プロローグ的な?
お久しぶりの人はお久しぶりです。
前に書き直すと言いましたが全然進んでおりません。とりあえず出来たところだけと思いこんな中途半端になってしまいました。申し訳ございません。
書きたくなって書きました。反省してます後悔してません。
「お兄ちゃん、私と……シヨ?」
「…………」
もうすぐ夏休みに入ろうかというその日の夕方……自己主張の激しい真っ赤な夕日さえ俺の目には映らず、目の前で頬を染める少女にのみ、俺の意識は向かっていった。
俺は愉遊識戯。自分の名前が珍しいということは掛け算を覚えきる前からもう知っている。まず戯はあそびと読まない。
名前のことを除けば、家族構成は両親、姉、妹、弟、そして俺の六人家族。よくある一軒家在住、家族の誰かに血の繋がりがないわけでも莫大な借金を背負っているわけでも先祖代々悪霊を退治してきている由緒正しき能力者というわけでもなく、ただただ普通な普通高校の二年生である。
そして、俺の眼下で俯き加減にもじもじと蠢いている謎生物は我が家が誇る『破壊神』次女愉遊識まつり、不肖我が妹様である。
母の血を濃く継いだサラサラとした黒髪ボブカットの動きやすそうな髪型。
全体的に引き締まっていて、女子にしては筋肉質な、それでいて可憐さを損なわないバランスのとれた健康的な体躯、小さすぎるのが珠に傷(何がとは言わないが)。
ちなみに二つ下の中学三年。
「……シヨって、何をだ」
この妹様が何を考えているのか知らんが、きっと碌でもないことに決まっている。
俺は白い目で妹様を見ながらも、何が来てもいいように悟らせない程度の構えを取った。
全神経は妹様の次に行うだろう行動を予測し、その可能性の全てに対応できるように集中することに使い、目の前の脅威以外の事を考えるなんて余裕は――。
「なんでそんな臨戦態勢!?」
「お前が嫌いだからだ」
「即答!?」
おっといけない、いつの間にか普通に構えてしまっていた。これではバレても仕方がないな。
「冗談はここまでにして、そのシヨってのはなんのことだ? 事と次第によっては……」
「ちょ、なんか怖いよお兄ちゃん!? ……えーと、シヨっていうのは、お兄「断る」まだ何も言ってないよ!!」
「お前が俺にお願いすることなんて基本的に面倒事か厄介事か馬鹿馬鹿しい事だからな」
この妹様はよくトラブルを持ってくる疫病神だからな。
「む~、今回は違うよ~。えっと、実はね? お兄ちゃんにゲームをやってほしいの」
「ゲーム?」
ゲームか、そう言えばこの妹様はアウトドアな癖して重度のゲーマーだったな。俺は有名タイトルを数本やった程度で、ゲームに関する知識なんて無いにも等しいのだが……。
「何のゲームだよ」
「えっとね~、最近話題になってるんだけどね? あのVRMMORPGの『七つ星』を皆でやりたいなって!」
VR……バーチャルリアリティの事か。そう言えばCMであったなぁ。グラフィックも綺麗だし、ストーリーも面白そうで興味がないわけではないんだが……。
「でもそれ高いんだろ? まだ発表されたばっかだし、発売日だってもう直ぐだったんじゃなかったか? 予約してないのに買えるわけないって」
流石に夢とまで言われていたVRなんだ。ソフトも本体も結構な値段するだろう。妹様の分だけならともかく、俺の貯金じゃもう一台なんて買えねえよ(すでに妹にたかられる気でいる優しい兄)。
「そこは心配いらないよ! 私の分はβテスター特典で優先購入権が貰えるし、お兄ちゃんの分も皆で相談して予約済み! お金はお父さんに甘えたら貰えた!」
「仕事が早いな……全く、父さんはまつりに甘いんだから……って、皆?」
俺は姉と妹様に甘すぎる父に幻滅しながらも、妹様の言葉に疑問を持ち、首を傾げた。
「そう! お姉ちゃんもみこしもやるんだってさ!」
「そうなのか」
そうか、あの二人もやるのか。
「あ、そうだ、あとヒロ君もだって。明日家に集まって色々説明するから、今日はまあ……お兄ちゃんに一応承諾もらおうかなーって……駄目?」
全くコイツは……
「駄目もなにも、もう予約してるんだったらやるしかないだろ。それに、家族の好意を無下にするのは流石に……な?」
「お兄ちゃん! ありがとっ!」
「おっと、急に飛びつくなよ」
さっきまで泣きそうな顔になってたのに、急にパァっと明るくなりやがって、この百面相は見ていてなかなか楽しい……。
