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異世界アサルトライフルマン  作者: 夏松秋蝉
ジルニトラ編
14/33

14th shot

 とても広い、例えば身長5m越えの巨人が暴れまわっても問題ないくらいに広いこの空洞で物を見るのに灯りの類はいらない。何故なら床や壁に点々と生える鉱石が発光し、灯りの代わりをしているからだ。さらに足元を見れば薄ぼんやりとした光を放つ印が所狭しと這いまわっており、松明に火を灯す必要はないと言っていい。

 そんな幻想的な風景に、一つ無粋な影がある。

 岩でできた人影――といっても指まで再現している訳でなく大雑把な人影ではある――は巨体を持っていた。少なくとも身の丈5mはあるだろう。

 さて、そんなゴーレムはまことに残念ながら敵対的である。

 しかし、先程僕を吹き飛ばしてから叫び声を上げたが、それ以来全く動きがない。恐らくは広間に踏み込んだ侵入者の分析をしているのだろう。逆に言えば使役者のいないゴーレムということでもあるが、自然発生したゴーレムではないことも言える。本来ならもっと支離滅裂で単調な動きを見せるからだ。

 つまるところ、目の前にいる岩の化け物は魔法で編まれたルーチンに従って動く、戦闘用ゴーレムであるということだ。

 では何故今静止しているにも関わらず僕は殴り飛ばされたのか。それは恐らく、敵を分析する、という行動よりも近くにいる敵を吹き飛ばす、という行動の方が優先順位が高かったからだろう。事実、一番前に居た僕だけが吹き飛ばされ、僕より後ろにいた女性3人は攻撃を受けていない。


「ドミニク嬢。あのゴーレムの体ハどんな魔力分布をしてル?」


「えっと・・・人間で言う骨みたいな感じで四肢と頭に魔力が広がっています。形状は線ですね。それで形状が点の魔力が頭部に幾つかと、胸にも点が一つあります」


 魔術士は魔力を感じ取る事ができるから、こういう風に魔法生物がどう動いているのかある程度知ることが出来る。

 その情報と僕の勘から合わせるに、頭部に感覚器官が集中、一番大事なコアは装甲の厚い胸部にってところだろう。


「なるほド」


 ドミニク嬢は冒険者としてこなれているだけあってオーダーにはすぐに反応してくれる。ついでクロエが口を開き始めた。順応するスピードとしてはまあ及第点より下だが、それでもいわゆるクリーチャーを見てフリーズしていないだけマシだ。


「つまりどういうこと!?」


「アイツは頭に目と耳が付いてて心臓と脳が胸にあるってことサ。

 クロエはやつが動き始めたら投擲や弓での射撃で頭部を狙ってクレ。感覚器官に衝撃を与えれば動きも鈍るハズだ」


「なら私は!?」


 シャルルも同じく立ち直るのに少し時間がかかっているようだったが反応は出来ている。


「お前は奴の肩口や二の腕を狙ってくレ。右左は任せるが、とにかく相手から攻撃の手段を奪エ。

 シャルル嬢のグレートソードは刃渡り自体はそこまで広くナイ。半分鈍器だしイケルナ?」


「ああ、勿論だ。

 ライフルマンは私が振りかぶったりする為の隙づくりを頼む。

 ふ、ガーディアンやシューターにやらせる仕事でもないがな」


「了解しタ」


 そうやってお互いにやることを確認し合ったところでドミニクが叫ぶ。


「ゴーレムの魔力活性化!

 来ます!」


「アア!」


 このフロアの守護者が一歩前へと前進する。と、同時に僕は一直線にゴーレムに突撃した。射程に入った瞬間ゴーレムが右腕を叩き付けてくるので、その腕に添えるような形で斜めに盾を構えて衝撃を横に逸らしつつ自身も逆方向にステップを踏む。そしてバヨネットでガスガスと右腕の肘を切りつけつつ、左腕を警戒する。するとゴーレムは叩き付けた右腕をこちらに向かって床にすりながら振り回してきたので、飛び跳ねつつ盾を下面に向けることで防ぐ。そしてすでに振りかぶっていたゴーレムの左腕を射撃して殴打の軌道を逸らしつつ自身も射撃の反動で移動する。そこへクロエの投石がゴーレムの頭部にクリーンヒットしたことでゴーレムは僕を捉えきる事かなわず左腕を空振りした。そこでようやく僕は床に着地出来た。

 そしてその伸びきった左腕に対して待ってましたと言わんばかりにシャルルが全力の縦切りを叩き付ける。岩で出来た二の腕にはひびが入り、下腕と上腕の接続も怪しくなっている。またそのダメージを物語るかに、ゴーレムに出来たヒビからは光る鉱石と同じ光が漏れ出していた。


「ypaaaaaaaaaaaa!!!!」


 ダメージを食らったことに反応して叫ぶゴーレムに動き回る予備動作が見えたので即座に頭部をセミオートで射撃する。例え一発一発は軽くとも、接射すれば岩でも3cmは穴が開く射撃だ。ゴーレムの頭部が少しずつ削れていく。

 当然ヘイトは僕に溜まっていき、ゴーレムの反撃も僕に集中していた。

 右腕の横の振り回しはスライディングで回避、左腕の振り下ろしはダイビングロール回避からのヒビ部分に射撃。右腕のストレートは盾で受け流しつつ頭部に射撃。そこでまさかの前蹴りを食らって一回二回と世界が回って見えてから僕は地面に着地する。


