表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍皇の血統  作者: 現野 イビツ
虹色の巫女と金眼の悪魔
1/26

第零話 “予見”の儀

初めまして、現野 イビツと申します。初投稿作品なので、まだまだ未熟ですが、是非楽しんでください!

『……我、今より血族の掟に従い、祈りの詩を紡ぎ出す』


僅かな光と、漆黒の闇が支配する空間に、一つの声が響いた。


『我、世界を統べる黒龍の皇と、世界を救いし聖女の間に生まれ落ちた子……』


それは、硝子で出来た弦を弾いたかのような、繊細で聞く者全てを魅了する少年の声。


『我が尾、我が角、我が翼。それらが闇色に染まろうと、我が心が永久に純白であることを誓おう』


水晶が覆う洞窟の奥、五頭の龍が囲う祭壇の上で、一つの鏡に向かいながら、少年は朗々と唄い続ける。


『だから、我が血族に代々伝わる秘宝――“魔鏡”よ』


少年は、そこで一旦詩を止めるて、突如傍らに置いてあった長剣を掴む。

そして、五頭の龍が覗き込むその前で、少年は白魚のようなその指に、長剣の漆黒の刃を滑らせる。

「――っ!」

篝火に映った少年の中性的な顔立ちが、苦痛で一瞬歪む。

しかし、すぐに何事も無かったかのように、その指から流れる鮮血を鏡面に垂らす。

そして――、


『“魔鏡”よ。我こそは、“黒龍皇の血統”神刃しんじん クロー。我が名と、我が血の下に、我が生涯のつがいを示せ!』


この“予見”の儀の最後の詩を、少年は唄い終える。

次の瞬間、五頭と一人の眼前で、突如“魔鏡”が輝き始めた。

それを見ていた五頭の中で最も巨大な龍――“黒龍皇”ベクリアルが、自らの息子である少年――クローに問う。

『……覚悟は出来ているか、クロー?』

それを聞いたクローは、龍の血族の証である黄金色の瞳を父に向け、苦笑しながら言った。

「正直に言うと、まだ出来てないんだ、父さん」

『……? 何故だ、クロー? 確かに、お前は今から一年の間、“予見”に示された将来の嫁を守り続けることになるが……お前には簡単なことだろう?』

黒龍皇は、少しばかり驚いたという風に首を傾げながら、息子にそう尋ねる。

この“予見”の儀とは、成体――つまり十六の齢を迎える龍の血族が、生涯の番となる者を“魔鏡”で占う儀式である。 この儀を受けた龍はその後、“魔鏡”に選ばれた者を災厄から守ることになり、見事一年間その者を守りきったら、正式な番と認められる。

そして黒龍皇は、過大評価を一切せずに、自らの息子にとってこれくらい朝飯前だと確信・・していた。

しかし、当の本人であるクローは、少し諦めを滲ませた声で言った。

「『お前は何かと、常識の埒外にいる存在だ』ってのは、父さんの口癖だったと思うけど?」

『ムゥ、確かにそうだが……』

そう指摘された黒龍皇は、少々狼狽した様子を見せる。

クローの言った通り、彼は純人と龍の間に生まれた世界でただ一人・・の“龍人ドラグーン”――常識では考えられない存在なのだ。

その特異性を表すかのように、通常十鈔で消える“魔鏡”の光が、一分を越した今も輝き続けている。彼の番の選定が終わらないのだ。

『……ハハッ。確かに、我はそのことをすっかり失念していた。しかし、クローよ。我とて、龍族で初めて純人を娶った龍だぞ? 特異性なら、我とそんな変わるまい』

「そうかな……?」

『そうだ。お前も我の息子なら、雌の一人や二人くらい守ってみせよ』

「いや……、一人や二人ならいいんだけど……」

黒龍皇は、自らの息子を激励する。が、激励された本人はその言葉を聞き、嫌な予感を覚えた。それは、消えることなく徐々に大きくなっていく。

こういう予感は、よく当たる物だ。黙りこくったクローを、黒龍皇が不審に思ったその時。“魔鏡”を見ていた四頭の龍の内、白亜の鱗と紅蓮の瞳を持つ龍――白龍アパティオンが、二人に声をかけた。

『ベクリアル様、クロー様、選定が終わりました』

『おぉ、そうか!』

『……しかしながら、少々問題がありまして』

「問題?」

『はい』

アパティオンの言葉を聞いた一頭と一人は、一回顔を見合わせた後、同時に“魔鏡”を覗き込み――二人合わせて身体を凍て付かせる。

父と子合わせて四つの金色の瞳が見るのは、全部で五つ(・・)の候補者の名前。

アパティオンは静かに言った。

『はい。クロー様には、明日より一年間、この五人を守っていただき、その後に五人全員を娶るっていただきたいと思います』

「………………なんで」

アパティオンの言葉を聞いたクローは、呆然と地面に膝を付く。そして、これから過酷な一年を過ごすことになった少年は――


「なんでこうなるんだぁぁぁああっ!!!」


――心から、自分の不運を嘆いた。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます! 感想やアドバイスがあれば、是非教えて下さい! 次回、“第一話 一年の始まり(仮題)”をお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