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両肩を露わにした、銀刺繍の美しい純白のウエディングドレス。長く引く裾には、いくつもの白薔薇の刺繍が散っている。

 手に持っているのは、白薔薇と菫でできたブーケ。

 高く結い上げた銀髪を飾るのは白薔薇と薔薇の編み込まれた長くヴェールで、王妃のみに許された王家の紋章を模した銀のティアラが輝いている。

 アメリアが鏡の覗くと、そこには一人の王の花嫁ーー王妃がいた。


 「わたしじゃないみたい。・・・何てきれいなの。」


 あらゆる角度からドレスを見て、アメリアはうっとりとため息をついた。


 「本当に・・・!とっても似合っていますわ、お姉さま!」


 イザベルがきれいだ、きれいだとはやし立て、アメリアを飾り立てた侍女たちは誇らしげに胸を張った。


 「アメリアお嬢様、国王陛下がおいでです。」


 「まぁっ、お通しして!」


 アメリアそっちのけで、イザベルが答えた。

 侍女が扉を開けると、深いワインレッドに赤薔薇の刺繍がされた正装姿のレオンハルトが部屋に入ってきた。


 「アメリア・・・」


 アメリアの姿を見たとたん、レオンハルトは目を見開いて固まった。


 「あの・・・どうかいたしまして?」


 気に入ってくれなかったのだろうか。

 心配になって声をかける。

 イザベルがニヤニヤと笑いながら、


 「見とれていらっしゃるのだわ。」


 などと言う。その言葉どおり、レオンハルトはうっとりと目を細めたままアメリアに近づいてきた。


 「・・・あぁ、想像以上だ。」


 と言って、一目をはばからずにアメリアを抱きしめた。


 「ちょっと、レオン!」


 妹も見ているのに。

 慌てて身をよじるがレオンハルトは離してくれなかった。


 「・・・父君もきっと喜んで下さる。」


 「・・・レオン。」


 アメリアが叶えたかった、ヘンリーの願い。

 それは、倒れる前に呟いた父の言葉。


 ーーお前の、花嫁姿・・・


 アメリアがレオンハルトと結婚するのは国家行事。結婚式までには多くの準備と時間が必要なため、まだまだ先の話となる。しかし、父の体はそれまでもたない。だから今できることは、ウエディングドレス姿を見せることだった。・・・その条件にレオンハルトにキスを要求されたのは予想外だったが。

 レオンハルトに衣装の準備をお願いしたときから七日、ようやくすべての準備が整った。


 「そうね、お養父さまも・・・きっと。」


 父の最期の願いを叶えるために。



・・・・・・・



「失礼します。・・・お父さま、起きていらっしゃいますか?」


 イザベルが部屋に入ると、ヘンリーは体を起こして、ベッドの横の窓から外を見ていた。


 「イザベルか、どうした?」


 「実は、見せたいものがあって・・・」


 その言葉を合図に、侍女がゆっくりと扉を開いた。

 アメリアはレオンハルトの腕に手を添えて、ゆっくりと並んで歩いた。

 侍女たちが、アメリアのヴェールとレオンハルトの緋色のマントの裾を整えながら後ろについてくる。

 レオンハルトが首から下げたペンダントが、シャラッと音を立てる。ふたりの頭上では、王冠とティアラが輝いた。


 「アメリア・・・その姿は。」


 驚くヘンリーに、はにかみながら言った。


 「花嫁姿・・・見たいと言っていたから。」


 寄り添うレオンハルトと目を合わせて、微笑む。


 「公爵・・・いや、義父上。あらためてお願いします。アメリア嬢と結婚させてください。」


 「・・・あぁ、こちらこそ。よろしくお願いします、陛下。」


 細めたヘンリーの目から、ひとしずくの涙がこぼれる。


 「お父さま。」


 アメリアとイザベル、ふたりでヘンリーの痩せた体に抱きつく。ふたりが幼いころよりも、頼りなくなった父の体。

 命の光が消えゆくその体に、せめて体温だけでも伝われと願いを込めて。


 「幸せになれよ、アメリア、イザベル。」


 ーーお父さま、ずっとずっと愛していますわ。 



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