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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
5章 部内戦〜練習試合

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33話 壁

アイアン・タロンとストームエッジの2機編成。

私もダガーも特殊兵装を選択し、いざ空へ。


私たちにとっての壁が待ち受けている。

それは、外敵――つまりライバル校のエースたちから私たちを守ってくれる防壁であり、

同時に、私たちが乗り越えなければいけない障壁でもある。


「勝ち負けは関係ないよ!楽しみましょう!」

いつかと同じ言葉。

声のトーン高く、セイバーが告げる。


「さあ、来いよ」

メイスは対照的に、低く落ち着いた声で言い放つ。


以前はセイバーが上空で戦場を俯瞰し、メイスがECMを使いつつ戦場を荒らし回った。

シンプルで強力な役割分担。

同様の戦い方で来られると、力で劣る私たちは順当に不利だ。


勝ちを拾うなら仕掛けないといけない。

罠を。

どう仕掛けるか、このときのためにダガーと何度も打ち合わせた。

あとは実践だ。


HUDを見る。

レーダーに機影を捉えた。1機だけ。たぶん、メイス。

見えないだけで近くにセイバーもいる。

既にロックされ、警告音が鳴っている。


直後にミサイルアラート。中距離ミサイル『アーバレスト』の飛来。2発。


これはセイバーから私たちに対しての問いだ。

「ミサイルが来たよ。どうするの?」と。

「どう動いても、落としちゃうけどね〜」と。


回避行動を開始。機体を傾け、機首を引き上げる。

距離はある。角度を取る猶予もある。フレアは不要だ。

ダガーも回避行動に入っている。避けるだけなら問題ない。


でも、それだけではこの問に対して正解になるまい。

大事なのは、回避のその先。

必要なのは、先を読み考える力だ。


メイスは急速接近中。

アーバレスト射出の影響で、レーダーにセイバーの機影も捉えた。

セイバーはアーバレストの間合いを保ちながら方角を変えるように動いている。


意図は読める。

メイスが近距離で暴れながら、中距離でセイバーが追い立てる。2人の定番の手。

私たちの兵装では、中・遠距離戦に付き合うことはできない。

だからメイスの後ろを取りに行く。


もう10秒もすればメイスとの近距離戦が始まるだろう。

スロットルを開放。ピッチアップ。上方へループを描く。

これなら、上から回り込める。


ダガーがメイスを警戒するように旋回を始める。

メイスもそれを受けて進路を微調整。

そのメイスの5時方向を狙い、加速。


ミサイルアラート。

再度来た。アーバレスト。

3機の思惑が絡み合う空域の外から、セイバーが狙ってきた。


進路を変えて回避に専念。まだ角度は取れる。ミサイルを振り切る。

ダガーの様子を見る。フレアは消費したものの回避には成功。

それでいい。ダガーはメイスに狙われている。

フレアなしで無理な動作をしたら、優位な位置を取られる。


ここでメイスが方向転換した。機首がこちらに向き、上昇を開始。

狙いを変えた。私に。


鼓動が跳ねるのを感じた。筋肉が強張るよう。

喉が乾き、思わず唾を飲み込む。


大丈夫。私が狙われるパターンも想定済み。大丈夫。自分に言い聞かせる。

ついこの前、セレスティアルの2機が見せてくれた。

相手が撃墜女王とその近衛兵であっても。

積極的に組み合おうとしなければ時間を稼げる。


ECMは脅威だけど、相手は近距離で優位になる特殊兵装は持っていない。

だから、私が引き付け隙を作る。その隙を狙ってダガーが罠を仕掛ける。

ピンチだけど、同時にチャンスでもある。


でも、そのECMがまだ来ない。

何故……いや、明白だ。使えないんだ。装備をしていないから。

恐らく向こうにも伝わった。私たちがECMを使わない理由が。


「どうしたタガー。ジャベリンが狙われてるぞ。

 使ってみろよ、ECM」


平坦なトーン、それでも心をかき乱すような、メイスの声。


「メイスは使わないんですか?ECM」

