知らない天井
気が付くと、僕はベットで寝かされていた。どうやら、あのまま気を失ってしまったようだ。いや、それよりもと天井を見る。そこは、見たことのない天井だった。言っていいよね?
「知らない天」
「理緒!」
グランデに邪魔された!何てことだ。これは、僕が言いたい言葉ベスト10に入るのだ。
「良かった、目が覚めたのですね!?」
「いや、うん。それよりも、やり直させて?」
「え……………はい?」
そう言うと僕はもう一度、起きたフリをする。そして、あの言葉を言おうとする。
「知らない天」
「おー!起きたのか、お前」
「邪魔すんなよ!?これは、神聖なる儀式なんだぞ!」
「お、おう。何か……………すまん。」
入ってきたのは、赤毛の筋肉。本来ならお礼を言うべきなのかもしれない。しかし、神聖な儀式を邪魔されたのだ。仕方がない。うん。
「氷姫、お前疲れてんだろ?少し、寝たらどうだ?」
「別に問題ありません。というか、氷姫って呼ばないでください。」
赤毛の筋肉の言葉に、冷ややかに言葉を返すグランデ。というか、グランデが疲れている?何でだ?そんな、僕の顔を見たのか赤毛の筋肉がいった。
「氷姫は寝ずに起きるのを待ってたんだぜ?お前が起きるまでな。」
「……………何日ぐらい寝てました?」
「二日だな。」
その事に、僕は酷く罪悪感を覚えた。僕は、何て傲慢だったのだろうか。自分の事しか考えていなかった。グランデは、困ったように笑っていた。その目の下には、確かに隈ができていた。
「ありがとう、グランデ。そして、ごめん。」
僕は、正直に謝った。グランデは、穏やかに笑うと、言った。
「大丈夫です。私は、何も出来ませんでしたから。それよりも、体は大丈夫ですか?」
「うん、何とかね。」
「そうですか。それなら、良かったです。」
お互いに目を合わせて笑い合う。
「……………イチャイチャすんな!」
「してません」「してない」
「いやいやいやいや!あの、氷姫が笑う?あの、氷姫が心配?ありえないぐらいのレア度だぞ!?」
矢継ぎ早に言う赤毛筋肉。ピキリとグランデの方で音がしたが、僕は何も知りません。急いで、布団を被る。
「我、全てを凍らせる悪鬼なり。血を滴らせ、戦場を歩く」
「ちょっと待ったあぁぁぁぁ!」
「幽鬼なり……………何ですか?」
「悪かった。いくらでも、謝る。だから、それだけはやめてください!」
「……………まぁ、いいでしょう。」
Sランクの冒険者が必死で謝るって、どんな魔法をつかうつもりだったのだろうか?というか、グランデの職業ってなんだ?
「おっと、本題に入ろうか。えーと、そこのお前。」
赤毛筋肉は、僕を指して何か考えているようだった。そういえば、自己紹介をしていなかった気がする。
「理緒って言います。えーと、」
「俺は、ジークフリートだ。」
「宜しくお願いします。」
「おう、宜しく。んじゃ、本題だ。リオ、お前にはこれからギルマスと会ってもらうぜ。」
「……………え」
一分前
机に向かい、筆を延々動かし続ける。机に乗せらている書類は消えていく。ふと、筆が止まる。
「Eランクの冒険者がオーガを倒したのか……………面白いね。ぜひ、会ってみたものだ。」
不敵に笑うギルマスがいた。しかし、
「なーに、かっこつけてんだよ」
ジークフリートが茶化す。ギルマスは、恥ずかしいのか机の下に潜ってしまう。
「相変わらずだな!……………まぁ、いい。呼んでくるぞ?」
「……………頼む」
ジークフリートが部屋を出た音が響いた。