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婚約の証
あとあと考えてみれば、それもアメリアのうそだったのだと思う。その証拠に、アメリアは王国軍に捕らえられたときでさえ取り乱さなかった。
叶わぬ望みだと知りながらも、きっとアメリアはそれを願っていた。
俺と一緒に過ごす永遠を。
あぁ、だからこそ彼女は「愛してる」と一言も口にしなかったのだ。
まったく、アメリアは俺のことをよく分かっている。
こんな時なのに、彼女を愛しいと思う気持ちは強くなる一方だ。
案外、俺という人間は、弱い人間だったのかもしれない。
真実を知ってもなお、おじけづくーーいや、知ったからこそ。
こんな自分は、アメリアには知られたくない。
愚かで、卑怯で、弱い王。
でも、知ってもらいたいとも思う。
彼女ならば、受け入れてくれるのではないかと。
笑える。
なんて自分勝手なんだ。
でも、こんな俺でも彼女を助けたい。
そうしたら、もう一度笑ってほしい。
あの日のように。
思い出のあの場所で。
(レオンハルト王の手記「革命前夜」より)




