計画
さて、陽と隆希と訓練所に歩き出した僕たちだが、どうしようか。このままだと僕達は、死んでしまうだろう。それを防ぐにはどうしたらいいのだろうか?考えて可能性が高いのは……。正直に話す。僕の職業のこともあるので直ぐにとは行かなくとも信じてもらえるだろう。……いや、だめだ。信じてもらえるのに時間がかかりすぎる。これなら、いっそ放っておいた方がいい。この世界の時間の概念は地球と全く同じだ。それで、さっき隆希に確認したら襲撃が起きる日の朝だったことが判明した。つまり、時間がない。なので、信じてもらえなかったときに被害が半端なくなってしまう。これだけは避けるべきだ。
なら……放っておこう。元々は勇者率いる最強軍団だ。僕が言わなくとも大丈夫だろう。実際に前の戦争では殆どの生徒が生き残っていた。放っておいても充分だ。それに、僕だって強くなった。勿論、職業やスキルのこともあるが僕自身旅に出てからずっと鍛え続けたのだ。よし、これでいこう。
作戦?が決まり横をちらりと見るとハルとリュウキが話していた。本当に戻ってきたんだなと実感する。すると、リュウキが話しかけてきた。
「なぁ、今日の訓練は何すんのかな?」
隆希は嫌な顔をしている。この世界に来ての訓練は正にスパルタ。なので、皆あまり進んでやろうとはしない。
「さぁ?僕は、知らないけど……陽は?」
「…………」
二人が目を見開いて驚いている。俺は、小首を傾げる。どうしたのだろうか?
「お、お前……」
「今、陽って……………!?」
「い、今まで巡音さんだったのにどうしたんだよ?」
「そうだっけ……………?」
………………言われてみればそうかも知れない。確かに前までは陽何て言わなかったな。まぁ、でもいいか。
そんな話をしていると訓練所にたどり着いた。確か、今日は始めての訓練だ。………ん?これは、おかしい。さっき、隆希は
「 今日の訓練は何すんのかな? 」
と聞いてきた。つまりは、初めての訓練ではないと言うことだ。何故だろうか。答えは直ぐに出てきた。そう。俺が死んだのにここへと戻ってきた事。必ず関係がある。つまりは、巻き戻ったのと同時に僕達の召喚な速くなった。そうとしか考えられない。つまり、俺は、この先何が起こるか分からない世界を生きていかなければならないのだ。……いや、それが普通だ。もしかしたら、俺は、異世界に来てから感覚が麻痺していたのかもしれない。自分に甘えていた。頑張ろう。皆を守るために。俺は、考えをまとめると隆希と陽と一緒に走り訓練を始めるのだった。
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きらびやかな服を着て華やかな玉座へと座る腹の出た男。その隣には、見た男を寄せ付けるような整った顔。鼻はやや高く、目はパッチリとしている。誰が見ても可愛いと口を揃える、そんな女がたっていた。そして、玉座から伸びたレッドロード。そこに、立っているのはこの国の全てを掌握している国の、宰相だ。同じく良質な服を見にまといニヤニヤと笑っている。
「お父様。勇者は、計画通り私に思いを寄せております。勿論、グランデやクルトにはばれていません。」
玉座に座る男の隣に立つ女が言葉を発した。その、言葉を聞くと玉座に座っている男は喜んだ。
「そうか。あやつらを敵に回したら敵うものはおらん。絶対にばれないようにするのだぞ。」
「分かっております。お父様。」
大臣は、男の前まで行きあるものを取り出して膝をついた。そして、ニヤニヤと笑いながら男へと差し出しながら言った。
「国王様。これが、世界一の職人に作らせた絶体に見破ることの出来ない従属の首輪です。これで、勇者らを操ることができます」
「ふむ。良くやった。貴様には、好きなものを後でやろうではないか」
「ありがとうございます。では、女を」
「ふむ、よかろう」
二人のいやらしい笑い声と高らかな笑い声が鳴り響いた。
その頃、リオは訓練中。裏で起こっている計画を知るよしも無い。それが、国の権力者の計画だということも。




