表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂科学時代  作者: アサト
11/19

説明すべき事

『そうだな。まず何処から始めようか…。』

思考の海に浸り溺れる。その場所に居るのは自分では無い自分。もはや、自分という概念すら意味をなくしてしまうかもしれない空間。

だからそこは世界で一番時が遅い。いや時間という概念すら意味を持たない空間。


「勘違いしているのはこの国に居る実験体がそもそも2体なのかという事からだ。こっち側から言わせてもらえるなら一つの国に魔女狩りが居れば安全っていう考えがまずおかしいね。だってそうだろ魔女狩りが捕まえるのはくだらない倫理感を犯した実験体だけだ。そもそも周りに誰が居るかなんて普通は誰も証明できない。」


「ここまで言えば分かるだろ。俺が実験体で教授の考えている最初の一人を殺したんだよ。」

秋人はここまでを言い、力無く呟いた。

大抵の勘違いである。『事件の始まりが何処なのか』という根本的なこの国に住む人間全てが犯している間違いを正す。

秋月詩織の父を殺したのは俺で実験体なんかじゃない。この罪も全部俺が背負ってやる。

「だから、田代田無個人が狂科学を感じたのはアイツでは無く俺だったんだよ。なら俺に協力してくれても良いんじゃないか?」

「どういう事だ。意味が分からない。」

ああ、そうだよな。普通分かる訳が無いんだよ。

でも、倒さないといけないんだよ。樹とあの銀炎を戦わすわけにはいかないから。

「もうばらしても問題ないから言わせてもらうと、俺はこの旧国に送り込まれたスパイなんだよ。」

「それに俺が詩織の義父を殺したのは詩織の為だ。だから…なんていうのかな…俺スパイ辞めたんだよ。」

淡々と語ると説得力に欠けるので顎首をかしげ、考える素振りをする。実際考えながら話しているが、田代と秋人では時間軸が重なるわけもないからだ。

「だから俺は狂科学より樹と詩織の味方で居たい。その為に協力してくれ。」

源葵の死因は一発の銃創による出血死。正確に言うとショック死に近いので殆ど即死に近い。

それを教授は知っている。自分が燃え続ける源葵の前で気を失った後、その行為は目の前で行われたのだ。

「つまり、私が意識を失っている目の前で彼女を殺したのか?」

「ああ、そうだ。樹の母を救う手立てが俺には無かったから、苦しまないように殺してやった。その罪も俺が背負う。」

葉月秋人はまっすぐに言い放つ。実際は彼女を思っての事すらも罪と認めている。

「ありがとう、私を咎めてくれて、ありがとう、彼女を殺してくれて。」

「驚いたな。人は殺人者に対してありがとうと礼を述べるのか。」

「彼女を引き合わせたのは私の罪だ。彼女を助けられるという甘言に惑わされたのも私の罪だ。実際に目の前にして気を失い何もできなかった罪だ。」

「分かってないな。その罪も全部俺の物なんだよ。あんたは黙って協力してくれればいい。」

秋人は思う。人は反省し、学習し、そして人は罪を償いたがる。大抵、罪なんてそいつの妄想か空想で大したことじゃないのに。時に人は不完全だから罪をどうしたら許されるのか考えていない。その癖罪が他人に罰を決められる事は頭の中では違うと理解している。だから世の中自己満足という観念でしか回っていないのだ。

でも、目の前に自己満足の中から抜け出し前を向こうとしている物もいる。なら人っていうのは悪くないのかもしれない。



『そろそろ反撃するか…。』

誰にでもなく秋人は呟いた。安易な道を選んだと自分でも笑いを抑えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