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第三話 初めまして! 改めて言うと変な感じだな!

もう少し文字数を伸ばしたい……

 「誰かパーティー組んでレベル上げ行きましょう!」

「今から草原に行く人は私とパーティ組みましょう!!」

「支給薬売ってくれる人いませんかーー!?」


 ……さて、大きな広場のど真ん中にいる俺は、現在人混みにモミクチャにされている。


「だぁああ! テメーらどけ!!」


 無理やり活路を開き広場の端に抜け出ると、ようやく一息つく。


「はぁ、はぁ、始まる前からなんでこんなに苦労してんだよ俺」


 乱れた呼吸を正し、視線を上げる。


「うわ、こりゃすげえや」


 中世ヨーロッパをイメージしたような街並みは、まるで本物の世界のようで、たまに不自然なところが違和感を残す程度で、どう見ても仮想には思えない。

 現代科学も進歩したなぁと、感慨深く頷いていると、肩をトントンとつつかれた。

 「ん?」と振り返ってみると、そこには可愛らしい顔立ちの少女がいた。


「あ、やっぱりお兄ちゃんだ。全然変わってないね。逆にびっくりしたよもー」


 ……はて? この子は誰だろか。非現実的なまでに白銀に輝き、一部が綺麗な黒髪になっているショートカットの髪に、小柄な体。そして腰には細い剣を下げており(俺も同じものを持っている。そして背中に木の杖)、何より目を惹くのは腰あたりから生えている白黒の縞柄尻尾に頭には同じ柄の猫耳。これが獣人族なのだろう。猫族の……毛並みはアメショー? ……で、一体誰……あれ? この子、俺のことをなんて呼んだ?


「……ま、まさかまつりか?」

「うみゅ、今はあがめだよ!」


 まさかの妹様だった。そしてなんだその名前は。


「うん? まつりから祀り、で崇める、であがめ。簡単な言葉遊びだよ~」


 ああ、そうかい。俺も似たようなもんだし、いいか。


「まあ、いいや。こんなに早く合流できるとは好都合。で、他のみんなは?」

「もう来てると思うんだけど、どうだろう、この人だかりだしすぐには見つかんないかもね。とりあえず広場の周り回ってれば会えると思うよ」

「だな、じゃあ行くか」

「おーー!!」



「あ、兄さん。それにつり姉も」


 結論から言うと、弟がすぐそばで見つかった。何故かまつ……崇と同じ顔で金髪の妖精族だったんだが、名前はたたり。超ややこしい。名前の方は事前に打ち合わせていたらしいが、顔は一緒にする予定ではなく、完全に双子パワーとしか言い様がないらしい。


で、だ。三人でさらに探す。すると、なんか来た。


「おーい! やっと見つけたぜ! 戯は全然変わってねえな! すぐにわかったぞ」

「「来んな変態」」

「ひどっ!? 妹ちゃん共々酷い!!」

「だから寄んな。たたりが怖がっているじゃないか」

「へ、変態です……変態です」

「ちょ、俺のどこが変態なんだよ!?」

「「全部だよバケツ男!!」」


 俺の目の前に現れた変態ひろきは、二つ穴があいたバケツを被り、ゴツイプレートアーマーを……上半身だけ身につけた赤ふんどしの超変態だった。


「これには訳があるんだ! ていうか妹ちゃんは知ってるはずだよね!?」

「……そうなのか?」

「てへっ☆」

「…………」

「あ、痛っ、無言でヘッドバットかけないdってイタタタタタ!!」

「変態コワイ変態コワイ…………」


 カオスな空間が広がった。


 アレス(カッコつけすぎ似合わん)の説明によると、重装備(普通より頑丈な鎧)を装備するために『防具:重装備』というスキルが必要で、それをつけると重装備が一つ貰えるらしいのだが、貰えるのは一つだけなので、上か下か頭のうちどれかしか貰えないらしい。そして、このスキルにはデメリットとして重装備以外装備できなくなるらしく、その為、上が当たってしまったアレスは下に何も付けておらず初期の所持金で買えたのは頭専用の重装備であるバケツだけだったようだ。

