き受けた。依頼者は商人で、キャラバンを護衛するのが任務となる。
この依頼の美味しいところは馬車に乗って旅ができる上に襲撃さえされなければ何もせずに金が貰えるところだ。商人と一緒に行くから道中何か見つけた時にすぐ買い取ってもらえるのもいい。
ちなみに襲撃されて商品が破壊されてしまって、弁償云々になったら関係者全員皆殺しにして、死に物狂いで逃げてきましたとギルドに報告する。おっと一瞬悪い顔になってしまった。
そのキャラバンの出発予定日にもまだ予定があるようなので、空いた時間で次の旅の準備をうちの紅3点に任せ、僕は直近の問題を解決すべく、歓楽街へと向かった。
そう、僕の悩みとはズバリ性欲処理だ。無論あの三人に劣情は抱いていない。確かに容姿は中々のものでもし奴隷商人の商品に居たら金貨30枚でも買ったが、汗をかきやすい鎧を着て、風呂に入らない全身汗蒸れ状態の女に興奮出来るほど僕は匂いに抵抗がない訳じゃない。まあ奴らも同じ感想を僕に抱いているだろうが。
そういった為にしかたなく、そう、しかたなく!娼婦と一緒に僕は連れ込み宿に入って行った。そこまでは良かったのだが、彼女と腕を絡み合わせながら連れ込み宿を出ると、偶然例の紅3点とばったり出くわしてしまった。
「お前・・・」
「うわぁ・・・」
「最ッ低! 死ね!」
「イヤ、待テ! 誤解ダ、君達は誤解をしていル!
いやだから待テ! エッチョッグッアアアアア!!!!」
×××
ガタンッゴトンッと馬車に荒っぽく揺られながら僕は馬車の荷台で微睡んでいた。時折寝返りを打っては荷台の狭さと腹部の打身に顔をしかめ、そしてまた、睡魔と仲良く散歩する。そんな小さな幸せを僕は楽しんでいる。
僕たち4人組への依頼は亜人の集落に最も近い町へ向かうキャラバンの護衛である。では何故僕がそのキャラバンの荷台の中でこの様にうたた寝をしているかというと、夜は僕が暗視スコープで警戒をしているので生活が昼夜逆転しているからである。因みに僕とドミニク、ルートビア姉妹で交互に警戒をしている為、ドミニクも幼い口元から涎を垂らして幸せそうに寝ている。当初は主にクロエが「こんな変態と小さな女の子を一緒にするなんて頭おかしいんじゃないの!?」と騒いでいたが、僕が連れ込んだ女性が普通に成人していることを指摘してやるとすっかり黙ってしまった。悔しそうな目でこちらを睨んではいたが。
そうしてふわふわと夢うつつでいると、キリキリキリと弓を引き絞る音が聞こえた。瞬時に僕の脳内では警鐘がならされ、意識を最短で覚醒させられた。全身の筋肉の緊張度合いを一度確認し、固まっているところを解してから一気に緊張状態へと移行する。
「おイ、起きロ。敵襲ダ」
僕はそう言ってドミニクの背中を荒っぽく蹴ると即座にキャラバンの荷台から飛び出て、その上に飛び乗った。横目には顔を強張らせたクロエが丁度矢を放っており、その矢の先には身なりから推測して盗賊とおぼしき集団が集まっていた。クロエが警戒している方向以外からも来ているようで、その総数は60程だ。
「シャルル嬢、クロエ嬢と僕が守っている部分以外を頼ム!」
そう叫ぶとクロエとは逆方向に飛び降り、即座に相棒のカスタムウィンドウを起動する。フルオートを適応し、口径を12.7mmに変更し、銃身をロングバレルに変更、装甲車に固定する用の一本足も取り付ける。そのまま相棒を召喚して強制的にカスタムウィンドウを閉じ、全身に力を入れて相棒を地面に押さえつけた。そして視界の端にいる盗賊へ銃口を向けると、引き金を引いて見える範囲全てを薙ぎ払った。
マズルフラッシュもリコイルも半端なものでは無いが、この数週間鍛えに鍛えた体はしっかり反動を受け止め、僕の視界内の動物をすべて完全に沈黙させた。ただし音と光だけは別だ。目眩と頭痛で思わずしりもちをついてしまいそのまま立てない状態が続いてしまう。キャラバンへは襲撃は届いてしまっているのだろうか。そう考えつつもへたり込んでいるとドミニクがこちらにより手を差し伸べてきた。
その手を借りてようやく立ち上がってからも、隊商が無事なことに気が付いたのはもう少し後の事になる。
「これハ・・・どうなったんダ?」
「ライフルマンさんが無茶するからバラバラになった死体を見て盗賊は皆逃げ出しちゃいましたよ」
「それハ僥倖と言えルのかナ」
「一応念の為、盗賊の内二人ほどは捕縛しているようです」
「ほウ」
