第二章 ~本当の始まり~
風が吹き、草木が揺れる草原の中、
俺は気絶した楓を抱き上げたまま、前を行く二人についていく。
一人は先ほど木の下で寝ていて、楓をフード集団から救ってくれた(?)青年。
さっきの戦闘を見る限り、とてつもなく強いのが分かる。
もう一人は突然現れた外套を着た人。
身長は子供並みで、青年と同じ黒い外套を着て、自分の身長と変わらないくらいの大きな杖を持っている。
無口なのか、さっきから全く喋らないし外套のフードで顔も見えない。
先ほどの戦闘時の声からしておそらく女の子であろう。
それにさっきの雷みたいなの、まさかこの子が・・・
俺がそんなことを考えていると、青年は一本の木の下で立ち止まり、
木陰に腰を下ろす。
その横に少女も腰を下ろした。
俺は楓をゆっくりと地面に下し、自分も座ると青年は話し始めた。
「で、なんの要件だったんだ?」
青年は先ほど俺が話しかけた理由を聞いてきた。
「え~と、迷ってしまって・・・ここが何処だか
聞きたくて・・・」
「ここ?見ての通り草原だが・・・
そもそもお前等どこからきた?
道に迷った、とかそういう類じゃないだろ?」
俺が簡潔に話すと青年は見透かすように聞いてきた。
「実は・・・俺たち・・・」
信じてもらえるか分からなかったが、
俺はここに来るまでのことを全てを話した。
もしかしたら信じてくれるのでは、そう思ったからだ。
俺が話を終えると、少女は少し驚いた顔をしていたが、青年は
特に驚いてはいなかった。
「ふーん、なるほど。
ようは、この世界に転移してきたみたいだな」
青年は淡々と話しだす。
「ということは・・・」
「ああ、少なくともここはお前が言う日本とかいうところじゃねえ」
「やっぱり・・・」
俺は青年の言葉に愕然とした。
先ほどの戦闘をみたとき、もしかしたらと思っていたが
本当にそうだと思いたくなったのだ。
「帰る方法とかないんですか・・・?」
俺は恐る恐る青年に聞いた。
「さあな、俺には分からん。
そもそも別世界から転移したなんて話、普通は
あり得ねえし」
「私は・・・知らない」
青年と少女ははっきりと答えた。
嘘を言ってるようには見えないし、本当なんだろう。
「じゃあ・・・俺たちはどうすれば…」
愕然とした状態で再び青年に問いかける。
「んーそうだな…」
青年は少し考えると何か思い付いたのか、俺に
提案してきた。
「じゃあ、俺たちに着いてこい。」
「え!?」
「元々俺たちが行こうとしてた場所があるんだが、
もしかしたらそこにヒントがあるかもしれん」
「本当ですか!?」
青年の話を聞いて、俺は思わず声をあげる。
「まあ、確証はないが…どうする?
付いてくるかどうか、お前の好きにしな」
俺は少し考えた。
この人に本当に任せてもいいのか
だが、今は戻る方法がない限りこの青年が唯一の頼みだ。
(この人に任せるしかない)
俺はそう思い、青年の提案にのることにした。
「付いていきます、お願いします。」
俺がお願いすると、青年は
「よし、決まりだな。」
と少し笑った。
そして青年はふと、何かを思い出したかのように話し出した。
「そういえば、名前聞いてなかったな。なんて名だ?」
「えと、影谷 颯真です。」
急に名前を聞いてきたので、少し慌てて俺は名前をいう。
「カゲタニ ソウマ・・・覚えにくいから ソーマ、でいいか・?」
「わ、分かりました」
「オッケー、オレの名前はノアだ」
「わかりました。よろしくお願いしますノアさん」
「いや俺のことは呼び捨てでもいいんだがな・・・まぁ任す」
「・・・それで・・・こっちの方は?」
俺は外套の少女に向き直る。
「ああ、こいつか。ほらイブ外套のフードとらないと顔見えないだろ・・・」
ノアは少女のフードをとる。するとそこにはまるで人形のような少女の顔があった。
「・・・・・イブ。よろしく」
短くそう告げる少女の容姿はとても整っていて髪はまばゆいばかりの白髪。
目も雪のような白色で表情が抜け落ちてしまったように無表情だ。
おそらく無言で座っていたら人形と間違われてしまうのではないかというほどに美人だった。
「・・・なに?」
「い・・・いやよろしくイブさん」
「・・・・」
「よしそろそろいくか」
そういうとノアは剣を、イブは杖を持ち、俺は楓を抱えて歩き出した。
歩き出して数時間は経っただろうか。
未だに周りは草原に囲まれている。
弓道部に入っていて、体力はそれなりにあるつもりでいたが、
数時間歩いた上に楓を背負っている状態なのでさすがにへとへとだった。
「はぁはぁ・・・」
限界だったので立ち止まる。
前を見ると二人はどんどん進んでいく。
ノアはともかく俺よりも体格もおそらく年も低いイブですら
平然と歩いている。
(どんだけ体力あるんだ、この人たち・・・)
俺がそう考えていると立ち止まっていることに気付いたのか、ノアは振り返り、俺を見て
ため息をつく。
「おいおい、へばるの早すぎだろ。
どんだけ体力ないんだよ」
「すいません・・・」
俺がそう謝っていると、イブは呆れたようにため息をつき、俺に近づいてきた。
「・・・」
「え~と・・・?」
イブは俺の方を無言でじーっとみてきた。
「あなた、弱そう」
「え・・・?」
いきなりイブに罵倒され、困惑していると、
イブは小声で何かを唱え始めた。
すると、俺の腕にかかっていた重さが急に消えた。
見てみると、楓が少しだけ浮いている。
「!!こ、これは・・・?」
あまりにも驚いてしまい、俺が後ろに数歩下がる。
よく見ると少しどころか俺がさっき抱えていた高さと同じくらいの位置に楓が浮いている。
「す、すごい・・・」
俺が驚いていると、イブは俺に話してくる。
「持つふりは・・・して、それくらい・・・できるでしょ?」
「え、あ、わ、分かった・・・」
俺は宙に浮く楓を抱えるように手を添える。
手を添えても楓は落ちてこない。
どうやら本当に浮いているようだ。
「あなたのペース・・・遅い。
日がくれちゃう・・・」
イブは俺に吐き捨てるように言うと、すたすたと歩いて行った。
それを見ていたノアは俺の方に近づいてき、
「まあ、ああいうやつだ。
けど、お前にいったことは本当かもな」
と俺に言い、肩をすくめる。
「さて、イブを追いかけるか。
本当に日がくれそうだ」
ノアは笑いながら歩いていく。
俺もイブの言葉を気にしながら歩き出した。
「お、そろそろ町だな・・・」
数時間くらい歩いただろうか、ノアは丘の途中で止まり、そういった。
「本当ですか・・・?」
「ああ、この丘を登ったら見えるぞ」
俺は気になり、丘を小走りで登って行った。
そして、登り切ったとき、その光景が現れた。
レンガのような物で作られた壁に囲まれた町があった。
町には家が所狭しと並んでおり、町の中心には川が流れている。
まるで中世ヨーロッパのような街並みだった。
「おお・・・」
俺は思わず歓喜の声が出た。
「あれは水の都市、レイクインだ」
「すごい、なんか楽しみです」
この時はまだ知らなかった…
この人たちの本当の力を
そして、本当の 覚悟 というのを…
どーも
アルト&ノアです。
今回、諸事情で投稿が大幅に遅れてしまいました
申し訳ない…
次は早めに投稿できるように努力しますので
今後もよろしくお願いいたしますm(__)m