 おまけにアレスの種族を言っておくと、巨人ギガント族という防御超重視の種族らしい。本当はモンスターの大鬼オーガと迷ったのだとか。

 巨人と言っているが、見た目は普通だな。フンドシは巨人族の基本下着らしい。この世界の巨人はどうなっているんだ……。

 あ、このゲームでは種族をモンスターにして遊ぶこともできるのだ。


「布装備ならつけられるんだが、それを装備すると重装備のデメリットとして全ての重装備を外さないといけないんだよ。だから、フィールドに出るときは結局この格好になっちまうんだ。なら最初からこうしとけば楽だろ?」


 ちなみにアレスもアガメ(ややこしいからカナ表示)もメインが戦士職のため、アガメは革防具をもらっているらしい。


 タタリは魔法職で布防具。俺の遊人は胴体だけ革で、後は布らしい。

 そして、さい姉を探す道すがら、アガメにメインが遊人だと言ったら、


「お兄ちゃんバカ!?」


 とか言われた。解せぬ。


「なんでメインが遊人!? ていうかなんで職業に遊人!? あれ確かに全武器装備は便利そうに見えるけど、スキルがないとアーツは発動できないんだから、素直に戦士にした方が得なんだよ。それに、職業って職業レベルが10になるとその上位の職に転職できるんだけど、遊人はレベルが10を超えても上位職が出なかったんだよ。それで、もしかしたら何か隠し条件があるのか、上位職のないネタ職業かもしれないって言われてて、そんな不確定要素を使うくらいならって皆遊人は選んでないんだよ?」


 なんだって!? 俺はそんなこと聞いてないぞ!?


「いや、サービス開始前にβテスター達の作った掲示板に載ってたよ。もしかして見てない? 普通始める前にある程度の攻略とか調べると思うんだけど……」

「え、そうなのか?」

「ああ、お兄ちゃんはMMO初めてだった……」


 なんだその可哀想なものを見る目は。


「……じゃあ、種族は? 見た目からして普人族? お兄ちゃんの言ってたプレイスタイルにはあってるけど、それ、結構いばらの道だよ?」


 なんだと、ならやはりこれでよかったようだな。


「一応ホムンクルスってのにしてみたんだが……」

「…………なにそれ」


 え? あれ? 知らないのか? 選択肢の序盤の方に出てきたんだが。


「あー、もしかしたらレア種族かも」

「レア? 貴重なのか?」

「うん、確か100分の1の確率で、他の人にはない選択肢が出てくることがあるんだ。多分そのホムンクルスっていうのもそれだと思う。どこに出てくるかはわからないから、一番下の欄とかに出てきて気付かずに見逃す人もいそうだけど、お兄ちゃん運が良かったね」


 そうなのか。やはり選んでおいて正解だったな。


「ところで、どんな効果なの? レア種族だったら結構強いんでしょ?」


 そう聞かれ俺は魔石が必要なこととか、オールマイティなところを言ったら……。


「魔石!? あのレアドロップの!?」

「え、レアドロップ?」

「そうだよ! 50匹のモンスターに一個取れるかどうかの確率だからそこまで貴重ってわけじゃないけど、それだけを集めるとなると結構大変だよ? まあ、初期のMPは3時間分あるって言うなら、間に合うとは思うけど、うーん、魔石かあ、武器に魔法属性を付与したりするのに使うから、結構貴重で転売は絶望的だなぁ。自力で集めるしかないよ。頑張って。もし動けなくなったら私が手伝うから!」


 な、なんということだ、コスパは最悪に悪いじゃないか……!


「まあ、今から頑張って戦えばいいんだよな。幸いパーティーメンバーはいるんだし、なんとかなる」


 こいつらに頼らなきゃならんのは甚だ不本意だけどな!


「っていうかどこにもいねぇ!!」


 さい姉はどこに行ったんだよ!!


「ここよ」

「どひゃぁあああああ!!!!」


 後ろから!? ってかいたなら早く教えろよ!

