結末~隆希side~
短いです。
「それで?何なんだ一体。」
今のテスカトリポカの発言。……力か。欲しいといえば欲しい。いらないといえばいらない。といったところだろうか。過度な力は身を滅ぼすからな。しかし、力を持たなければ出来ないこともある。
「お主の懸念は分かっておる。だが、身を滅ぼす前に回りの者が」
「黙れ!」
「ふむ。どうやら何か気に触ったようじゃな。何か苦い経験でもあるのかの?」
テスカトリポカの笑い顔が心底イラつく。物凄く、うざい。だがテスカトリポカが言っていることは、図星だ。しかし、俺はそれを認めるわけにはいかない。いや、認めてはいけない。認めた瞬間今まで保ってきた全てが崩れてしまう気がするのだ。もし、そうなったら……………いや、やめよう。そうしないようにするのだ。
「…………」
「分かったのじゃ。今は、答えなくてよい。だが、考えておくのじゃな。このあと儂は、あの子に話をしたら一度天界へと戻る。しかし、後でまた戻ってこよう。その時に答えを聞かせておくれ」
「………………あぁ。」
理緒は駆け寄る陽に笑顔を向けていた。あいつは、何一つ失うことなく守った。それだけの力があったのだ。
「…………クソッ!」
俺は、その笑顔に無性に腹がたったのだ。いや、違う。そんなことを考えるみみっちい自分自身にだ。それに、だ。あいつは、その力が借り物だと理解している。いつか、それだけでは守りきれない物があることも知っているはずだ。だから、あいつはこの後、旅に出るだろう。そして、その先で何かしらの力を得るはずだ。俺も負けてはいられない。隆希は、本で見たある場所を思い浮かべていた。
あそこなら、俺も力を得られるのかもしれない。それは、きっと険しく辛いだろう。だけど……………理緒には負けてらんねぇからな。
その後、一件落着。訓練へと戻り、いつも通りに過ごす。あんなことがあったのにな。
俺は、夕食を食べ寝るときに『力』について理緒を除く、親友に訊いてみた。俺が親友と呼べるのはたった一人しかいない。
「徳耶」
「おん?どしたー?」
間抜けな顔をして、部屋に入ってきた俺を眺めている。こいつは、川田徳耶。中学生のある出来事から、理緒との仲が悪くなった時期に出来た友達で、今では親友と呼べるほどの仲だ。そんなこいつは、《剣士》の職業に就いている。《剣士》というも、RPGではモブのような感じもする。しかし、俺は一度もこいつに勝てたことがない。竜を使役し出したら、互角か俺が僅差で勝つか……………といったぐらいに強い。本人は言わないが絶対に《剣士》ではないはずだ。閑話休題(話がそれた)。
「突然なんだが……………『力』って何だと思う?」
「何だ急に?2ちゃんねるにでも訊いてろよー」
「真面目に頼むわ」
「……………了解っと。んー、そうだな。まずは、俺の考えではない『力』を話そうか。一番最初は、wikiだな。wikiだと物事が変化する原因となるもの、その象徴。だったかな?」
「……………何で覚えてんだよ?」
「俺も考えたことあっからなー」
あるんかい!突っ込みたくなる気持ちを抑えて、続きを促す。
「んじゃ、俺の独自の考え。これは、さっきいった時期に出した答えだ。ありがたく聞けよー?」
「はいはい、ありがとうございますー」
「うっわ、感情が籠ってねぇなぁ!?えー、では話しましょう。……………緊張するな?」
「さっさっと話せよ!?」
「了解了解!えー、『力』とは、人それぞれである!」
「……………」
「……………」
静寂が訪れる。俺は、徳耶に詰め寄っていた。
「おいぃぃぃ!?」
「ちょっ!ま、まっ、待てって!!」
「……………で?どういう意味なんだ?」
「うーん、例えばさ。君からもらった勇気を……とかあんだろ?勇気なんて人に貰うもんじゃねぇのにさ。それと同じさ。『力』の意味なんて自分自身で勝手につけちまえばいい。お前がそう思ったんなら『力』だ!……………ってことよ」
「成る程ねぇ……………ありがとよ!」
隆希は、来るときとは違い曇りない眼で生き生きとしていた。自分の中で、答えを見付けたんだろう。徳耶と同じく勝手に意味を決めて。
「どいたま~」
「じゃあな!」
そういって、隆希は部屋からでていく。と思ったら、突然に扉が開いた。
「お前、例えが下手くそだぞ!」
「さっさっと帰れ!!!!」
一言余計な隆希だった。