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黒龍皇の血統  作者: 現野 イビツ
虹色の巫女と金眼の悪魔
25/26

第二十四話 薔薇色の蝶

ハッピーニューイヤー&お久し振りです!

新年初っ端から久々の投稿です!

「………………つまり。クローは、中等部の頃に騙されてここでバイトをして以降、ここに来る度にあんな扱いを受けていたと」

「そーいうこと」

僕は、先程運ばれてきたティラミスを不満げに口に運びながら、ガオンくんの問いに答える。

……答える時、過去のことを思い出してか、少し手が震えていたけど。

今は、クローにやっと訪れた平穏なティータイム。

つい数分前まで騒いでいた店員や客達は、“烈煌閃雷ライトニングフラッシュ”や麻痺に特化した雷属性魔法──“ビリリオン・スタングランド”を使って大人しくなって貰った。

……因みに、服装は未だに巫女装束のままであるけど。

そのため、未だに店中の視線を集めている僕だが、それら全ての相手をするのは疲れたのか、可能な限り無視をして、ガオンくん達との会話に集中しようとする。

先程から近付いてくる客には、問答無用で雷属性魔法を放っているけど。

「……いいの、クロー? さっきから雷属性を使いまくってるけど?」

「いや、大丈夫だと思うよ? ちゃんと、後遺症が残らない程度には手加減はしてるし」

「いや、神刃くん……そういう問題なの?」

「うーん……どうなんだろう? さっき他の客の顔面に氷塊ぶつけてた彩那よりかはマシだと思うんだけど」

「それって、遠回しに嫌味を言ってるの、クロー?」

「イイエ。ナンデモゴザイマセン」

……。

………………。

………………………………。

(……弱すぎでしょう、クロー様)

(……だって、彩那を怒らせたら怖いのは、経験上、よーく知ってるから)

アパの言葉を聞き、過去の出来事を頭の中に浮かべる。

初等部の頃、悪戯をした仕返しに、光の鞭で叩かれたこと。

中等部の頃、友人に彩那と恋人同士かと聞かれ否定したら、水の牢に閉じ込められたこと。

そして先日、後輩の女の子に告白されたその後、何故か闇の鎌で切り裂かれかけたこと。

その全てに、僕は恐怖しか感じない。

(……もう、最後のはクロー様悪くないじゃないですか)

(……それは僕も思ってたけど)

……まぁ、触らぬ神に祟りなし、だ。

無駄に傷を負う必要なんて、一切無いだろう。

それよりも、僕にはまずやるべきコトがある。

「──取り敢えず、魔導球スフィアを渡してよ、彩那」

「ま、待って、クロー! まだバックアップを取ってないから!」

「取る前に渡して、って言っているんだけど?」

「わ、私からもお願いだよ、神刃くん! 私もあの動画欲しいから!」

「お、俺からも……」

『──“麻痺閃雷ライトニングスタン”、スタート』

「──って、何で俺だけ──────っ!?」

僕の人差し指から飛んだ電撃を喰らったガオンくんは、アバババとか言いながら崩れ落ちる。

取り敢えず、今はガオンくんのことは放っておくとして「最近、扱いが酷すぎる……」……放っておくとして。

僕は、ほうっと一息吐いた後、軽く右手を上げてツッ……と人差し指を後方に向ける。

「「「(???)」」」

僕の突然の行動を不思議に思った二人と一個と一匹が、頭上にクエスチョンマークを浮かべるが、すぐにその指に淡く薔薇色に光る蝶が乗っていることに気付いた。

「あれ? クローくん、それって……」

「もしかして、音響蝶サウンド・バタフライ?」

薔薇色の蝶を見たハノンちゃんと彩那が、そう聞いてくる。

音響蝶サウウド・バタフライとは、魔力で出来た信号を送受信をする特殊な器官が付いた魔獣で、一定の範囲内の交信を可能とすることで有名な生物だ。

ただ、遠距離との連絡方法が、魔法や魔獣、幻獣を使って移送する以外の方法が少ないこの世界では、自然界にいた音響蝶は乱獲され、今やシュヴァルツシルトを始めとする幾つかの国では、許可なく保持したら逮捕されるなんてこともあるくらいである。

