表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青の大罪~最強の契約~  作者: 幽玄の奏者
第二章 才能開花編
42/44

望月理緒の片鱗

 暗い部屋の中で少年は立ち尽くす。目の前に広がる惨劇を見つめながら。それは、衝撃なんてものでは収まりきらなかった。後にその少年に一生拭う事の出来ないトラウマを埋めつけることとなるのだがそれはまた別の話。


 広がる血。こびりついたような死臭。眼下には男と女と少女が横たわっていた。広がる血はそこから止めどなく流れ続ける。男と女は既に意識を失っていた。だが、少女は生きていた。


「『 』………『 』『 』!」


 少女を呼び続ける。それは少年にとって最後の希望であった。しかし、現実は残酷だ。虚しくもその命は散っていく。物語のように誰かを救うなんてこと出来るはずがないのだ。だから、少年は決意を胸に泣き叫ぶ。

    

     『救えないなら、救う前に守ってやる』


 それすらも、物語のようの話であった。しかし、少年はその決意を揺らがせることは無かった。そうそう。この事件は全国でも話題になる。『強盗一家殺人事件』として。凶悪な犯罪として。唯一生き残ったと報道された少年は当時小学六年生。名前は―――『望月 理緒』。





☆★☆


 中学生になった少年はあるスポーツを始めた。いや、武道と言った方が正しいだろう。それは、地元の剣術道場であった。抜刀、二刀流、小刀。有りとあらゆる剣術を指南していた。少年が習い始めた理由はただ一つ。己の生涯の誓いを守るため。夢物語だと誰にも嗤わせない。そんなもの現実的ではないと誰にも嘲笑わらわせない。ただ、驚くべきはその道場がクラスメイトの家だったことだ。そのクラスメイトの名前は『瀬戸内 涼』。既に、師範としての腕も持っている少女だった。


 ある日のことだ。それは、中学二年生。教室での話だ。


「ねぇ、望月君」

「……………」

「反応してよ」


 どうやら、少女はを呼んでいるらしい。面識もある、話したこともある。でも、親しくない。戸惑いながらも、返答する。


「え…と何?」

「何…?じゃない!あんた、涼に何したの!?」


 響き渡る怒声。ざわざわしていた教室はシーンと静まり返っていた。少年は困惑の表情を見せ、自身の記憶を漁る。  


「何もしてないけど?」

「あんた……しらばっくれるつもり!?」


 こちらの答えなど聞かないその言い様に理緒は怒りを覚えた。


「まず、話したこともないんだから何かしたなんてあり得ないでしょ」

「そ、それは……………で、でも!涼が望月君に殺されかけたって」

「道場でのこと?なら、練習だね。それなら、問題はないでしょ?」

  

 理緒の技術は武道を始めたばかりとは思えないほどに逸脱していた。それこそ、幼少期から武道をしている瀬戸内涼にですら、勝つほどに。それもそのはずだ。誰よりも練習して、誰よりも決意が固いのだから。


「練習でも殺そうとするのは良くないと思うけど?」

 

 それは、学級委員でもあり(・・・・・・)クラスの中心人物でも(・・・・・・・・・・)ある剣 亮太・・・の発言だった。すぐさま、周りは同調の色を示す。


「武道のことも知らない人に言われても」

「知らなくても、いけないことだってことは分かるよ」


 癪な笑いをする剣。理緒の苛つきは募るばかりだ。


「そもそも、当人の問題だ」

「君は問題だと、思ってない見たいだけどね」


 正論を嫌味で返す剣。


「分かった……………謝るよ」


 分が悪いと思った理緒は素直に謝るように伝える。しかし。


「なら、ここで謝ろうか。土下座だよ?皆が見てる前で。」

「瀬戸内はいないけど?」

「ここにいるわよ」


 教室の扉に立つ瀬戸内。理緒は歯軋りしながら、瀬戸内へ謝罪する。嘲笑にまみれながら。何故。何故。


(守ると誓った俺が誰かに貶められてるんだ?)


 守るならば、強くてはならない。そう思ったのに。


「別に私は気にしてないわ。元よりその話だって貴方を褒めるためのものだったのに。」

「俺を褒める……………?」

「ええ。貴方には、才能があるわ。それをね」


 才能。人は何故、人の努力を才能という言葉だけで片付けるのか。理緒は釈然としなかった。しかし、事態は静かに終わりを迎えた。


 それからというものの、瀬戸内との付き合いは多くなっていった。その過程で彼女の親友であり、幼馴染みである『巡音 陽』とも仲良くなっていた。理緒の幼馴染みであり、事件を知る唯一の友達である隆希。いつも、固まっていた四人。幸せな日々が続いていた。あの誓いはこいつらのためにある。そう思えるほど仲が良かった。しかし、事件は起こる。それは、今の理緒の全てだ。  


★☆★


  

 理緒は激痛で目を覚ました。どうやら、自分は死んでいないようだった。ライト君に襲われたはずだけど……………。そして、怒り、暴走し……………。


「理緒!」


 その声は氷のように透き通った凛とした声だった。忘れるわけのない声。


「グランデ……………?」

「私は無事です。大した傷もありません。それより貴方の方が重傷です。左腕も……………ジークフリートにやられたのでしょう?私の治癒魔法では止血しか出来ませんでしたけど流石に痛いでしょう?」


 そう言われれば、左腕がずっといたかった。見ると、腕は斬れていた。え……………?


「う、うわぁぁぁぁ!」

「理緒!お、落ち着ついて下さい!」


 ヒビリ、驚く理緒を宥める。その後、落ち着いた理緒に説明を始める。あのあと、何が起こったのか。その、全てを。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
href="http://narou.dip.jp/rank/index_rank_in.php">小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