つまり状況を整理すると、僕が盗賊を沢山オーバーキルしたらビビって盗賊は皆逃げ出した。一応誰かの指示なのか聞くために盗賊は二人捕獲している、と、そういうことだな。
「まあ80点ってところカ。
その盗賊とやらまで案内してくレ」
「はい。こっちです」
あまり顔色がよくないドミニクに連れられて例の場所に赴くと、全身傷だらけのシャルルと怒り顔のクロエがそれぞれ二人の盗賊を見張っていた。捕らえられた二人は二の腕と胸辺りを縄でグルグル巻きでかためられており、表情からも覇気の感じられない典型的なクズのようだった。
「よおお二人さン。
特にシャルル。どうやら獅子奮迅の活躍をしたようじゃないカ」
「……お前があんな無茶なこと言うから走り回ることになったんじゃないか」
僕のちょっかいにシャルルは肩をいからせて言葉を返してくる。確かに無茶なことは言ったし現状のご立腹具合も当然と言えば当然ではあるが。
「さテ、次いでダ。ちょっとそいつら借りるゾ」
「「え?」」
シャルルとクロエの疑問を無視して、僕は相棒をいつものカスタム、つまり口径5.56mmショートバレルセミオートのセットに変更すると、弾薬を魔弾に変更した。そして相棒を召喚してマガジン部に手をやると、確かに魔力が吸い取られていく。感覚として相棒の容量のうち三分の一くらいを満たすと、相棒の銃口からは淡く魔力が煙のように漏れ出していた。
その様子を見ていたシャルルとクロエは確かに驚いていたが、魔力の流れをさらに詳細に掴めるドミニクはもう夢中といった様子で僕の相棒を眺めていた。僕もあまりよくわかってはいないが、魔弾の生成を行う構造が彼女には見えるのだろう。であらば気分としてはベルトコンベアで流れ作業をしているところを見ているといったところか。面白いのもまあ分かる。
だが長々と彼女に相棒を見せびらかす訳にも行かない。僕は相棒の先を盗賊の内シャルルが見ていた方に向けると、そいつの腿に向けて引き金を引いた。軽い手応えと共に銃口から一閃の光条が走り、瞬時に標的に着弾、その後即座に着弾点を中心に炸裂した。青色の爆炎が小規模に広がり、撃たれた盗賊は縛られたまま不器用に身もだえする。そんな盗賊を押さえつけて傷口を観察すると、着弾点周辺は焼けただれ正に至近距離で爆発を受けた傷口に近かった。
これらから推測されることは、普通の弾薬を徹甲弾とすると、魔弾は接触信管付きの榴弾であるということと、その威力は爆発で拡散する分やはりというか普通の弾薬に比べて低いということだ。しかしながら射撃を受けた盗賊の息は異常なまでに荒く、これは魔弾のダメージが体力そのものを削ったという風に考えられる。これは爆発による衝撃が横隔膜まわりにまで到達し、呼吸行動を困難にさせた為とも推察される。つまるところ前世で言うところのRPGゲームの、体力や耐久力などもろもろ全てをひっくるめたHP自体をそのまま削る攻撃こそがこの魔弾であるということになる。
総評。この魔弾を使う場合は一撃で確殺というのは難しいためどうしても長期戦になりうる、と。
「ふむふム」
そうして幾分か考え込んでいると、シャルルがつりあげた目でこちらを見ていることに気が付いた。
「ん? どうしタ?」
「動けない相手を一方的に攻撃するのは感心しないな」
やはりというかシャルルの主張は甘いものだった。むしろ冒険者的には喜んでするべきだろう。
ま、彼女がどう言おうとも、盗賊がキャラバンを敵視している人間からの依頼でここを襲ったのなら一刻も早くこいつらを締め上げて情報を吐かせないといけないのだが。
「別にシャルル嬢の感心をかいたくてやってル訳じゃないからナ。
――それより盗賊ヨ。所属と目的と依頼者の有無を簡潔に述べヨ。さもなければ限界まで苦しめテから殺ス」
「ケッ。俺たちゃ誰の指図も受けねぇよ。
ドーガス盗賊団の特攻役だ。金目当てに襲った。他意はねぇ」
そう喋ったのは僕に撃たれていない方。こっちはもう片方と比べて肝は据わっているようだ。
しかし嘘を見逃すほど僕はお人よしじゃない。僕はカスタムでレイピアバヨネットを追加すると、喋った男の股関節、腿の付け根にバヨネットを突き刺した。そしてグリグリとねじり盗賊をいたぶる。
「ぐっああああああ!!!」
「ちょっ」
すかさずクロエが止めに入ろうとするが相棒を掴んでない方の手で制すると僕は盗賊に睨みをきかせる。
「じゃあもしクロエ達を捕縛しても一切手を出さずに売り払っタと?