「グッ。なんだイ、案外アイツも体柔らかいじゃないカ」


 そんな僕に向かってゴーレムが歩みを進めようとしたところでまたシャルルの大剣の横薙ぎがゴーレムの左腕に直撃する。更にヒビが広がる、が、砕けない。ヒビから漏れる光が強くなっただけで動きにはなんら支障は出ていなかった。

 そこでクロエがゴーレムの頭部を狙撃、矢は弾かれたものの、かなり近い距離からのそれは大幅に頭部の岩を削った。その攻撃から更に畳みかけるように、クロエはゴーレムの周囲を回るように移動しながら頭部を狙って投石し続ける。


 そこでヘイトが完全にクロエに移ったと確信できたところで、ドミニクがこちらに近づいてきて片手を僕の背中に添える。


「ヒール。

 もう少し、頑張って下さい」


 彼女が短く詠唱した瞬間みるみるうちに痛みが引いていく。が、ズシンと重い一撃を受けたことによるダメージと削られた体力は中々回復しそうにない。

 案外、いや、巨体に違わぬものはあったので違う。正確にはイメージしていた戦略よりもダメージを受けた、だ。


「・・・あいヨ。

 リーダー! アイツに大ダメージを与えられる方法があるって言ったラどうすル!?」


 僕には一つ案があった。万全ならともかく、現状では少しキツい案が。だが彼女の返答はもう分かっている。


「あるなら早くやれぇ!!」


「了解ィ!」


 もう売り言葉に買い言葉だったがそれでもやらなければならないのは分かっている。そう、すでに僕は前線復帰が厳しいレベルでダメージを受けているのだ。もうそれにかけるしかないのだ。でなければ、シャルルやクロエも僕と同じ目にあうだろう。いわゆるジリ貧というやつだ。


 僕は一度相棒を消すと、左手の甲をタッチしてカスタムを変更する。バヨネットを外し、バレルを伸ばし、そして口径を拡張した。さらに二脚をハンドガードと銃口の間に取り付け、最後にフルオートにすれば完成だ。

 カスタムを終えると僕は伏せ、1.6倍のスコープを覗き込む。そしてゆっくりと息を吸い込むと、周りの時間を止めた。狙うはゴーレムのコアがあると推測される胸部。息を一呼吸し、そしてそのままトリガーを握り込んだ。


 ――ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!!!


 僕にはその一発一発の反動がゆっくりと、しかし確かに感じられた。一発撃つごとに伏射であろうとも体が反動で跳ねる。それがフルオートで発射されるのだからそのリコイルは凄まじいものとなっている。

 そして飛来する光条は一撃当てるだけでゴーレムを少し後退させる威力を持っており、数発撃たれたところでゴーレムも危機感を覚えたのか両手を交差させるようにして胸部を守る。

 しかしながら途切れることのない光条は何度も何度もゴーレムの腕を穿ち続け、ついには風穴を開け、胸部を晒すこととなった。そしてさらに新たな光条がすでにヒビが入っている胸部に叩き込まれていき、その度にゴーレムは光を漏らしながら後退していく。

 そうしてゴーレムが膝をついたところでようやく連射は止まった。弾薬切れではなく、射撃手の体力切れで。


「あ・・とハ・・・たの・・む、ゾ」


「任せろ」


 霞む視界にも、託したシャルルの動きはよく見えた。

 ゴーレムは既にボロボロで、あと数太刀入れれば落ちるだろう。それを分かっているのかシャルルは防御を全て捨てて全霊の攻撃を放った。

 まず交差するように左右の袈裟切り。硬質な物体がぶつかった時の高音を上げ、胸部を守っていた岩の両腕が弾かれる。その後左の二の腕辺りを切り上げ一閃、胴体と腕を分かつ。ゴーレムの腕と胴体が魔力の糸で一瞬繋がったものの、しかしすぐにブチンと途切れ、轟音と共に腕をかたどった穴だらけの岩が転がり落ちた。次にゴーレムの右腕の肘辺りに縦切りを落とす。反動でねじれるように右の下腕がとび、床に当たるやそれは砕けた。そして、一歩下がり半身になると、シャルルはグレートソードを水平に構え、そしてステップを踏んでゴーレムの、溢れんばかりに輝きを放つ胸部に突きを叩き込んだ。

 ゴーレムは数度ビクビクと揺れた後、静止する。しかし宿っていた魔力はとどまらず、一度胸部に集中してから青白い光を伴って爆散した。

 単純な魔力は物理的な圧力を持たない。シャルルはそれによってダメージを受けることはなかったが、その後ろ姿の影はクロエ、ドミニク、僕の目にしっかりと焼き付いた。


「ふう。終わったな」


「あ、ア」


 振り向いたシャルルの笑みは、綺麗だった。

 幻想的な空間でそう勝利の余韻に浸っていると、地鳴りと共にゴーレムが砂と化し、足元の魔法陣も消え去った。勿論扉に侵食していた印も消えたのだから施錠もされていることはないだろう。

 そんな中、シャルルはずかずかと歩いていくと、最奥の扉を開いた。


 その奥には一つの台座があったがこちらからよく見えない。ただ一つ分かったことは、その扉の奥に道はなく、あるいはダンジョンの最奥地までたどり着けたかもしれないという希望的観測ができることだけだった。


「よし、帰るか!」

口径:5.56

銃身:ショート

銃口:

銃倉:複列

照準:1.6倍サイト

その他:反動軽減


口径:12.7

銃身:ロング

銃口:

銃倉:複々列

照準:1.6倍サイト

その他:反動軽減

    二脚

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