 冷めた目で俺を見上げて……見上げて? ……なんかアガメより小さくなったさい姉がそこにいた。顔立ちも髪型もさい姉のままだ。っていうかその髪型手入れしてなかったわけじゃなくて気に入ってたのかよ。耳が尖っているから種族は森人族か。全身をすっぽり覆う藍色のローブに同色の三角帽子を被っている。きっと買ってきたものだろう。


「今来たのよ。色々買い物してたの。ほら、用意はしっかりしとかないと後で悔やんでも遅いし」


 む、確かにその通りだな。


「じゃあ、俺も何か買ってくるか」

「そうしなさい。あ、私はサイよ。アルファベットでSay。覚えといてね~」


 そして、あいつらと一旦別れ、俺は店を見ることにした。



 とはいえどこを見ればいいんだ。


「店の並ぶ通りはここか、武器は今んとここれでいいか。じゃあ回復薬とかが必要なのか?」


 俺はステータス画面のマップを表示しながら道を歩く。

 あ、ステータス画面っていうのは、アバター制作時に使った水色のガラス板みたいなもので、俺の情報とか、持ち物とかが記されている。俺のステータスはこんな感じだ。




 名前

 遊羽Lv1


 性別

 


 種族

 偽人ホムンクルス


 職業 メイン:遊人Lv1

     サブ:職人Lv1


 所持金:2000エン


 ステータス


 HP:50/50

 MP:147

 SP:20/20

 攻撃:21(+1)

 防御:23(+5)

 知力:20

 精神:20

 敏捷:19(+1)

 器用:16

 運:12


 装備


 頭:『バンダナ:防御+1』

 胴:『ボロ皮の鎧:防御+1』

 腕 右:『ただのミサンガ:防御+1』 

左:『ただのミサンガ:防御+1』

 腰:『麻のズボン:防御+1』

 靴:『ボロの靴:敏捷+1』

 武器 右:『ショートソード(粗悪品):攻撃+1』

    左:なし


 ギフトスキル


 ???:開示されていません


 スキル


 『武器:剣術Lv1』『魔法:土属性Lv1』『錬金Lv1』『調律Lv1』『賭博Lv1』『ステップLv1』『全能力上昇Lv1』




 ちなみに普人族の平均が15だと聞いた。うん、結構なものだな。そして、今の時点だと、3時間分のMPを貰っているってことは、今の時間だと……180だったという計算として、1分に1消費!? 重くねえか? 確か、土属性魔法の初級魔法は……


『ストーンバレット:石礫を作り出し相手に攻撃する 消費MP10』

『ストーンガード:石を固めた小さな盾を出現させる 消費MP15』

『サンドホール:砂で巧妙に隠された落とし穴を作る 消費MP20』


 やっぱ重くねえか!? くそっ、これはMPが貯まるまで剣術オンリーだな。

 ……ん? この『ギフトスキル』って、あれだよな? なんで『???』になってんだ?


 ってか、それより気になることがあるんだが……なんで性別がないんだよ!? ホムンクルスだからか!?


「って、そんなことより買い物だったな」


 俺はとりあえず疑問を振り払い商店街を観光しながら目的の店を探す。

 八百屋、肉屋、果物屋……なんか、食材がすげえ並んでんだが、料理は人気なのか? 武器屋とか防具屋よりも目立ってるし……で、一番奥にあるのが依頼を受けるための役所(ギルド本部)で、プレイヤーでギルドを作るのにもあそこに申請を出すのか(マップの説明を読んでいます)。ええと、俺の目的地は雑貨屋だったな。回復薬が欲しい。

 あれ、そういえば俺の持ってるものってなんだ?


 初期持ち物

『支給HP回復薬:HP10回復』×5

『支給MP回復薬:MP10回復』×5

『剥ぎ取りナイフ』

『松明』


 この四種類か。後必要なのは……。


「MP回復薬は意味ねえから、とりあえずHP回復薬だ。300Eのを5個買って、残りの500Eはとっとこう」


 とりあえず最初はこれでいいか。

 俺がそう思い、NPCノンプレイヤーキャラクターの店主に礼を言い店を後にする。


「じゃ、さっさと戻るか……」


 と、広場に行こうと足を勧めたところ……。


「そこの君、ちょっといいかい?」


 と、肩を掴まれ呼び止められた。


「はい?」


 振り返ると、ヒゲの生えた小汚いおっさんが俺に笑みを向けていた。見るからにプレイヤーじゃないな。NPCか?


