激怒
僕は、泣き疲れたあと寝てしまったようだった。寝ることに問題はないのだ。元々寝るつもりだったのだから。だが、何故僕はアリアに抱かれているのでしょう?嫌、というわけではないがいきなりの事態に驚いている。このままでは、何となく、嫌な予感がするので起こすことにする。
「アリア?おーい、起きろー」
抱きつかれたままアリアを揺さぶるが反応がない。仕方ないと思いアリアの腕から抜けようとするが、ガッチリとホールドされてしまっている。
「…………うおっ!?」
僕は、無理やり出ようとした。それが仇となってしまった。無理やり抜けようとして足が絡まりアリアを押し倒すような形になってしまう。………これ、何ていうエロゲ?昔の僕ならば間違いなくこう言っていた。まさか、それを僕が味わうことになるなんて………。そんなことを考えていると、むくりとアリアが起きる。あぁ、やっぱりこうなるのか。
「んー?リオ?………っ!きゃぁぁぁぁぁ!!!」
思いっきり殴られた。もう一度言っておこう。叩かれたのではなく殴られた。なんだか僕が悪いみたいになっているが元々は、アリアが抱き締めていたのが悪い。全く、女心は分からない。え?女心は関係ない?………マジ?
僕たちは、冒険者の街を目指して、歩いていた。その街は、冒険者を目指す者が集まる街でこの世界の中でも大きい街だ。そっとアリアの方を見ると、明らかに機嫌が悪かった。さっきの事故から一向に話をしてもらえないのだ。
「ねぇ、許してよ。さっきのは不可抗力なんだって。」
僕は、もう何度目か分からない謝罪と言い訳をアリアに言っていた。それにしても、村の時と全く性格が違うような………。色々と怖いので口には出さないが。
「はぁ、仕方ないわね。さっきのは、私も悪かったわ。ごめんなさい。」
アリアは、ため息をつき僕に謝罪をしてきた。………。やっぱり性格変わったよね?いや、まぁこっちの方が接しやすいと言えば接しやすいのだが。
「それで?あと、どれくらいで着くの?」
「えーと、あとちょっとだから休もっか。」
アリアは、僕が何を言いたいのかを察してくれたようだ。異世界に来てから訓練をしてきたといっても元々はオタクだ。体力など他の人に比べて何十倍も劣るだろう。現に、アリアは全く疲れたそぶりを見せていない。
僕たちが、十分程休憩をして出発しようとした時だった。周りを屈強な男達が囲んでいた。きっと盗賊だろう。くそっ!昨日の今日でかよ!盗賊達は、武器を構えて襲いかかってきた。リラックスしていたため反応が遅れてしまった。それは、アリアも同じだったようで慌てて剣を構えていた。僕も構えようとしたが盗賊達によって気絶させられてしまった。
「俺の固人スキル、【遮断】だ。」
相手の男はご丁寧にスキルということも教えてくれた。理緒は薄れる意識の中、それだけを聞き取った。
その頃アリアは、盗賊達に運ばれていた。勿論、気絶させられて。歩いていた草原の街道を右に外れた森の中の洞窟へと。洞窟の中は広かった。しかし、じめじめとしていていかにも盗賊という感じだった。
「ボス、あいつは気絶させておきましたぜ!」
「そうか、良くやった。あいつの前でやったらお前らにもまわしてやるよ。ま、こいつが持つかは分からねぇけどな!」
この頃、アリアは目覚めていた。今、自分に何が起こっているのかを即座に理解した。又、これから何が起こるのかも想像し、恐怖で震えが止まらなくなっていた。男達のニヤニヤしたいやらしい笑顔に思わず声をあげてしまう。
「っ!!」
男達が全員こちらを見ていた。まずい!そう思った時は既に手遅れだった。棟梁と思わしき男は逃げ出そうとするアリアの手をつかみ押し倒してきた。
「いやっ!離して!!」
アリアは、それでも抵抗を続けた。時間を稼げばリオがきっと助けに来てくれる。そう信じて。
