「楽しませてくれよ」
アザゼルは、扉のところにいる魔族に勢いよく殴りかかる。しかし、あの魔族は身体を半身ずらして避ける。アザゼルも負けてはいない。回し蹴りなどもいれて積極的にせめる。素人目から見ても物凄い技術だった。
「んー。なぁ、お前アザゼルだよな?」
「そうですが、……何、か!?」
戦闘が続く今も、魔族は軽く受けたりかわしたりしている。それよりも、今は魔族が言った言葉が気になる。アザゼルだよな?これは、アザゼルを前から知っていたとういうことだ。
「一体……どういうとなんだ?」
「それは私が聞きたいですんすが!?」
あ、グランデのこと忘れてた。後で、説明するからとだけ言ってアザゼルたちの戦いを見守ることに専念した。見守っているだけでは、何も変わらないが今、理緒が加わったところで何か変わるわけでもない。むしろ、アザゼルが戦いずらいだけだ。
「いやさ、俺の知ってるアザゼルはもっと強かったんだけどな?それに、姿も違うしな。」
「私は、貴方など知りません、よ!」
アザゼルが、回し蹴りを放つ。しかし、あの魔族は片手で受け止める。アザゼルは、すぐに体勢を立て直そうとするが魔族が思い切り脚をつかんでいる。
「ぐっ…………!」
「はぁ。つまんねぇの……。アザゼル、お前も弱くなったな?」
「何を…………!?」
魔族は、アザゼルを殴る。たった一撃、それも全力ではないであろう一撃でアザゼルは消滅した。召喚した悪魔なので、死ぬことはないが強制的に帰還してしまう。そして、しばらくは呼び出せない。
「くっそ……。自分で何も出来ない、誰も守れない。これじゃ、同じじゃないか!」
理緒は、後ろにいるグランデの事を考え歯軋りをする。例え、全力で攻撃してもあいつに勝つのは無理だろう。時間を稼ぐのですら難しいかもしれない。
「さて、と。次はお前ら?……楽しませてくれよ~?」
あいつから、発せられる殺気にあてられて体が動かない。ゆっくりと、近づいてくる。
「い、いや!…………私は死ぬ訳にはいかない!」
殺気に、あてられてグランデが泣き叫ぶ。いつもの冷静さは消えていた。
ーーーーーー勇者side
それは、長い地震の後に起こった。訓練所から見える景色は正に阿鼻叫喚という感じだった。王都の至るところから、火が出て人の泣き叫ぶ声が聞こえる。
「何が起きたんだ?」
俺は、天田翼。最近、異世界へと飛ばされた生徒の1人だ。今まで、順調に進んできた。
「なのに、どうして!」
俺らは、さっきまで魔力適正をはかっていた。だが、理緒がここの王宮魔術師に連れていかれた。事が起きたのはその直後だった。
「翼!どうなった!?」
そう訪ねてきたのは、俺の親友である工藤武だ。こいつは、いつも俺を助けてくれる。
俺は、目を凝らして見る。あれは……………まさか!
「魔族だ!皆、襲撃に備えろ!」
「遅いですよ!」
訓練所の真ん中に強い衝撃が放たれた。そこには、まるで骸骨のような男がたっていた。
「うぅ、うぁぁぁーーー!!」「きゃーーー!!」
クラスの皆は、いきなりの事態に困惑して色々と叫んでいた。
「私は、ヤング!この魔族を率いる者だ」
異様な殺気を放つヤングと呼ばれる者。そんな中、ヤングに対峙できたのはたったの六人だった。