変わり始めていく関係
そして波乱の学校の終わり、放課後になりました。
「おーいトータ!明日も小人さんを連れて来てくれよー!」
そう言ったのは関谷でした。
色々やりあっていたけど小人さんがとても気に入ったようです。
「私からもおねがーい!」
そう懇願するのは小嶋さん。
いつか小人さんを自分の部屋に呼ぼうと画策する野心家です。
「帰り道途中まで同じだろ?一緒に帰ろうぜ!」
「あ、ずるーい!私も私もー!」
トータを一緒に帰ろうと誘ったのは平賀でした。
彼は前からトータと少しだけ仲が良かったとは言え、それまでは一緒に帰る事は
ありませんでした。
そう、小人さんが現れた事でトータに興味を持ち始めたのです。
そして平賀がトータと一緒に帰りたいと言うとそれに早速反応する小嶋さんでした。
「え?トータって何処に住んでるんだっけ?」
そう質問したのは田辺でした。
何だかんだ言って田辺だって小人さんとトータに興味津々なのです。
「あー!部活さえなけりゃ!」
トータと田辺のやり取りを横で聞いていた関谷はとても悔しそうでした。
でも彼は野球部のレギュラーなのでそう簡単に部活をサボる事は出来ません。
夕陽に照らされてちょっと淋しそうな顔でトータにさよならする関谷でした。
今まで誰かと喋るのが苦手で、いつも一人でいる事ばかり意識を向けていたトータ。
下校時でもそれは変わらず、例え誘われてもあっさり断って一人で帰るのが常でした。
クラスのみんなもそんなトータにあえて接触しようとはしませんでした。
それが小人さんの出現で状況がガラリと変わってしまったのです。
トータの方も小人さんの所為で朝から調子が狂いっぱなしで、今ではもう気分が
とてもハイでみんなからの下校の誘いに文句一つ言いませんでした。
そして急に人気者になったトータは高校生活で初めて一人で帰らない下校を体験しました。
みんなとワイワイ楽しく話す帰り道…トータにとってそれは新鮮な感動でした。
いや、それはただ忘れてしまっていただけなのです。
小学生の頃、まだトータが幼かった頃に確かに味わっていたはずなのです。
少し大きくなっていつの間にか一人で居るのが当たり前になってしまって
いただけなのです。
次の日からトータと小人さんは一緒に学校に行くようになりました。
そして初めはあまり喋れなかったトータも次第にクラスのみんなと小人さんを
通して打ち解けられるようになって来ました。
そうしてトータは初めて学校が楽しいと思えるようになって来ました。
クラスのみんなも最初は小人さん目当てでトータの周りに集まって来ていたの
ですが、小人さんとやり取りするトータを見ていて今まで何を考えているのか
分からなかったトータの事を少しずつ理解し始め、最初からトータと話す為に
集まる人も出てきました。