「やっぱ、女の涙はサイキョーの武器だねっ!」
「…………」
予約、取り消そうかなぁ……
「で、そのゲームはいつ取りに行けばいいんだ?」
「今日だよ」
「…………は?」
「だから今日だよ! 何の為にわざわざゲーム屋に近い公園に呼んだと思ってるのさ! 早く行くよ!」
「え、マジで? ちょ、嘘ォおおおお!!!!」
マジで、やめようかなぁ……
「お帰り兄さん。あ、『SWO』買ったんだ」
「おーう、みこしか。ただいま。お前もやるんだってな」
あの後、行列に押し流され精神的にも物理的にも色々削られながらも目的の品を勝ち取ったホクホク顔の妹様と俺は、両手に重いゲーム機をぶら下げて帰ってきた。……まさか4台も持たされるとは聞いてないぞ……。
ちなみにSWOというのはセブンス・ワールド・オンラインの略だ。
「今夕飯作ってるから、兄さんも早く手伝ってね」
「悪い悪い」
紹介しよう、うなじを隠すくらいの長さの栗色の髪を後ろで括り、薄桃色のエプロンを下げた学ランの、五人中五人が美少女だと答える可愛らしいこの子は俺の弟の次男、愉遊識みこし。一応まつりの双子の弟ということにもなっているが……どこをどう間違えたのか、あの凶暴な破壊神の片割れがこんなに可愛らしく、それでいて美しさも兼ね備えた本物の美人になるなんて……。
「わっ、ちょ、ちょっと兄さん!? 急にどうしたのさ」
「お前は奇跡の賜物だ。我が家の宝だ。俺の希望だ」
「まーた始まった。お兄ちゃんは本当にみこしが好きね~」
「何を言うか、家宝を愛でずして何を愛でる」
「いや、家宝は愛でる物じゃないと思うんだけど……っていうかいい加減に離してよ~、ご飯の支度ができないよ~」
気遣い満点優しさ万点家事全般に適正有り。流石俺の弟だ!
「もうやめなさいよね~、お腹空いてるんだから早くしてよ」
俺が玄関まで出迎えてくれた健気な弟を愛でていると、リビングのソファの上で毛布に包まっていた人影がムクリと起き上がる。
「む、さい姉……」
「ん~? 何よ愚弟。とっとと賢弟を開放しなさい。私のご飯がまだ出来てないのよ」
これは愉遊識才。長女にして俺達三人の姉にして頂点。腰辺りまで伸ばした黒髪は、ちゃんと手入れしているのか疑ってしまうほどにボサボサで、癖になってしまっているのかあちこちがあらぬ方向に跳ねてしまっている。
背は高く、高校生の平均身長を少し上回る俺すらも10センチ上から見下ろしてくる。
グラマーとまでは言えないが、スタイルもかなりいい方だろう。
そのくせ顔立ちは綺麗に整っていて、髪さえどうにかすれば弟と並ぶ程の美少女になれるというのに……残念な姉である。
しかし、見た目はともかく中身は凄い。姉が通っている大学では、二年生にして既に大学三年までの内容は全て完璧に覚えているし、当然の如く成績はトップをキープ。興味があることと言う条件は付くが、瞬間記憶能力なんていう特殊な才能も持っている。
一応尊敬する姉ではあるが、怠け癖とサボり癖と女子力の無さ、特に家事については色々と物申したい。
「ふん、みこしの良さを俺より分かっていないくせによく言う」
「なんですって?」
「みこしを離して欲しくば俺の知らないみこしのいいところを言ってみろ!」
「……いいじゃない。言ってやろうじゃないの。愚弟より私の方が賢弟を知っているに決まっているわ」
「ふん、俺のみこし魅力帳は百八冊まであるぞ」
「いいから離してよ~~~」
「何やってんのかね~……」
その後、俺は姉さんに百九冊分のみこし観察日記を見せられ、泣く泣くみこしを離し夕飯作りを手伝ったのだった。……あ、一応言っとくが俺はブラコンではない。家の女共がろくでもないから自然にこういう扱いになってしまうだけなのだ!
「てか、まつりは手伝えよ」
「えーやだ。お姉ちゃんにやらせてよ」
「おまっ、死人を出す気か」
「ほう? 言ってくれるじゃないか愚弟。私だって料理の一つや二つ……」
「「「ビクッ!!」」」
「まあ、やらないけど」
「「「やらないのかよ!!!」」」
今日も愉遊識家は愉快な生活をしている。
この生活が、ひとつのゲームにより大きく変わる事になるなんてことは……今の俺たちには知る由もなかった。
書いてみて思いました。
「あれ? この先の展開考えてねぇ!」
急いで原稿用紙を手に、数ヶ月の月日を無駄にしてなんとか形にしたので投稿します。更新は不定期です