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あまぞん。 ~人間に転生してしまったヤツらの物語~

ああ……俺……ここで死んでしまうんだな……。

なんかだんだん寒くなってきた。

そうだ、俺は転生できるのだろうか……。

転生したら……。



今こんな環境でも生きていける『白熊』になりたい……。



なんだか眠くなってきた……。

今日はもう眠ろう……。








「ってなって、気が付いたらまた人間になってたッス。」


こいつは先月新入社員としてウチに入ってきた後輩。

名前はええと……。


「ごめん、名前なんだっけ?」


先日顔合わせがあり、みんなの名前を覚えたはずなのに忘れてしまった。

それにしても今日は暑いな。

お茶でも飲んで喉を潤そう。


「雪白 熊郎ッス!」


ブフーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわっ、どうしたッスか!?」


コイツ、鈍いのか!?

ヤッベちょっとツボって今声出せば笑ってるのばれる……。

どうしよう……。


「大丈夫ッスか!?」


熊郎が近づいてくる、やばい、やばい。


「いや、大丈プッ……。」


これでうまくごまかせたんじゃないか!?

俺とっさに思い浮かんだにしてはやるじゃん!!


「……なんで笑ってるんスか?」



やっべぇぇぇぇ。



コイツバカだと思ってたら結構鋭いんだけど。

そんなに笑ってるのバレてた?

完璧だと思ったんだけど……。


「もしかして……自分の名前



「あー!そうだ!自分も転生したんだったー!」


くっそ、ここは嘘で乗り切るしか、

でもこいつ勘が働くからばれるか……?

さっきの話が事実だったらたぶんすぐに嘘だってばれてしまう……。



「本当ッスか!?なんで早く教えてくれなかったんスか!?」



案外ちょろいな。

いけるぞ、コイツ。


「すまんな、その、過去をなるべく思い出したくなくて……。」


なーんてな、こいつには申し訳ないけどこのままいかせてもらうぞ。

うーんと、どういう設定にしようかな……。


「あの、無理に話さなくても



「いや、熊郎がはなしプッ……」



やばい、名前をいうだけでさっきの思い出し笑いが……。

何事もなかったかのように振る舞えばいけるか……?



「いや、お前がさっき全部打ち明けてくれたからな、俺も打ち明けないとフェアじゃないだろ?」



「先輩……」



やばい、もうこいつ感動し始めてるんじゃないか?

さーって設定は大体きまったんだが……。




「なんで笑ってたんでスか?」




……。



「俺は昔サバンナで暮らしていたんだ。」


続けるしかないだろこれ、

後輩黙ってこっち見てるよ……いけるか……?


「そこでは主に狩りをやっていたんだ。」


「そうなんッスか?」


おお!後輩が食いついてきた!

そうそうこれこれ!

この調子でだませるぞ!


「そうなんだよ。動物を食べないと暮らしていけないからね。そしてその日も狩りに出かけたんだ。」


うーんっとこの後はどうしようかな。

サバンナに生息する動物といえば……。

あれしかないな。


「そう、その日はトラを狩ろうとしていたんだ。」


「……へぇ……。」


ん、なんか食いつき悪いな。

どうしたんだろうか。

けどここまできて引き下がれない!


「で、狩りに失敗してしまって食われたんだ。」


「……ふぅん……。」


どうしたんだ、後輩の白熊くんよ。

もっと聞いてきていいんだよ?

さっきのサバンナの時はめっちゃ食いついたじゃないか。


「そこで俺はこう思ったね。生まれ変わったらこんなに強いトラになりたい……ってね。」


うん。完璧にだませたわこれ。

ごめんね後輩君。

君に嘘をついてしまったよ。


「先輩一ついいッスか……?」


「なんだい後輩君?」


なんか上司と部下の関係っぽい!

そうそう!これだよこれ!まさにこれ!

なんでも質問してきていいからね?

ほう・れん・そう大事だからね?





「サバンナにトラっていないッスよ?」





……。



そうなんだ。



……。



ふぅん。



……。



「大変申し訳ございませんでした。」


90度直角。


「先輩……顔を上げてください……。」


なんて優しい後輩君なんだ……。

そっと顔を上げると満面の笑みで迎えてくれた。

すべてを許してくれるのか……後輩君よ……。




「人間も、所詮動物ッスよ!」




「あははそうだよな!」




「「あははははははははは」」









このあと5日間二人の関係はギクシャクした。

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