現れた小人さん
キンコーン…。
HRも終わって一時間目のまでの休憩時間。
トータは相変わらず一人きりです。
ネットゲームとはご無沙汰になったとは言え、代わりの時間を小人さんと
のやり取りに費やしている為、現実世界での繋がりは今までと何等変わり
ありません。
クラスの誰かと話す事もなければ話しかけられる事もない、そんないつもの
学校生活を続けていました。
しかも延々と続く小人さんの話し相手になっていたのでトータの睡眠時間は
やっぱりそれまでとさほど変わってはいませんでした。
つまりは寝不足の日々は今も終わりを告げていなかったのです。
そんな訳でトータはいつものように机に突っ伏して短くも貴重な睡眠を
取ろうとしていました。
その時です、周りがざわめき始めたのは!
「…ぉぃ、アレ…」
「うそ!?」
「ええッ!」
「マジかよ?」
「本物?」
トータは周りの雑音が自分の方に向けられているのを感じました。
普段ならクラスメイトの声なんてただの雑音にしか聞こえていなかったのに
自分に注意が払われていると思うと何だか気になって仕方なくなりました。
トータは周りの声を注意深く聞く事にしました。
まずは今どういう状況なのか正確に判断しないといけません。
じっくりと様子を伺うトータ。
しかし、現実はトータをあまり長くその状態でいる事を許しませんでした。
なぜなら、あの聞きなれた生意気な声が彼の耳に入ってきたからです。
「おい!みんなお前に注目してるぞ!寝ていてどうする!」
そう、小人さんです。
朝見当たらなかったと思ったら学校にまで付いて来ていたのです。
元々体が小さい為にこっそり鞄の中に入って来ていたのでしょう。
ついに小人さんはみんなの前にその小さい姿を披露しました。
「だーっ!なんでお前がここにいるんだよ!」
「お前が毎日好き好んで出掛ける場所だ!興味を持って当然!」
「誰も好き好んでねーって!」
そのやり取りをクラスのみんなが注目していました。
トータは頭に血が上っていてスッカリその事を忘れてしまっていました。
「おおッ!喋ってる!」
「動いてる!」
「どうしたんだよそれ!」
「ねぇねぇ、名前は何て言うの?」
「てゆうか、これ現実?」
次々に喋り出だすクラスメイトたち、騒ぎはいっそう大きなものになりました。
そしてその瞬間トータはクラスの話題の中心にいました。
もっとも、注目されたのは小人さんの方でしたが。
あまりの突然の出来事にトータは恥ずかしくなって喋れなくなってしまいました。
「やあやあ皆さん、初めまして!」
「おおッ!スゲェ!」
「ロボット?…まさか本物?」
「ねぇねぇ、こっちおいで♪」
「こら、トータも何か言ってやりなさい!」
みんなが注目しているのをいい事に調子に乗る小人さん。
しかし、この注目されている状況でトータはすっかり動転していました。
「何かって…」
小人さんの質問に思わず素で返す始末です。
そのやり取りに割り込んで入って来たのが我侭さではクラスでも1、2を争う
関谷でした。
「トータなんてどうでもいいんだよ!俺はお前の事が知りたいの!」
「お前とは失礼な!」
「口の悪い小人だなぁ…」
関谷と小人さんが早速やりあいを始めました。