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それしか出来ない
「ごめんなぁ」と その人は泣いた
私が食事の介助をしている途中での出来事だ
食べこぼしを受け止めるために広げたエプロンの下で
自由自在を失った手をゴソゴソと動かしながら
その人は泣いていた
他人に介助されることを情けなく思っているのかもしれない
自分の手で食事をしようともがいていたのかもしれない
それとも
何か過去の後悔でも思い出して 悲しくなったのかもしれない
そんな推測ばかりして 私は
涙の理由を 何となく訊けなかった
きっと 私では解決出来ない理由で
この人は泣いているのだと
そんな逃げ道を自分に作って
あくまでも介護士として笑顔を作って
「いいんですよ」と 言葉をかけて
冷めたおしぼりでその人の涙を拭くことしか 出来なかった