人気者になる小人さん
でも大喧嘩に発展する事にはなりませんでした。
そう、教室には女子のほぼ全員がここに集まってきていたからです。
「何言ってんのよ!小人さんに失礼じゃない!」
「あー、そーかいそーかい」
関谷は鬱陶しいと言う顔をしながらその場を離れていきました。
そんなやり取りを挟みつつ、小人さんを中心に一斉に注目を浴びるトータ。
今までにない感覚が彼をとても不愉快な気持ちにさせるのにそう時間は
かかりませんでした。
「あーもう!静かにしてくれよ!眠れやしない!」
「はぁ?この状況で眠ろうって言う訳?」
トータのその言葉に何にでもすぐに突っ込みを入れたがる田辺が
かみつきました。
田辺の突込みには誰だってイライラしてしまいます。
トータもその例に漏れませんでした。
「悪いかよ!毎日こいつの相手で寝不足なんだよ!」
「毎日?じゃあ前からお前んちにこいつがいたのか?」
「そうだよ!お陰でこっちは迷惑しっぱなしだよ!」
思わずトータは大きな声を出してしまいました。
普段から無口なトータがこれほどまでに大声を出すなんてとクラスメイト
全員がびっくりするほどでした。
その興奮ぶりにクラスの誰もが真相を聞きたくなりました。
無口な少年をここまで変化させてしまった秘密が知りたくなったのです。
みんながゴクリと息を呑む中、副委員長の吉野さんがトータにその事を聞きました。
「どう言う事?良かったら詳しく話してくれない?」
トータは小人さんが自分の前に現れた経緯やそれからの事をみんなに話し
始めました。
最初は誰も信じられない風な顔で聞いていましたが、目の前にいる小人さんの
否定出来ない存在にただただ納得してしまうしかありませんでした。
「それじゃあトータもちょっとかわいそうだよなぁ」
「だろ?結構不幸なんだよ、俺は」
周りが小人さんに注目している中でトータの事を気にかけてくれる人も出てきました。
トータに同情したのは今までもたまにトータと話す事のあった平賀でした。
トータの心情を気にかけたくれた彼の言葉はトータを少し心強くさせてくれました。
「こんなに可愛い小人さんが一緒にいて普通は楽しいと思うけどなぁ」
「だからこいつ我侭なんだって!」
でも女子は相変わらず小人さんの容姿から全てを判断しています。
何も分かっていないその発言にトータは少しむきになってしまいました。
「小人さんはどう?トータに酷い事されてない?」
「んなッ!」
そのトータの返事を無視するように小人さんの事ばかり心配しているのは
かわいいものハンターの小嶋さん。
今度は小人さんにトータの印象を聞いています。
あんまりないがしろにされたのでトータはちょっと憤慨しました。
「んー?良くもなく、かと言って悪くもなく…普通だな」
「普通?あのな、俺がどれだけ毎日苦労を…」
小人さんの返答は「普通」。
その返事に昨日までの努力は何だったのだろう…こいつ何様?とか考える
トータでした。
そんな二人のやり取りをよそに小嶋さんは目をキラキラ光らせながら早速
アタックを開始します。