無色透明
この日、理緒たちは魔法の訓練を受けていた。今までは、剣術やらの武器による訓練だった。しかし、そろそろ魔法の訓練をしてもいいのではないかということだった。
だが、訓練といってもまずは自分にどれくらいの素質があるのか、得意なのは何魔法か。それを知らなくてはいけない。賢者や魔法使いといった最初から適正がわかっているもの、ステータスに記載されている人は既に訓練を受けているので、王宮魔術師であるグランデと一緒に指導をすることになっている。
皆が新たな事を覚えられるという喜びから浮き足立つ中で、理緒は憂鬱だった。何故なら
「魔法の適正が無かったら馬鹿にされるんだろうなぁ………」
そう。これは、最早テンプレである。そのテンプレを忠実に守る者がここにはいる。だが、隆希のように本当はリオと話したい人や話し掛けようとした人はいる。しかしどれもある三人組によって止められるのだ。その三人とはテンプレ守護神である
周防剣一
葛城鎌太
剣亮一
この三名だ。彼らは、中学校から理緒をいじめている。それは、ある事件が関係しているのだが長くなるので割愛しよう。
そんな訳で、理緒は無視され続けているのだ。勿論、この事は理緒は知らなかった。隆希から聞いた話である。それを聞いた時は涙が出そうになった。自分に話し掛けてくる人がいたのだと。無論、陽と隆希は話し掛けようとしたが皆と同様あの三人組に止められた。あの三人組は、実力行使もいとわない。隆希がやられたことがあるそうだ。
そうこうしている内に、理緒の番へと回ってきた。周りは、何故か他の人よりも静まり返っている。理緒は、溜め息をつきながら適正をはかるという水晶玉に手をかざした。結果を恐る恐る確認すると水晶玉は、光った。だが、色はなかった。この水晶玉は、素質があると光り、適正があるとその属性の色となる。適正がない人は、白色に光るのだが…………。理緒のは、ただ光るだけだった。無色透明に。
「へっ!やっぱりお前は、無能なんじゃないか!
いてもみんなの足手まといだぜ~?さっさと、死んだろうだ!?」
何を思ったのか、周防は理緒に向かって無能と怒鳴り散らす。しかし周りは、ただただ悩むだけだ。これは、何の属性なのかと。
「あぁん?何だお前ら何黙ってんだよ!」
皆が黙っていたのを無視していると思った周防は、八つ当たりで理緒の胸ぐらを掴む。
「貴方様は!」
しかし、グランデがその周防にいや理緒に向かって突進した。そのた胸ぐらを掴んでいた周防は吹き飛ばされた。しかし、その事に気付かないグランデは理緒の手を握り、何故か敬意を向けていた。
「え?あの……えと、な、何ですか?」
「あぁ……やっとです。やっと見つけました。少しここでは話せません。こちらへ」
「え?いや、ちょ、……」
理緒は、引きづられるようにして訓練所から連れ出されるのだった。
一方、取り残された人たちは
「「「「「説明をお願いします!!」」」」」
と見事に口を揃えるのだった。
ーーーーーーーー???
「そろそろ、頃合いですかね?全軍、用意。」
第二の襲撃、理緒にとっては全ての始まりが今再び始まろうとしていた。