嘘はそれこそ感心しないナ。むしろ女や奴隷が主目的だったンじゃないカ?」
尋問しながらも手は休めない。こういった細かいところにもアンテナを張る耳聡さも冒険者には必要な能力だ。それを冒険者の卵達に見せるには中々いい機会。つまりはこいつらは絶好の教材ということだ。
「という訳ダ。お前からは足を貰ウ。
ホレ、そろそろ神経も千切れたろウ」
「ちょちょちょちょっと待ってよ!
流石にやりすぎだって!」
ヌジョっと嫌な音を立てて相棒のレイピアを僕は引き抜くと、ぬらりと粘着質な動きで僕はクロエを見やる。
「じゃあクロエ嬢。キミがコイツを殺せばイイ」
「なっ」
「そうすれバ少なくともこいつはこれ以上苦しまなくて済ム。ダロウ?」
僕がそういうと彼女は悔しそうに、歯痒そうに押し黙った。
「そウ。君のいる世界っていうのはそういうところダ。分かるネ」
僕は俯くクロエにそう半ばうそぶきながら、ゆらりと相棒の銃口を先程実験台にした盗賊に向けた。するとその射線上には腕を広げたシャルルが居た。
「いい加減にしないか、ライフルマン。
お前がやっていることは明らかに人道から外れている!
こいつをいたぶるならまず私を撃て――」
「分かっタ」
僕はノータイムで彼女の右肩を狙って発砲した。勿論シャルルは前衛で金もある。しっかり手入れされた鎧の前では魔弾は殆ど威力を発揮できない。しかしながら衝撃は通る。
だというのに僕に右肩を撃たれ青い火花を散らすシャルルは、その衝撃よりもむしろ僕に撃たれたという事実にショックを受けているようだった。
「甘いんだヨ。キミ達はサ。
元仲間を殺るとき、粛々とやるのが傭兵、笑ってやるのが冒険者なんだヨ。これでライバルが一人減る、或いは取り分が増えるってナ」
「ライ、フル、マン……?」
か細く僕を呼びながら、見開いた目でこちらを見てくるシャルルを僕は冷たく突き放す。
「自分で言った言葉くらい、自分で面倒見なヨ。
さテ、そこな盗賊。所属と目的と依頼者の有無を簡潔に――」
「さっきの奴と同じだ! あと女!
目的には奴隷の確保もあった!
あと何人か逃がして、冒険者ギルドに討伐依頼を出させようって!
