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牢の中で、アメリアはずっと考えていた。この先、スチュアンティック家が歩む最悪の道のりを。
戦争が終わり、さらに結束の強まったイザリエ王国軍。そして、歴代の王の中でも賢王と呼ばれるに値する君主、レオンハルト王。
そんな彼らに、寄せ集めの反乱軍が勝てるはずがない。
(父や反乱の中心人物はすべて処刑、そうでなくてもなんらかの処罰がされるはず。)
反乱に関わった家は領地没収、爵位剥奪となるだろう。
(わたしのすべきことは…?)
その時、頭をよぎったのは、優しいあの声。
ーーお前はスチュアンティック家を守れる、唯一の存在だ。
(スチュアンティック家を、平和を守る。)
そのためには、あの秘密を打ち明けなくてはならない。
(なにが正しいのか、分からない。それでも、わたしには守るべきものがある!)
「剣をおさめてください。少し、わたしの話を聞いてもらいたいと思います。」
「なにをしている、アメリア。」
レオンハルトが怒ったような口調で問うた。
「レオン・・・。いえ、レオンハルト国王陛下、この反乱に際し陛下はスチュアンティック家をどのような罪状で裁かれますか?」
「は・・・?当然、国家反逆罪で領地没収及び爵位剥奪だろう。」
なにをあたりまえな、とでも言いたげにレオンハルトは答えた。
「であれば、お願いしたきことが。」
「なんだ、言ってみろ。」
長きに渡り栄華を誇ったスチュアンティック家。アメリアは、それを今しばらく後世に繋ぐため、卑怯な一手を打つ。
「その罪状はどうかスチュアンティック家ではなく、ヘンリー・スチュアンティック一人だけにしてください。…スチュアンティック家は利用されただけなのです。」
「な、何を言っているアメリア!」
ヘンリーは慌てふためき、レオンハルトは眉根を寄せた。
今回の反乱での罪人はヘンリー。
しかし、これからアメリアも罪を背負うことになる。
家のため、家族を切り捨てるアメリアも。
「国王陛下にお詫び申し上げます。わたし、アメリア・スチュアンティック、ならびにスチュアンティック家一同、長い間陛下に偽りを申し上げておりました。」
「おいっ、アメリアやめろ!」
ヘンリーが声を荒げる。
「実は・・・」
「どうなるか分かっているのか?!」
「ヘンリー・スチュアンティックは・・・」
「やめろぉっ!」
アメリアは深く息を吸い込み、自らの罪とともにはき出した。
「先々代、スチュアンティック公爵の庶子であり、先々代、先代を戦争のどさくさに紛れて殺した、張本人です。」