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狂科学時代  作者: アサト
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エピローグ

「なぁ、アイシャ何処から間違えた?」

教会の椅子に足を組み、樹はアイシャに問いかけた。

明確な答えを期待する訳でもなくただ自分の苦痛から逃げたくて。

アイシャはアイシャで教会の窓を梯子に登りながら鼻歌交じりで拭いている。

「うーん。多分ですけど、私が居たのが計算外だったんじゃないでしょうか?」

「純粋にどういう意味?」

率直に聞いたつもりだったんだが、アイシャはくすくす笑っていた。

「だってその秋人さんって人?直ぐにこの街から去ったんでしょう。それって樹と戦いたくなかったって事でしょうから。そもそも私が居なかったら、樹はその場所に辿り着くのは不可能だった訳ですしね。」

アイシャに話してから一時間も経たないのに此処まで考えてくれるのは正直嬉しい。

でも、あの時の俺は秋人に襲い掛かった。

そして俺の力で秋人に傷を負わせた。それも決して浅いとは言い切れない傷を。

アイシャの話通りなら単体で活動している実験体はそこそこの回復力を持ってるから大丈夫らしいが、それでも俺は…秋人を傷つけた。

「秋人さんに会って樹はどうしたいのですか?」

純白のシスターが太陽の光を受けて、ガラスに受ける逆光を受けて天使のように樹を見下ろしていた。

『まるで懺悔だな。』

心の中で自分を笑う。16歳にもなって自分の心を自分で把握する事ができない自分に苛立ちが走る。無意味に頭をかきむしる。

「あの時、秋人に会った時に思ったのは秋人があんな事をしたのも夢なんじゃないかって。でも、俺の頭は冴えててさ。」

「当然です。樹さんを改造したのは私ですからね。」

アイシャは脚立の上で胸を張ったが如何せん胸が無い。

「どこ見てるんですか?」

心を読みやがったさすが旧国1位の指導者。これ以上は止めておこう雑巾が飛んでくる。

「次に思ったのは意外にも嫉妬だったんだよ。詩織にあんなに愛されてて何で秋人はそこに居るんだって。」

死の間際に見た夢で俺は秋人だった。それは多分秋人の事を嫉妬してたんだろう。

ずっと詩織の隣に居たのは俺だったが、詩織が見てたのは秋人の事という事実が嫌だったんだろうな。

「今になって思うんだけど、秋人と俺の違いは実際に手を汚せるか汚せないかだと思うんだ。秋人はいつも誰かの為にって考えながら、自分を削ってただろ。それに比べて俺はなんていうんだろうな…。何も考えてなかったのかもな。話が反れたなごめん。」

「そして最後に復讐心かな。以外にも俺の大義はおれ自身の存在よりも下だったんだよな。」

強化された脳細胞のおかげなのか過去の記憶も鮮明だ。こればっかりはアイシャに感謝しなければならないな。

「結局,スペシャル美少女アイシャちゃんが施した狂科学で嫉妬に狂った樹は皆に愛されていた超絶イケメンらしい秋人さんに襲いかかったわけね。」

事実はそうなのだが、まるで俺が秋人に欲情して襲い掛かった風に改ざんされているので話を戻そう。短い付き合いだがアイシャに口で勝てないのはよく分かっているんだ。

「話を戻すとだな。」

少し声を張り上げる。アイシャはくすくすと年相応の笑い方を見せてくれた。

この笑い方の方が狂科学の話をする時に見せる狂気じみた笑みよりアイシャには似合っていると思った。

もし、アイシャが指導者ではなくただの同級生だったとしたらとても素敵だと。

足を振り上げ教会の床を蹴る。気持ちの良い音もならず苦笑する。

椅子から立ち上がり来た道を振り返る。

「実際会ったらどうなるか分からない。でも取り敢えず…」

決意を込めてドアを開く教会のドアは来た時よりも軽かった。

「一発殴って連れて帰るよ。」

樹は空を仰ぐ、仰いだ空は樹の決意を応援するように真っ青に突き抜けていた。

傷を負わしてしまった親友、母を殺したかもしれない親友、友達が愛したかもしれない親友。結局あいつは何を考えてるんだろう。

まぁ無理に考える必要なんて無いだろう。どうせこの空の続く何処かで秋人は生きていて俺も生きてるんだから。

「どこかで会えるだろう。」


追伸

秋人さんへ

あなたの問いに答えましょう。

あの夜にあなたが血まみれで私の前に立ち尋ねました。秋人さんの友を思う想いが真実だと理解し私は真実を話しました。正直に言うと私はもう諦めてしまいましたから。

だから、私はあなたに想いを託すのです。ほんの些細な事でも良い、彼に祝福を幸福を愛情を与えられるであろうあなたに。

ご推察の通り源樹は『彼』の忘れ形見です。彼の血を引いているのは樹一人なのです。

我々魔女狩りと指導者両名は『五人の科学者』が源樹を探しているという情報を独自に所有しています。

ですから、秋人さんあなたの推理は8割方正解でした。

彼の未来は英雄となるか、人類を果ては『抑止力』さえも滅ぼす魔王になるかなのです。

でもこんな事実を相手にしてもあなたならきっと笑うのでしょうね。

 第一位指導者 アイシャ・ノーズ


グシャグシャに書き捨てられた再生不可能紙のメモより。

ココまで読んでくださった方ありがとうございます。


一応章ずつで別々の日に書いていたので文にかなりの差があるのは分かると思いますが、あえて誤字脱字以外は修正してません。見直しは一日ずつでしていたんですがね(笑)


物語を広げたまま終わるというなんとも『俺たちの戦いはこれからだ。』的な終わり方ですが第二章と書いていきたいと思います。


後がきまで読んでくださった方本当にありがとうございます。

ではまた会えることを祈りつつそれではそれでは…。

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