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舞踏会当日。
会が始まるのは夜だが、アメリアは早めに城に来ていた。
レオンハルトに会うためではない、クリスティーナに会うためである。
彼女と昼食を食べながら、アメリアは10年前の出来事から妹イザベルのことまですべて話した。
「へえ、まさかアメリアとレオンお兄さまがねえ。」
「うん・・・」
どこか感心した様子のクリスティーナに、アメリアはなんともいえない心地がする。
「でもさ。」
「なに・・・?」
「妹ちゃんのことは、議会が勝手に決めただけでしょ?だったらやっぱり、レオンお兄さまが好きなのはアメリアだわ。」
それにその指輪、とクリスティーナがアメリアの左手をとった。
「この指輪、レオンお兄さまのお母さま、先代の王妃さまの形見よ。」
「えっ、そんなに大事なものを。」
レオンハルトの母は隣国の王女だが、レオンハルトを産んですぐに亡くなった。
「それを託せるだけアメリアを好きで、信頼していて、つなぎ止めたいって思っているんじゃないかしら。」
クリスティーナの言葉が、心にしみていく。
「そうね、わたしもレオンを信じないと。」
アメリアがそうつぶやくと、クリスティーナは苦笑した。
「ねぇ、アメリア。」
「なぁに?」
「アメリアは、本当にレオンお兄さまのことが好きなのね。」
少しためらった。でも、アメリアは強く頷く。
「えぇ、とても。」
そう言って、柔らかく幸せそうに笑ったアメリアは、どこか少し寂しそうだった。