表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍皇の血統  作者: 現野 イビツ
虹色の巫女と金眼の悪魔
3/26

第二話 エクシリオン魔導学園

こんにちは、現野 イビツです。今回は、予告通りヒロインが一人登場します!

ここは、僕が通うシュヴァルツシルト龍皇国で最大の学術機関――エクシリオン魔導学園。

純人と亜人、そして魔人が分け隔てなく学業を行える、中立国ならではの学校である。

何とか遅刻を免れ、無事に入学式に出席することが出来た僕は、その塔のような校舎の第十階層――高等部第一学年の階にいた。




「………………さて」

僕は、校門横に掲示されてたクラス分けに従って、1−Aの教室の前に来ていたのだが――。

「どうしよう……?」

僕はそこにある教室の扉を開けもせず、思案顔でそこに立っていた。

「入ったらよろしいでしょうに」

アパが、鞄からひょっこりと顔を覗かせて、僕にそう言ってくる。

……一応、人目は気にしていたみたいだから、突然喋り出したことは見逃してあげてもいい。けど、人が真剣に考え事をしてる時に、気の抜けるようなことを言わないで欲しい。

それが出来たら、最初から問題がないのだ。

「……ねぇ、アパ? 僕が何で悩んでいるか、分かってる?」

「華々しい高校デビューに相応しい、一際目立つ挨拶でも考えておられましたか?」

「違うからねっ!?」

このクラスにいる全員が初対面の人間なら、そうするべきなんだろう。しかし、僕は初等部からの九年の間、この魔導学園に通っているので、教室内にいる大半の人間とは顔見知りである。

「じゃあ、知らない人がいるから、悩んでいたワケではないのですね?」

「うん。……と言うか、知り合いがいる・・から、悩んでたんだけどね」

「はい? それは一体……」

僕の言った言葉の意味が分からなかったのか、アパが聞き返そうとする。が、その時――、

「――誰か外にいるの?」

教室にいた誰かが、扉を開ける気配がした。僕は慌てて、鞄の中にアパを押し込む。そして――、

「あれ、クロー?」

「……え?」

扉を開けた誰かが、僕の名前を呼んだ。

僕は反射的に視線を上げ――硬直してしまう。そこにいたのは、長い黒髪の一房を、蒼い花の髪留めでサイドテールにした美少女。

その少女は、僕の顔を見て何故か頬を赤らめた後、僕に挨拶をしてきた。

「おはよう、クロー」

「お、おはよう、彩那あやな。その……進学おめでとう」

僕は、少々ぎこちなく、その少女――彩那・アリア・白鏡しろかがみに祝辞を贈る。

「あ……」

彩那は、一瞬驚いた顔をする。が、すぐに顔を綻ばすと、僕に言った。

「ありがとう! クローも、進学おめでとう。また一緒のクラスだね」

彩那の言う通り、僕と彩那は、初等部一年から今年度を含む十年間、ずっと同じクラスに所属している。所謂、幼馴染というやつだ。

今の台詞を聞くのも九回目で、例年通りだったら、普通に返事してた所である。しかし――、

「え、あ……。そ、そうだね」

今回僕は、先程よりぎこちない返事をしてしまう。

しょうがない、と心の中で呟く。

去年までは、彩那のことを、仲のいい兄妹のようなものだと思っていたが、今日からは・・・・・事情が違うのだ。

「……あ、ナルホド」

僕が狼狽していると、鞄の中からアパの呟く声が聞こえてきた。

バレたら困るので、肘で小突いて静かにさせる。

しかし、それが裏目に出た。その動作を不思議に思った彩那が、僕に聞いてきた。

「どうかしたの、クロー?」

「え!? あ、いや……何でもないよ! そ、それより、やっぱり彩那のような純人の黒髪って、綺麗だよね!」

慌てた僕は、咄嗟に思い付いたお世辞で、何とか誤魔化そうとする。

“ファンタジア”では、純人以外の黒髪を持つ種族が、意外と少ないのだ。

しかし、そのお世辞を言った瞬間、彩那は怪訝そうな顔をした。

「『彩那のような純人』って……クローだって純人・・じゃない」

「あ」

そうだった。

春休みに“予見”の儀とかをやってたから忘れてたけど、僕はこの学校に、自らを純人と偽って入学している。

それは何故か? 答えは簡単だ。

この国の平和を守るためである。

より正確に言うなら、ここ、シュヴァルツシルト龍皇国が中立でいられるのは、この国を治めている“龍”が、純人・亜人・魔人のどれにも属さない“幻獣”だからである。

なので、もし、このシュヴァルツシルトの皇子・・である僕が亜人だとバレると、亜人側に力を貸す可能性のある危険分子として、魔人たちの侵攻を受けることになるだろう。

だから、僕は自分が“黒龍皇の血統”だと悟られないように、身分を偽っているのである。

が、彩那はそんな僕の考えも知らずに、核心を突いてくる。

「……クロー、私に何か隠してるでしょ?」

「うっ!?」

いくら幼馴染と言えども、僕の身分を簡単に明かすワケにはいかない。

……何が悲しいかって、僕が彩那に悲しい隠してる事が、一つではないことだ。

「い、いやだなー。そんなワケないじゃない」

が、もちろんその事も、彩那に話すつもりはない。と言うか、恥ずかしくてとても口には出来ない、が正しい。


――君は僕のお嫁さん候補だ、なんて。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

感想やアドバイスを、何でも受け付けてます。まだ一つしかなくて、淋しい限りですが。

それでは、次回“入学式から波乱の予感!?(仮題)”をお楽しみに。

以上、現野 イビツでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