新しい生活
食事は小人さんの分も必要な為、少し多めによそっては親に見つからない
ように自分の部屋に持って来て食べました。
トイレもお風呂も寝る時も一緒です。
そして部屋には誰も近付けさせないように、しっかり鍵をかけるように
なりました。
趣味のネットゲームも小人さんの事が気になってあまり集中出来なくなり
以前よりプレイ時間は短くなっていきました。
小人さんの方はと言えば、毎日があんまり退屈なものだからしょっちゅう
トータに話しかけては暇を潰していました。
そんな小人さんを最初はわずらわしく感じていたトータでしたが、いつの間にか
彼とのやり取りを楽しむようになって来ていました。
小人さんが話す彼らの世界の話は荒唐無稽のようでいて実は結構理にかなって
いたりして突っ込みどころを探していたはずが結構興味深く耳を傾け、逆に
真剣に聞き込んでしまっていたり。
トータもこの世界の話を小人さんに説明するのですが、小人さんの方は結構
この世界に詳しいらしく、大抵の事はトータより詳しく知っていてトータは
驚くやらびっくりするやらでした。
そんなこんなで一週間が過ぎようとしていました。
奇妙な共同生活にも馴れ、二人が一緒にいるのは当たり前のようになって
きていました。
そしてまたいつものように朝がやってきました。
「じゃあ、俺学校行ってくるから大人しくしてろよ!」
「お前がいない間退屈で死にそうだ、部屋からも出られないし」
「仕方ないだろ!お前が他の奴らに見つかったらパニックになるんだよ!」
「要するに、他のみんなにバレなきゃいいんだろ?」
「とにかく、騒いだら親に感づかれるから絶対静かにしてるんだぞ!いいな!」
「この部屋に一人きりで黙ったままでいられる訳ないだろ!」
「今までずっとちゃんと出来てたじゃないか!今日も同じにしてればいいの!
じゃあな!」
トータはいつものように駄々をこねる小人さんの相手をしながら学校に行く
支度をしていました。
全ての準備が整って部屋を出ようかとした時、振り返るとそこに小人さんの
姿が見当たりませんでした。
「あれ?いつもならまだここにいて駄々こねてるのに…」
その場でぐるりと部屋を見渡すトータ。
やっぱり小人さんの姿は見当たりませんでした。
ただ、小人さんは小さいのでどこか家具の隅に入り込んだだけでもう見つから
なくなってしまいます。
トータは小人さんがすねてどっかに隠れたんじゃないかと思いました。
そして見当たらない事はあまり気にせずに学校に行く事にしました。
(つづく)