春、約束の庭で
イザリエ王国第三王朝ランリアティエ。
赤薔薇の巻きつく2本の剣が描かれる国旗を掲げた、長年の戦争の末の血塗られた王朝。
人々は赤き国王にひれ伏し、王族ラン・シュバーウェン家を「赤薔薇の一族」と呼ぶ。
勇猛、残虐で知られる王家の人々に、恐れも含んだ忠誠心で民たちは仕えた。
前王朝の名はスチューリー。
「白薔薇の一族」、スチュアンティック家。
初代王は名君として知られるが、その後はそれほどの功績はない。
ただ己のみを見ていた王に、民たちは不満をつのらせた。
王は、民たちの暮らしが苦しくなっていることに気付かなかったのだ。
ついに、反乱が起きた。
指導者は、アルフレイド・ラン=シュバーウェン。
初代王の血を引く、公爵であった。
アルフレイドは、天賦の才をもって民をまとめ、スチューリー王朝を倒す。
スチュアンティック家は、公爵家となった。
現国王の名は、レオンハルト・ラン=シュバーウェン。
アルフレイドの息子で、ランリアティエ王朝2代国王である。
レオンハルトが8歳の時にアルフレイドが死去したため、彼は幼くして王位についたが、以後長きに渡り国を治めている。
レオンハルト王、23歳の春。
即位15年を祝って、舞踏会が開かれることになった。
(イザリエ王国史1巻より)