職業
朝、メイドから起こされて目を覚ました。僕は、ベッドから出てメイドにこれからの予定を聞いてみた。
「この後は、早速騎士団長のクルトさんからステータスに関しての指導があると思います。」
あれ?こういうのって、大抵は王様とかと謁見したりするのではないのだろうか?テンプレでいくと、召喚された瞬間だけど……………。僕は、不思議に思い質問すると、王様に謁見するよりも学んで欲しいとの事だった。この言葉から魔王軍の襲撃を恐れていることが分かった。
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僕たちは、訓練所の様な所へと集められた。周りには、訓練用の案山子が置いてあった。そして、僕たちの前には歯がキラリと輝く様な笑顔で自己紹介をする大男。騎士団長のクルトさんがいた。中々に元気で熱血系っぽく見えるが、意外としっかりしていた。
クルト団長の話を聞いてからは【職業】についての説明があった。この職業と言うのは、15歳の頃に決まり、その職業こそがその人の才能なのだと言う。そして、その職業には、スキルといわれるものがあり、それを利用して戦ったり、生活をしたりしているのだとか。
そこで、その職業やスキルを知るためにステータスプレートが配られた。僕は、そこで驚いた。この世界には、攻撃力や防御力などといったものが無かった。職業で才能で全てが決まる。とんだ、理不尽な世界だと思った。だからと言って、訓練をすれば普通に剣の扱いなどは上手くなるのだ。そして、職業に関係なくスキルも増える。面白い世界だとも思った。
その後は、早速ステータスプレートを登録しようということになり、一列になってクルト団長にステータスプレートを貰う。ステータスプレートは、水色の半透明のやつで何か近未来で使われていそうな感じだった。収縮することもできるらしい。閑話休題。
ステータスプレートに血を一滴垂らす。こうすることで、自分の情報が刻まれる。なので、偽証することができず、身分証明にも使われるのだとか。僕も、血を一滴垂らす。すると、そこに表示されたのは……………。
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望月理緒 17歳 男 転移者
【職業】
【スキル】
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職業がないのはこの世界では、普通だったりするのだろうか?そんな訳はない。結果を知りつつも、クルト団長に質問してみた。返ってきたのは、一番聞きたくない答えだった。
「……………。悪いが、職業が無い者は肉壁にもならない。正直にいって、邪魔だ」
今までの明るい飄々としたクルト団長ではなくその顔からは、本気さが伝わってきた。
(嘘だろ!?え、いらないってことだよな?詰まり、こ、殺されたりすのかな?)
余りの出来事に色々と後ろ向きな考えをしてしまった。そうだ。戦闘が駄目なら、それ以外のことで活躍すればいい。しかし、そんな考えはすぐに駄目だと気付く。他の事?僕は、ラノベが好きなオタクだ。そんな僕に、なにかできるのか?いや、出来ない。
そんな、考えを見抜いたかのようにクルト団長は僕を慰める。
「ま、まぁ、一応戦闘の訓練は受けてもらおう。もしかしたら、職業が【開花】するかも知れんしな」
その一言で、僕は、考えるのをやめた。もう、なるようになれだ。開花するのを希望に頑張るしかないだろう。
それからは、どうしたら皆の邪魔をせず、力を身に付けられるかをひたすら考えながらクルト団長の話を聞いていた。
地球でも異世界でもいらない存在。その、自分に対する評価にため息をついて、空を見上げた。
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暗闇に閉ざされた部屋。その中には、二人の男がいた。一人は、骸骨の男。骸骨のように、ではなく骸骨の男。その名をヤング。もう、一人の男は漆黒の鎧兜を着て素顔は分からない。名をスズムラ・トシキと言った。
「…………準備は整いました。」
「そうか。では、頼む。」
二人の男は、顔を見合せ、決意の表情をした。やがて、ヤングが部屋から出ていくと、少年は再び決意の表情をして、呟いた。
「変えなければならない。この世界を………!」
そして、この少年はまだ知らない。二人の少年と出会い運命が大きく変わることを。その出会いが全てに変化をもたらすことを。それは、二人の少年もまだ知らない。
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骸骨の男。ヤングは、何千もの魔人魔物の前にたち、声をあげる。
「今から攻め入る!人族は、勇者召喚をした。」
その言葉に、魔人たちは騒ぎ始める。魔人にとっても異世人の力は恐れるべきものだからだ。
「 お前らは……戦闘訓練をまともにうけていない子供に負けるのか!? 」
「「「「「「「 違う! 」」」」」」」
「 ならば、行けるな!? 」
「「「「「「「 おぉぉぉぉぉぉーー!! 」」」」」」」
「 行くぞ!王都を潰しに!! 」
こうして、魔人たちは、王都へと向かって進軍を始めた。遥かに遠い距離すらも、魔人たちには関係ないのだ。
ーーこの頃、理緒たちは訓練中。今、魔人が迫ってきているのを知る由もないーー
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