そうすりゃ盗賊団の名も上がって向こうからカモがネギしょってくるって団長が!」
「おーおー必死なコッタ」
目の前で奴のお仲間とシャルルを攻撃したのが功を奏したようだ。どこの誰が言ったかは忘れたが、交渉というのはどれだけこっちがイカれてるかを理解させるかが肝要らしい。そういう意味では僕のイカれ具合は存分に奴に伝わったということだ。
「さテ、もう盗賊達に用はなイ。こいつらを奴隷にして売り払おうとしても、奴隷商人の免許をダンナは持ってないだろうしナ。
フム。どうしようカ」
「じゃ、じゃあ――」
先程姉が即座に撃たれたのを見て怯えたのか、恐る恐るクロエがこちらに手を伸ばしてくる。だが、ここで情けを掛けてはいけない。徹底的に教育せねば。
「ウン、そうだナ。
お前ラ、片方は腿が焼けて、もう片方は片足が動かネェ。辛いよナ? 苦しいよナ?」
「た、助けてくれるのか!? 恩に着るぜぇ!!」
「そっちの嬢ちゃんは魔術師に見えるが、まさか俺達に?」
盗賊と、そしてルートビア姉妹が目に希望を宿し始めた。対照的にドミニクは俯き目を澱ませている。まるで僕がこれから何を言うか分かっているかのように。
「シャルル嬢、クロエ嬢。コイツらを殺して楽にしてやレ」
「「「「なっ」」」」
盗賊とルートビア姉妹の言葉が重なった。
「さっきからお前たちハ反応が同じだナ。そんなに気が合うのなラさっさと介錯してやりんさイ」
「おい、ライフルマン?」
「ちょっと、ねぇちょっと!」
ルートビア姉妹が困惑するなか、徐にドミニクが声を上げた。
「ライフルマンさんは、本気、だと思います。
確かに極端ではありますが、ライフルマンさんが言っていることは全て正しいんです。
それくらいは私にも分かります。恐らく、お二人がやらなかった場合は、更に怖ろしいことになることも」
その発言に僕は少し面を食らった。これはドミニクに対する授業でもあったからだ。彼女もまた冒険者歴は浅いだろうからと思ってのことだったのだが、むしろ彼女は教える側に立っている。
と言ってもまだ手が震えている辺り、まだ場数は踏んでいないようだが。それでもルートビア姉妹に教えるだけなら充分である。彼女の言葉は、殺さずに済むという淡い姉妹の希望を粉々に打ち砕いたのだから。
――キリキリキリ。
推測だが、すでに彼女の中では候補の内にあったのだろう。彼女は姉に比べると幾分か不純ではあるからだし、狩人の血がそう言っているのかもしれない。
涙を流しながら、クロエは小弓に矢を番え、至近距離にある足が使えない方の盗賊の頭に狙いを定めていた。盗賊の方も、やはりというか死期に抗うことなく目を閉じて頭を垂れている。
「どうせ殺られるなら変な話し方のバカ面よりかわいい嬢ちゃんだ。
――殺れ」
「……ごめん、なさい」
――パキン。
頭蓋骨が割れた音が響き、そして矢は頭蓋に埋まった。そしてドサッと盗賊は倒れた。
残りの一人も冷や汗はかいているが、もう生きるのは諦めたようだ。落ち着いているとは言えないが、わーきゃーわめくことなく、黙って目を閉じ歯を鳴らしている。
「おおお俺だって、死ぬときゃ死ぬさ!
さあ、殺れ!」
しかしながらクロエとは違いある意味では純粋すぎるシャルルは、未だ大剣の柄に手を掛けることすらできないでいる。
「ハァ」
僕が引き金に指を掛けたまま相棒を彼女に向けることで、ようやくシャルルは得物を構えた。だが、それだけでは一生そのままだろう。
僕はゆっくりと相棒の照準を盗賊の方に持って行く。じっくりとねっとりと、盗賊に死ぬ運命を、そしてシャルルに人を手にかける運命を理解させる為にライフルを見せつける。
そこまでしてようやく彼女は上段に剣を振り上げた。
「済まない。本当に、済まない」
そのまま彼女は大剣を重さに任せて振り下ろし、盗賊の頭部を切り落とした。
「しかシ、このままだト先が思いやられるナ」
亜人族の集落が救援を出す理由。それは本来農耕から狩猟までが全て自己完結するはずの小規模の集団では解決できない理由が出来たから。
そしてそれを解決するのに、公募ではなく指名というどうしても人手の少なくなる手法を用いることを鑑みると、その集落は人を寄せ付けたくないことが分かる。
ではこの二点から何が分かるのか。もし強力な魔獣が出ているといった内容なら集落に人の手は入りにくい。精々が寝る宿を冒険者が借りに来るくらいだ。
しかしながら集落の意思は人を寄せ付けたくない、であるからあまり寄り付かないこの仮定は有り得ないということになる。
では強力な魔獣ではなく、なおかつ人の手を借りては行けない少数民族の敵とは何か。
それが奴隷商とその子飼いの盗賊団である可能性は非常に高い。つまるところ、人の手を借りようとした場合、金に釣られて裏切られる可能性が出るから、集落は人の手など借りたくはないのだ。
その予測が当たっているとするならば、これから彼女達にはどんどん人殺しをしてもらわなくてはいけない。
「さて、どうなることやラ」
口径:12.7mm
弾薬:マグナム弾
銃身:ロングバレル
銃口:サブレッサ
銃倉:複々列
照準:1.6倍サイト
その他:反動軽減
一本足
口径:5.56
弾薬:魔弾
銃身:ショート
銃口:サブレッサ
銃倉:複列
照準:1.6倍サイト
その他:反動軽減




