17th shot
「では私が音頭を取ろう。
よし、それではダンジョン踏破を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕たち四人はジョッキをぶつけ合い、その内容物を少量撒き散らしつつも直ぐに口元へと持って行き、一気に飲み干した。
ちなみにそれぞれジョッキに入っているのは、シャルルとクロエは度数が少し高めなルートビア、ドミニクは水割りの蜂蜜酒、僕はエールである。選ぶ酒でも人が分かるというのだから宴席というのは面白い。ただしルートビアが飲み物であるとは僕は絶対に認めない。初めて飲んだときは即座に吐いた。原材料が木の皮とか雑草の根とか頭おかしいんじゃないか。しかも湿布味だ。
「前々から思っていたのだガ、何故二人はルートビアを眉一つ動かさずニ飲めるんダ?」
「ああ、お前もか。コイツをマズいという奴も多いが、慣れると癖になるぞ。ま、薬っぽい味はするがな」
「ていうか私達は生まれたころから飲んでるしさ。うちの村はワインとかも作ったりするんだけど、ああいうのは酒精が強すぎるから子どもはエールとかルートビアで慣らしてから酒を飲み始めるのよ」
「ホォ」
「ただ、うちの村のルートビアとは少しブレンドが違うようだ。ハーブの風味が強いから薬感は前ライフルマンが吐いた奴より強いかな」
「ウゲ。
・・・おっと忘れるところだっタ。
ちぃと色々して昼の内に稼いでおいたんデ、この場は僕の奢りとするヨ。
その代わり、コイツを僕にクレないカイ?」
そういって僕はあのジルニトラの指輪を彼女たちに見せた。勿論鑑定書付きで見せるし、詐欺まがいの事はしない。
「ドミニク嬢が装備してもそんなに魔力量増えないシ、かといって君達二人に魔力を使うアテというのもそこまでナイ。そんでもって実は、相棒が魔力弾を撃ちだせるようになったンダヨ。どうカナ? 売り払っても多分二束三文の品だシ」
僕の提案にクロエとドミニクはまあ納得したような表情を浮かべていた。こちらとしても安心だ。
「まあ奢りならいいかな」
「というか私はあんまり活躍出来ていないので、どうするかは三人にお任せします」
「おっそれジャア――」
「待った!」
指輪を譲ってくれと言ってから発言していないシャルルが急に声を上げた。何を言うつもりなのだろうか。
「まず、ライフルマン。お前に質問があるんだが」
そう問おうとするシャルルの顔は真剣そのものだった。
「もしかしてお前。この宴会が終わったらすぐに旅に出るんじゃないか?」
そのシャルルの質問は凄まじく痛いところを付いてくる。全くもってそのつもりだった。
「いや、まあ、ソノ、なんダ。そうダ」
それを聞いたクロエとドミニクの反応はかなり大きなものだった。
「では二人に聞くが、お前達はこれからもライフルマンとパーティを組んでいたいと思うか?」
シャルルの問いに首をブンブンと縦に振る二人。ああ、やはり二人とも、そしておそらくシャルルも同じ考えだったのだな。そろそろ一人旅に戻りたいのだが。
「そうか。私もそうだ。
そこで、だ。最後までダンジョン攻略に付き合えとは言わん。
その代わり、次の旅も私達を連れて行ってはくれないだろうか。これを呑んでくれれば指輪の件も勿論承諾しよう」
「ンナッ!?」
そう、彼女は戦利品を人質に、僕にまだまだ粘着しようとしているのだ。正直こいつら三人パーティでも十分通用するし、今こそ冒険者ギルド加入したてのぺーぺーのEランクだが、僕と同じCランク程度ならすぐ昇格出来るだろうし、あるいは今回の地図を作製したメンバーの一人として即座にC級に昇格されてもおかしくない。
正直言って何故この子達が僕に粘着しようとしているのか理解に苦しむ。本音を言うともうスッパリ関係は切りたいが、しかしながらこの冒険者の卵に親心を抱きつつあるのもまた事実。
「はァ。まあ仕方ない、カ。分かっタ。それで手を打とウ」
「いやそれだけじゃない。これは出来ればでいいんだが、旅の目的地も私達で決めさせてくれないか」
僕が了承した直後の藪から棒な質問に僕がきょとんとしていると、シャルルは徐に事情を話し始めた。
「そもそも私達は世界を見て回りたいという欲求もあって冒険者を始めたんだ。だから、ダンジョン攻略という最初の一歩を経験出来た今、次はヒト以外の種族の集落を見てみたい!」
最初は滔々と、しかし最後には熱く自分の思いを語ってくれたシャルルだったが、これは実は渡りに船という奴なのだ。と、言うのも、実は亜人の友人から指名で依頼が来ていたのだ。うだつのあがらないCランク冒険者で指名というのも珍しいのだが、僕は冒険者というよりも旅人という方が近いから顔が広く、かつランクも高くないから報酬が安く済む。そのおかげでこういった指名の依頼も来ることは来る。
「合い分かっタ。タイミングがいいというか、次の目的地は亜人の集落だ」
「ホント!?」
先程熱く語ったシャルル以上にクロエが目を輝かせて反応する。
「ああ。しかもレア中のレア種族、ドラゴニュートの集落へ行ク。そこから指名依頼が来ていてナ」
「「「ドラゴニュート?」」」
ルートビア姉妹だけでなく、ドミニクも反応する。彼女自体も確か新米の冒険者だったはずだから知らないのも無理はない。
「竜人といえば分かるカ。そうさナ。分かりやすく言うと、知能があって直立二足歩行の身長2m30cmぐらいのドラゴンダ」
「えっえっ!? なんでそんな凄そうな種族から指名依頼が!?」
「そこまでは知らン」
何も言わないドミニクでさえ目を輝かせている。確かに竜というのは冒険者にとっては憧れの存在だろう。
「ま、お前らが期待してるほどいい方向にはいくまいヨ」
どうにも悪い予感がするのだ。
加えて僕にはもっと直接的な頭痛の種もあるので、それをどうにかする方法も模索していかないといけない。
口径:5.56
弾薬:魔弾
銃身:ショート
銃口:サブレッサ
銃倉:複列
照準:1.6倍サイト
その他:反動軽減




