序
はじめて書いた小説です。
分かりづらい所もあるかと思いますが、楽しんで読んでくださるとうれしいです。
基本的に歴史風ですが、あくまでも風ですので。
ヨーロッパ風です。
薔薇をめぐる、姫君たちの恋物語。
かの国には最初の王朝が立ちました。
王位をめぐる争い。
そこを舞台に、物語は進んでゆくのです。
王都にある大学の図書館は、今日も静かで少しばかり息苦しいと、レオは思った。
「ミリィ、何読んでるんだ?」
かじりつくように本を読む女性に、レオは声をかけた。
「イザリエ王国史よ。今、レオンハルト王のところなの。」
「あぁ、赤薔薇王か。」
「えぇ、そう。」
ミリィが本を掲げるようにして、レオの前に示した。
「この頃はイザリエの最盛期よ。特にレオンハルト王と彼の息子のフィリップ王のころは文学も音楽も絵画も、最も優れていたと言われているわ。」
「ふっ、それくらい知ってる。俺を誰だと思っている?」
「そうだったわ。」
得意気に言うミリィが微笑ましく思わず苦笑すると、ミリィはむっと不満そうに頬を膨らませて本をおろした。
ずいぶんと可愛らしい反応をする。
「・・・それで、他にはどんなことが書いてあるんだ?」
「いいもの。レオは何でも知っているもの。話してもつまらないわ。」
すねたようなもの言いに、レオは肩をすくめた。
「あー、忘れたところがあるから、もう一度聞きたい。」
「・・・もう、途中で寝たら怒るから!」
そう言いつつ少し機嫌を直したのか、ミリィは楽しげに本をめくった。
素直でわかりやすい。そろそろ二十歳のはずなのに、少女のような彼女を眺めながら、図書室に響く澄んだ声で語られるイザリエの歴史に聞きいった。