仇
グランデに引っ張られ、連れてこられたのは小さい応接間のようなところだった。
「貴方は何者ですか?」
さっきまでの、対応とうって変って敬意などは見られず、ただ警戒をしていた。又、、杖を構えいつでも魔法が打てるようにもしていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「何を待てばいいのですか!?あの、色……貴方は魔族の血を引いているのですか!?」
「ど、どういう事だ?俺が異世界から来たの知ってるだろう!?」
いつも冷静なグランデがここまで慌てるのもおかしいし、それにさっきの発言だ。魔族の血を引いている。それは一体?理緒の頭は混乱していた。
「そうですね……。ちゃんと説明しましょう。良いですか?この世界の魔法は火、水、土、風の四属性が基本となっています。そして、本当に才能があるものしか使えない雷、氷、光、闇の四属性です。また、特殊なものに回復や補助魔法なんてものもあります」
それは、知っている。さっき、魔法の適正を確かめるときにも説明されたことだ。
「ですが……………魔法ではなく魔術と呼ばれる物があります」
「……………魔術?何か変わるのか?」
魔法と同じような意味だと思うのだが何かしら変わるのかもしれない。ラノベとかだとそういう種類の物もある。
「はい。変わります。魔法よりも強力でそれでいて効率的………それが魔術です。そして、それを使うことが出来るのが伝説に語られてるような人物かエルフの上に立つ種族であるハイエルフ、妖精王や精霊王そして……魔族です。」
「成る程……つまり、あの色は魔術だと?」
「えぇ、それも万能属性という魔族のみが使用できるものなのです。属性が分かったのは、私が貴方にそういう魔法を使ったからです」
そういうことか。ならば、疑われようと仕方がない。しかし、日本から来た僕が魔族なんて天地が引っくり返ってもあり得ない。何とかこの疑惑を解けないものか。そう、考えた時だった。
地面が音を立てて激しく揺れ始めた。
「これは、地震!?」
「いや、違う。」
グランデが地震と言ったのを即座に否定する。もう、分かるのだ。それが近くにいると。憎しみか悔しさからかそれとも……決意したからなのかは分からない。だか、一つだけ確かなことがある。この、揺れの正体。それは、
「魔族だ!」
理緒の顔は今泣きそうだったか、恨んでいる顔だったか。いや、違う。理緒は笑っていた。
「ッ!?」
その、溢れる殺気にグランデは尻もちをついてしまう。
「あ、なたは、一体…………」
そんな、グランデの声と一緒に扉が思い切り開かれる。そこに立っていたのは
「人間見っ~け!ヒャハ!」
「お、前は…………!」
その魔族に、理緒は絶句する。もう、ここまで攻めてるのかとか、考える余裕はない。何故なら、目の前にいるのは以前の、弱かった頃の理緒を庇い死んだ陽の仇なのだから。
「…………す。」
「あぁ~ん?」
「……………………す!」
「聞こえねぇーんだよ!雑魚がっ!」
「ぶっ殺す!!」
理緒は、思い切り殴りかかる。が、しかしひょいと簡単にかわされてしまう。
「あっれれ~?殺すんじゃないの~?」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」
「冷えろ!」
完全に怒りに飲み込まれた理緒を助けたのはグランデだった。水の魔法で理緒の頭を冷やしたのだ。
「何があったのかは知りません。ですが、私もサポートします。なので、落ち着いて下さい!」
「悪い。ありがとう。」
理緒は、改めて怒りをおさめる。しかし、心の中では今でも煮えたぎりそうなほど怒っている。だが、頭は冷静で召喚を使わないようにと繰り返している。召喚を使わなければグランデと共に死んでしまうだろう。いくら、グランデが強くてもこの魔族には勝てない。今までの経験から理緒はそう感じていた。
「……………仕方がない!グランデ、このことは他言無用だ!召喚!アザゼル!!」
理緒は、吠えた。ありったけの声で。頭にあるのは、グランデが召喚の事を知ってしまった。……………ことではなく、目の前の仇を殺すことだけだった。
「命令を。我が主。」
「ぶっ殺せ!」
「ははっ。実に分かりやすい命令ですね。」
アザゼルは、理緒のぶっ殺せ!という命令に笑い、
「了解致しました!」
そういって飛び出した。