第五話 試合開始
こんにちは、現野 イビツです。
夜中の零時に予約掲載をしたところ、軽く5000PVを突破しました。
……これからも零時に掲載しようかな?
「──高等部第一学年Aクラス所属、“純人”神刃 クロー選手。準備はよろしいですか?」
「ん、いつ始めてもいいよ」
ここは、“スタジアム”の観客席に囲まれたメインフィールドのド真ん中。
“この模擬試合の審判を務める“風紀委員”の男子生徒がそう聞いてきたので、僕は自然体に構えたまま返事をする。
それを見た男子生徒は続いて、僕の真正面に立つ対戦相手に目を向けた。
「同じく、高等部第一学年Aクラス所属、“竜人”ガオン・鋼鱗・リザードマン選手。準備はよろしいですか?」
「あぁ、いつでもいいぜ」
相手選手の“竜人”ガオンは、男子生徒に返事をすると、僕の方に威嚇するような視線を向けながら話し掛けて来た。
「なぁ、そこの純人? 降参するなら、今の内だぜ?」
「わー、君って思ってたより優しいんだね? でも、寝言は寝てから言ってくれる?」
相手の挑発に、こちらも挑発で返す。何故か観客席が少し沸いた。
アパに聞かれてたら、こっぴどく説教をされてそうなものだ。どうせ、聞き流すから別にいいんだけど。
それよりも──、
「なっ──!?」
──挑発を返されて絶句するくらいなら、そもそも最初から挑発しないで欲しい。
ただでさえ、怒りを抑えるのに必死なんだから。
「……てめぇ、俺が“レッドテイル王国”で何て言われてるか知ってて、挑発してるのか?」
「全然知らないや」
突然、ガオンが声を低くしてそう聞いてくるが、僕は平然と言い返す。
観客たちも同様のようで、「アイツ誰だ?」なんて声がちらほらと聞こえてくる。
“レッドテイル王国”といえば、大陸南端の火山地帯に位置する、シュヴァルツシルト龍皇国とは繋がりが薄い亜人種の国だったはずだ。
生粋のシュヴァルツシルト人(というか皇子)の僕が、そんなことを知るよしもない。
しかし、ガオンはそれも挑発と受け取ったのか、やたら興奮した口調で言って来た。
「てめぇ! なら、教えてやる! 俺は、レッドテイルの紅い弾丸こと“火炎の支配者”ガオン様だっ!」
「………………」
……何か、中等部の第二学年が喜びそうだね、と思わず口にしてしまいそうになる。が、何とか口を滑らせないよう、我慢をする。
だって、人のこと言えないし……。
「どうした? 怖じけづいたのか? でも、今更後悔しても遅いぜ!」
「……はぁ、そうなの」
どうやら、僕の沈黙を恐怖と受け取ったようだ。……ただ単に、あまりのイタさに絶句してただけなのに。
もう何か、相手をするのが面倒くさくなってきたので、審判に視線で合図を送る。
それに気付いた審判は、一度大きく肯くと、声を張り上げて言った。
「両者、指定された位置に!」
その声を聞き、今までお喋りに夢中だった観客たちが一斉に沈黙する。
ガオンは、走って自分の指定位置まで行くと、腰から長剣を引き抜いてから大声で叫んだ。
「いいか、観客ども! 正直俺は、こんな貧弱な純人と“決闘”しても満足するとは思ってねぇ! だから、出来る限り会場を盛り上げた後、こいつを血祭りに上げることを約束してやるぜっ!」
……何て言うか、サービス精神旺盛なのは別にいいけど、見てて凄く痛々しいからやめて欲しい。
事実、観客席からは、今年入学した亜人種の一部からしか声援が送られてこなかった。
それ以外のほぼ全員は、可哀想な人を見る目で、ガオンを見ている。
まぁ、対戦相手をずっと観察しててもしょうがないので、僕もゆっくりと指定位置に行こうと──
「ク、クローっ!」
──したところで、観客席の最前列にいた彩那に声をかけられた。
僕は、ゆっくりと彩那と視線を合わせる。
彩那は、観客席から身を乗り出すと、申し訳なさそうな表情で、僕に言ってきた。
「その……ごめん、クロー。私のせいで、また“決闘”することになっちゃって……」
「別にいいよ、これくらい。こういうのは、もう四十回目だからね、すっかり慣れちゃったよ」
「……その、本当にごめんなさい。だから……絶対怪我しないでね」
「お安い御用、ってやつだよ」
僕は、未だに心配そうな表情をしている彩那に軽くウィンクをすると、指定位置に急いで向かう。
僕とガオン、二人ともが指定位置に着いたのを見た審判が、試合開始の目印となる旗を揚げる。
永遠にも似た、一瞬の沈黙。
──審判役の男子生徒が、大きな声で宣言する。
「それでは……試合開始っ!」
真っ赤な旗が振り下ろされた直後、会場中に歓声が轟き、同時に、僕の視界一杯に紅い炎が広がった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
次回からやっと、念願のバトルパートに入れます!
と言うワケで、次回“閃雷VS火炎(前編)(仮題)”をお楽しみに!
以上、現野 イビツでした。