辛うじて問い返す。

思考で手一杯、いや頭が一杯だけど、精一杯の強がり。


後方にメイスが張り付いた。


「あたしがいつもECMを装備していると思ったか?」


ロックオンの警告音が、ミサイルアラートに変わった。

メイスから発せられたミサイルの数が多い。

ヴァイパーじゃない。

4発。一気に背筋が凍りつく。


「スウォームだ!避けられるか!」


即座にフレアを射出。急旋回。

絡みあうように白煙を吹き上げ迫るミサイルのうち、

2つは機動が逸れフレアに吸い込まれる。

空気を、機体を震わすと錯覚させるほどの爆発音。

伴う激しい光を後方に感じる。


まだ回避は終わっていない。残り2発、迫る。

S字を描くように機首を振り、方向転換。なんとか角度差を……。

別方向から3度目のアーバレストを確認。


次のフレア射出まで、まだ時間がかかる。

迫る計3発のミサイルは自力で回避しなければならない。

機体をロールさせつつフルスロットル。45度、左旋回と同時に下方へ。高度を下げる。


間延び気味のアラートを聞きながら、ミサイルと各機の位置をHUDで確認。

ダガーがメイスの7時に位置取り、攻撃の妨害中。

メイスはそれを警戒し、私から進路を逸らす。

セイバーは攻撃位置を変えるため旋回している。距離は近づいてきている。

近距離戦に持ち込むか。その前にメイスに打撃を与えたい。

回避行動を終えたら、即、ダガーを援護。それでいこう。


すぐ後方で爆発。少し削られた。大丈夫、まだかすり傷だ。


メイス機に向かおうとしたとき、

セイバー機も進路を変更した。

旋回して円を描いていた、その内側へ切り込み、加速。

レーダーから姿を消したが、目視で確認した。

ステルス持ちはこれが厄介だ。


でも意図は読んだ。

ダガーへの援護を妨害する気だ。

問題は、ただの牽制では済まないところ。

セイバーに背後を晒すことはできない。


高度を回復させ、目でセイバーを追う。

後ろを取られないよう、進路変更。ダガーからは離れてしまう。


「ああ、バレちゃった~」

モニタの奥から、セイバーの肉声が聞こえる。


1対1に分断された。不利な展開。

レーダーを見る。ダガーの5時方向にメイスの機影。

兵装をワスプに変更。ロックした瞬間にセイバーに叩き込んで牽制する。

そしてなんとか合流を。


「互いにECMはナシ。気が合うじゃねえか」


ダガーは優位な位置を取られないよう、操作に必死だ。お喋りしている余裕がない。

メイスの声には答えない。


「ダガー。教えておいてやる」

メイスは構わず続けた。


「ホログラフィック・デコイの真髄は、敵を別角度から狙い撃つことにある。

 問題は『誰が撃つか』だ」


何の話だ。いや、考えなくていい。HUDの情報に集中。


「頼みのジャベリンはセイバーと交戦中だ。そんな暇はない。

 そして、お前にあたしは落とせない」


ダガーがメイスの追求を振り切ろうと、急旋回。

メイスは悠々とその後ろをついていく。


「ECMを持ち込むべきだったな」


声のトーン、雰囲気で察する。

やる気だ。


「お前は本体か?デコイか?当たれば分かる」


「ダガー!来るよ!」

「うん!大丈夫!」


ダガーのフレア射出と、メイスのスウォーム射出はほとんど同時だった。

先読みでフレアを置いたか。良い判断だ。


あまりよそ見はできない。こちらのロックオンの警報は鳴り止まない。

既に狙われている。向こうの方が先に撃てる。

とはいえ、こちらは高性能な誘導ミサイルを持っている。

撃ちっ放し力は私の方が上だ。


レーダーロック。やっと、捉えた!


「FOX3!」

ワスプを射出。

ほぼ同時に、セイバーからのアーバレストが迫る。

双方フレアを射出し、回避行動に入る。この隙に少しでもダガーへ近づく。


ダガーはスウォームの回避に成功し、メイスに回り込もうと必死だ。

でも操作は相手のほうが上。それに。


「フレアを射出した。お前はデコイじゃない」

今メイスが追っているのは本体だとバレている。


罠を仕掛ける暇もなく。状況は悪化していく。

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