氷姫
僕たちは今、鍛冶屋にいた。何故かというと僕の武器がないからだ。何をするにも必ず、武器が必要になるだろうと言うグランデの提案で冒険者登録の前に買ってしまおうということだった。そして、僕は鍛冶屋の名前を知って戦慄した。《クズ鉄屋》。…………やはり、この世界の住人はネーミングセンスがおかしいようだ。中二病の僕が言えることではないが。
中に入ると、中年の人当たりの良さそうな青年がいた。僕は、目当ての物を訪ねる。
「ダガーってありますか?」
「それでしたら、こちらに」
そういって、案内された棚を見ると鉄のダガーがいくつも置かれていた。僕は、それを二つ手に取る。ふと、投げナイフが目に入った。…………欲しい。グランデのお金だから、我慢する。……………いや、頼んでみよう。
「あ、あのグランデさん、ナイフ買ってもいいですか?」
「…………ご勝手に」
なんで、冷たいの?ねぇ、お金使ってごめんって言ったじゃん。大丈夫です、って言ってたじゃん。という文句を言わずに店員の元に行き買い物を済ませる。投げナイフを5本買った。
買い物を済ませた僕たちは、冒険者ギルドへと来ていた。中には入り、受付の人に登録をお願いする。
「登録したいんですけど……………」
「はい。それでしたら、始めに登録料の銀貨一枚を支払って頂いても宜しいでしょうか?」
「え、お金…………?」
実は、投げナイフを買ってしまったのでグランデのお金は尽きている。どうしようと戸惑い、グランデの方を見ると、はぁ、とため息をつきながらカードのようなものを出した。
「Aランクのグランデです。これで、免除で。」
グランデが渡したのは、ギルドカードだ。
「Aランク!?…………グランデって凄いね」
「王宮筆頭魔術師にそれはないでしょう…………」
僕の発言に呆れるグランデ。受付の人を見ると口を開けて唖然としていた。
「し、失礼しました!Aランク様のご紹介でしたら問題ありません。そ、それでは説明させていただきます。…………冒険者には、ランクがあり、Eランク~Aランクまであります。その、ランクのクエストのみを受けることができて、ギルドに貢献するとランクが上がります。魔物は《レート》というものがあり、ランクと同じように脅威度によって上昇します。中にはSレートの魔物もいて、その魔物を単独で倒した者はSランクに、パーティーの場合はAAとなります。」
「成る程。つまり、僕はEランクからか……………てか、Aランクって凄くね!?」
「えぇ、とても凄いですね。」
「自分で言うのかよ!」
初回のみ、ステータスカードが必要らしいので、《不可視のペンダント》で偽装したステータスを渡し、ギルドカードを手にいれた。
「早速、クエスト受けよう!」
僕は浮かれていた。いつも、思い描いたラノベの世界が今、自分の目の前にある、体験している。そう思ったから。そんな僕は、男の人とぶつかってしまった。その人は、赤毛で筋肉が凄かった。
「す、すみません!」
「元気がいいな!最近、登録したのかい?」
「はい」
「そうか、そうか。まぁ、頑張れよ……………って、お前《氷姫》か?」
そういって、見たのはグランデのほうだった。
「その名前をやめてください。」
「氷姫って?」
「冷たい態度に、お姫様のような容姿。って意味でつけられた二つ名だ。二つ名持ちは凄く強ぇぜ?んじゃ、俺は行くわ。」
僕の質問に答えると、何処かへ行ってしまう。
「氷姫……………」
「やめてください。」
本気で嫌がっていた。格好いいと思うんだけどなぁー。それにしても
「グランデって、二つ名持ちってことは物凄く強いんだね。」
「……………あの人もですよ。」
「え?」
「さっきの、赤毛の。あの人は《豪剣豪腕》と呼ばれています。それに…………Sランクです。」
「……………」
強い。僕の求めている誰かを守れる強さを持っている。……………強くなりたい。
「あ」
「どうかしました?」
「そうか……………。グランデ!」
「は、はい?」
「僕に戦いを教えてくれ!魔法でも何でもいいから。」
そのためには、強い人に教わるのが一番だ。