「実はここだけの話、スキルを巻物にした貴重なアイテムを持っているのだが、どうだい? 10000Eで買わないかい?」


 なんだ、この胡散臭いの。


「いえ、間に合ってますから」

「まあまあそう言わずに。なんなら7500Eでもいいよ」

「いえ、お金ありませんし」

「ん~、なら5000だ!」

「いりません」

「じゃあおまけして2000!」

「だから無理です」

「それじゃあ、1000なんてどうだい? 結構無理してるんだよ」

「いや、それでも買えませんて」

「かーー! 君には負けたよ。なら500Eだ! これでいいだろう。流石にこれ以上は負けられんよ!!」


 なんなんだこの人は…………。


『スキルの書を購入しますか?』


 目の前のウィンドウに『はい』と『いいえ』の選択肢。

 ああ、これイベントか。しかし、


「『いいえ』で」


 自分の意見は曲げない。


「……そうか。それは残念だ。また会えるといいね」


 そう言いおっさんは寂しそうに去っていった。……なんか可哀想なことをしてしまった気がする。


「……まあいいか。早く戻ろう」


 俺はその後、何事もなく皆と合流した。



「じゃあ、早速レベル上げに行くか」

「あ、サイ姉とタタリ、MP回復薬あげる」

「わあ、ありがと、兄さん」

「あら、愚弟のくせに気が利くじゃない」

「お兄ちゃん、私には?」

「あるわけねえだろ」

「えーー」

「聞けよおい!!」



 人気の少ない門の前で、俺、アガメ、タタリ、サイ、アレスは今後の日程について話し合っていた。


「……んで、なんでこんなに人がいねえんだよ?」


 俺はさっきから思っていた疑問を口にした。あの広場とか商店街はプレイヤーで溢れ返っていたのに、街から出るための門の前ではまるで違う世界のように人がいないのだ。


「まあ、簡単に説明すると、この『始まりの街』には東西南北に1つずつ、合計4つのもんがあって、それぞれがそれぞれのフィールドに繋がっている」

「ほう」


 1つの街に4つのフィールドというのがこのゲームの常識だと教えられる。


「んで、東は草原、西は岩場、南は砂浜、北は森ってのがこの街のフィールドで、ここは北門。森への入口だ」

「ふぅん、で、なんで森の入口に人気がないんだ?」

「そりゃあれだ。4つのフィールドでこの森が一番難易度高いからだ」

「ほうほう……ってちょっと待て」


 俺はさも当然のように説明を続けるアレスを止める。


「なんで一番難しいところに来てんだよ、初心者が三人もいる……どころかお前とアガメだってLv1だろうが」

「まあまあ、Lv1とは言っても俺達はβでトッププレイヤーだったんだ。勘も忘れてねえし、この森くらいなら簡単に突破できる」

「ボスはさすがに無理だけど」

「それに、俺達は五人パーティーだ。ゲーム開始からいきなりこの人数のパーティーが組める奴なんてそうそういない。だからここにこないだけで、実際にはパーティーの最大数である6人いれば、基本的にボス前までは制圧可能だ。だから、人が来ない今のうちにここで効率のいいレベル上げがしたいんだよ。夕方にでもなればこっちにも人は来るだろうしな」


 なるほど、経験者の判断で、ここは突破できると考えたわけか。なら、問題はないか?


「まあ、御託はこの程度にして、まずは行動あるのみ! レッツゴー!!」

「あ、こら待て!」


 アガメが先に行ってしまったので俺たちもその後を追いかけて森に入っていったのだった。


うむむ、才さんの小型化は正解だっただろうか……。

あ、ちなみにステータスの数値には、スキルによる上がり値を表示しません。なぜなら計算が面倒だからです(ドヤァ)! ……あ、ほんとにすみません。気が向いたら修正しますから。まじで。だから石は投げないで下さい。

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