だから、彩那とハノンちゃんの質問には、結構な割合で不安と心配が入っていたことだろう。

……けど、まぁ。

「──これ、“薔薇色蝶レ・パピヨン・アン・ローズ”って言う闇属性魔法でね、音響蝶サウンド・バタフライに似てわいるんだけど、また別のモノなんだよ」

「へぇー……闇属性魔法なんだ、それ」

「一体どんな魔法何ですか、神刃くん」

「ん? ……あぁ、“薔薇色蝶レ・パピヨン・アン・ローズ”? 魔力で音響蝶サウンド・バタフライを作り出す魔法だよ」

「「「………………え?」」」

僕のその言葉を聞いた彩那・ハノンちゃん・ガオンくんが、一斉に驚いた表情で見てくる。

それを見て、ようやく自分がとんでもないコトを口にしてしまったことに気付いた僕は、慌てて言葉を付け加える。

「あ、いや! 音響蝶サウンド・バタフライって言っても比喩で、実際は蝶型のユニットを魔力で創り出して、その二つの間同士での通信を可能にするっていう魔法で」

「「「いやいや、それでも十分凄いから!」」」

……ムゥ、途中で話を遮られてしまった。

別に、それで特に機嫌を悪くしたりするワケでもないんだけど。

「しかし……そんな魔法があったなんて知らなかったぜ」

「「ガオンくんの頭が悪いからじゃない?」」

「………………」

ガオンくんの扱いの酷さにはもう慣れてしまったから放って置くとして「……クロー、タスケ、テ」……フォローくらいはしてあげようか。

「……まぁ、これカーサのオリジナルの魔法だから、知らなくても仕方無いと思うけど」

「え!? これって、カーサさんが創った魔法なの!?」

「うん、そうだよ。……まぁ、あまり公言されたら困るから、秘密にしてくれたら嬉しいんだけど」

「それって、カーサって人がその魔法を創ったことをか? それともその魔法自体をか?」

「両方」

「……ま、そりゃそうだわな」

僕の言葉を聞いたガオンくんは、一瞬だけ考えるような素振りを見せ、そして言った。

「……うん、まぁ、別に言い触らす理由なんて全くねぇし、しっかりと黙っておいてやる」

「わ、私も秘密にしておくから!」

「私の口の堅さは知ってるでしょ、クロー?」

三者三様に返事をしてくれる皆を見た僕は、笑みを零す。

そして、悪戯をするような表情を浮かべながら、三人に言う。

「……まぁ、黙ってくれるお礼として、闇属性が使える彩那とハノンちゃんには、後で“薔薇色蝶レ・パピヨン・アン・ローズ”の使い方を教えて上げるよ」

「なぁ、クロー。俺は?」

「確か、僕ってガオンくんにたくさん貸しがあったよね?」

「入学式で暴れた時の件とか、その後始末の件とか……」

「勉強教えて貰った件とか、“爆炎靴ブレイズブーツ”の習得の件とか……」

「ゴメンナサイっ! 欲を出した俺が悪かったのは分かりましたから、三人で虐めるのはやめて下さいっ!」

「「「やだなぁ、虐めだなんて。人聞きの悪い」」」

ガオンくんの言葉を聞いた僕らは、互いに顔を見合わせあい、三人で笑いあう。

……別に他意なんてありませんよ?

何て、心の中で誰にともなく言い訳をしてから、未だに人差し指に止まったままの蝶のことを思い出した僕は、取り敢えずガオンくんに静かになって貰ってから、蝶に魔力を流して通信を開始する。

音響蝶サウンド・バタフライの場合、送る側も受ける側も、一度通信を開始しないと相手が誰なのか確実に判別することが出来ない。

しかし“薔薇色蝶レ・パピヨン・アン・ローズ”の場合、送る側はユニットをちゃんと望む相手まで送ることが出来るし、使用者によってそのユニットの色が変わるので、受ける側もある程度送ってきた相手を判別することが出来る。

……というか、実際にこの魔法が使える人間?は現時点で、カーサ・僕・アパ・バルベルの四人しかいないため、受け取る側も確実に相手が分かるのだけど。

今回送られてきた蝶は薔薇色なので、カーサが送ってきた蝶に間違い無い。

無事、通信が始まったことを確認した僕は、その蝶に向かって話しかける。

「もしもし、カーサ? いきなりパピヨンが来たから少しビックリしてたんだけど、どうかした?」

『あ、クロー様ですか? 色々と報告したいことがあったので、パピヨンを送ったんですけど……出るまで何かしておられましたか? 予定なら後数分は早く通信をしている予定でしたけど』

「あぁ、今友達とメイデン・カフェに来てて話し込んでいたから──」

『──メイデン・カフェ!? というコトは、クロー様は今巫女服を着ていらっしゃるんですか!?』

「………………ウン、トッテモザンネンナコトニ」

『私も残念です、クロー様! 何で、パピヨンに撮影機能を付け忘れてしまったんでしょう、私』

「………………僕に聞かれても、って話だけど。まぁ、いつも通りで三割くらいは安心したよ、カーサ」

『後の七割はどうしたんでしょう、クロー様?』

「僕の敵がココにもいたか、と」

因みに、女装が関わってくると彩那も僕の敵になる。

「まぁ、報告の件は家で聞くことにするから、先に帰っといて」

『え!? クロー様、嫌ですよ! それじゃあ、クロー様の可憐のお姿を拝見できないじゃないですか!』

「見なくていいから! ……取り敢えず、先に帰っといて」

『いえ! それなら、いっそのこと私がそちらにクロー様をお迎えに上がりますから、それまでどうかお待ちを……あら?』

「どうした、カーサ?」

『いえ、デリカシーのない男達に絡まれたもので……でも、私の身の心配は結構ですから!』

「元より、相手の怪我の心配しかしてないよ。……まぁ、相手に非があるだろうし、手加減するなら蹴散らしていいけど、やりすぎないように」

『分かってますわ、クロー様!』

「それと、迎えに来てくれるって言うなら、今から着替えて待っておくから」

『………………え?』

「巫女服姿を見たいんなら、僕が着替え終わる前に来ることをお勧めするよー」

『え? 少しお待ち下さい、クロー様! すぐ行きますか』

「通信終了♪」

軽く、指先にいた蝶を握って消滅させながらそう言うと、残っていたティラミスを食べ終えて、僕は店の更衣室に向かう。

慣れている彩那はともかく、僕とカーサの会話を始めて聞いたガオンくん達は、最後まで目を丸くして驚いていた。

皆さん、お久し振りです。

また、新年明けましておめでとうございます。

新年最初にこれを投稿しようと決心していたので、投稿するのが遅れました。申し訳ありません。

今年は、こんな風に遅れないように頑張っていこうと思うので、よろしくお願いします。

それでは、久し振りの次回予告!

次回、“カサンドラの報告”を是非お楽しみに!

以上、現野 イビツでした!

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