しかし、男はその抵抗を真っ正面から壊した。手を思いっきり上げて頬を叩く。バチンッ!と甲高く洞窟へと響き渡る。アリアの頬は真っ赤に腫れていた。
「いたいよ、たすけて!やめて、お願いしますお願いしますお願いします」
アリアは必死に言葉を紡ぐ。その度に、何度も叩かれる。それでも、アリアはリオのことを信じて呼び続けた。
「チッ!うるせぇぞ、このガキがぁぁ!!」
男が手を思いっきり上げた。今度は、平手ではなかった。アリアがあきらめて目を瞑ったその時、自分の上に馬乗りになっていた男が吹っ飛んでいた。恐る恐る目を開けるとそこには、求め続けた人がいた。
「………お前ら、覚悟は出来てるな?俺はお前らを許さない。………死ね! 」
彼は、リオは真っ黒で大きく圧倒的な気迫のドラゴンを連れ、怒りに顔を染めてたっていた。
村の英雄。存在するばずのない大昔の職業、召喚士。圧倒的な戦闘力。そして、私の大事な人。そんな人が来てくれた嬉しさと安心感、そして叩かれた痛みでアリアは気を失った。
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理緒は、アリアが洞窟へ入った頃に目が覚めた。急いで周りを見渡すが、アリアがいない。元々、アリアが目的だったのだろう。理緒は、また、守れなかったことに腹を立てる。
「くそがっ!………取り返す、一秒でも早く!」
「【召喚】」
その召喚に応じたのは、黒い子竜だった。
「何で!こんなときに、こんなやつなんだ!」
理緒は叫ぶ。どうせならルシフェル並の力が欲しがった!こんなやつじゃ意味がない!本来、子竜のみでも災害が起こる程度の力はあるのだが理緒にはそんなこと頭に無い。そんなときに聞いたのが、子竜からの契約内容だった。
「安心せよ、この姿は仮だ。我の契約内容は魔力を貰うこと。一定の魔力で我の本当の姿へともどれる。」
理緒は、迷うことなく魔力を全てこの子竜へと注ぎ込んだ。やがて、段々と成長していった子竜は立派な竜へと変化していた。いや、その姿は龍だ。
「ふむ、我の名はセト。偉大なる嵐の神だ。お主が探している娘はこっちだ。」
セトは、僕をくわえ飛んでいった。空を飛んでいることのすごさは怒りで忘れていた。セトの案内で洞窟へとたどり着き中へ入るとアリアが襲われていた。僕は、怒りのままに殴っていた。お陰でそいつは吹き飛び、他の盗賊もこちらへ気付いたようだった。アリアを見ると涙を流していた。頬はひどく腫れていた。
俺は怒りのままにこいつらへと威圧をかけていた。
こいつらは殺す。なぶっていためつけてぐちゃぐちゃにしてやる。
ーー理緒は完全に怒りに飲み込まれていた。ーー
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望月 理緒 17歳 男 村の英雄
職業 青の契約者
スキル 召喚 契約 受託 武道の心得 鑑定
契約中 セト 5000000歳 男? 嵐の神・偉大なる強さ
スキル 衝撃波 ヘルフレイム 暴風 雷雨 災厄の雷 最古の呪い
アリア 16歳 女
職業 ???
スキル ???
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衝撃波 衝撃を飛ばす。距離は視認できる範囲。(セトの目は北海道から沖縄まで見える)
ヘルフレイム 闇と火炎の融合技 (火炎魔法と闇魔法のレベル10の融合魔法)(セト専用)
暴風 竜巻を起こす。威力は町を吹き飛ばす程。
雷雨 雨雲を呼び寄せる。(電気を通しやすい)
災厄の雷 全てを滅ぼす雷。威力を制御しないと、世界が崩れる。
最古の呪い ありとあらゆる生命を断つ。制御不能。(セト又は契約者の怒り時のみ発動)