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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
5章 部内戦〜練習試合

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30話 ホログラフィック・デコイ

相手の機体編成を確認。

鴨川は直線最速のRF-31『バラクーダ』。

佐倉は、可変翼で高速巡航と機動性を切り替えるAF-14『グリフィン・クロウ』。


鴨川が高速で突っ込んでかき乱し、佐倉が格闘戦で波状攻撃を仕掛ける編成、と見た。


「コールサインはバリスタだ!よろしくぅ!突っ走るぜー!」

「ナックルだー!よろしくー!」


早速、何か飛来。

長距離ミサイル『ワイバーン』だ。

撃ったのはバリスタの方か。


「来たよ!ブレイク!」

「うん!」

2発。ミサイルが迫る。どちらも私狙い。

ハイGターン。負荷をかけての急旋回。回避に成功。

旋回しつつ敵を探す。見えない。レーダーの外。まだ敵の間合い。


と思ったら。

レーダーに反応。

遠くの空に小さく、機影。

どんどん近づいてくる。

「スパイク!」

ロックされている。

なら、こちらも迎撃体制。ロックオン。狙いを。

……もう相手は空の彼方に消えていた。


「どうだ!マッハ4だぜ!」


熱の壁を超えて。中の人は黒焦げだ。現実なら。

ヴァイパーも撃たずに。魅せプレイのつもりか。


バラクーダは、他の追随を許さない加速性能とトップスピードを持つ。

反面、他の追随を許さないほど曲がりづらい。

スピードに乗ったほうがまだ旋回性能がある、とても尖った機体。


トップスピードのあの機体には、ヴァイパーですら追いつけない。

今の私たちには、6時方向からの攻撃は不可能だ。


「ねー!待ってよー!」


当然、追いつける僚機も存在しない。

ナックルの乗るグリフィン・クロウはまだ見えない。


またミサイルアラート。

バリスタが戻って来る。

ワイバーン。2発。


機体を横に傾ける。ミサイルの進路から角度を取るように機首を上げ、旋回。フルスロットルで加速。


回避……した先に、轟音。


マッハ4の機体が駆け抜けていく。機銃をばら撒きながら。

不覚。少し食らった。


今のが機銃で良かった。


単発の攻撃は大したことないけど。

この速さで駆け回られると狙えない。

反面、こちらは削られてしまった。

シンプルなスピード狂。

厄介だぞ、これは。


「へっへー!言ったろ!今日は、かわいいイルカちゃんは狙わないぜ!」

それは、TX-04ブルーコメットのことか。


「でもバリスタ。今日はイルカちゃんじゃないみたいだよ」

「なんだー?機体を変えたかー?ま、カンケーないけどなー!」

「待ってよー!一緒に行こうよー!」


今度は2機で来る。

並んで、正面。

ミサイルアラートが鳴らない。ワイバーンの残弾はまだあるはず。

長距離砲を温存する方針か。

なら先手を打つ。

ヒュドラの射程圏内に入る。2機をロック。2発射出。

射出後に機体を横に倒してピッチアップ。60度くらいの角度を取る。


ナックルがフレアをまいて、2機とも回避に成功。

直後、バリスタが加速。

近づいてくる。真っ直ぐ、私に。

空気を切り裂く音が迫る。今度はロックされてる。ミサイルアラート。

急旋回。間近でヴァイパーが爆発。近接信管だ。また少し削られた。


轟音は過ぎ去っていくが、まだ警告音が止まない。

「逃がさないよー!」

ナックルの機体。3時方向。ヴァイパーを撃たれた。

「危ない!」

ダガー機からのフレア射出に救われた。

「助かったよ!」


ナックル機はそのまま私の5時方向に位置取る。

可変翼が開いた。格闘戦に以降する気だ。


「ダガー!」

でも格闘戦なら2対1。ダガーとの連携で叩ける。

バリスタはまだ遠くの方を飛んでる。今がチャンス。

ナックルの後ろに回り込んでもらう。

「うん!FOX2!」


ダガーからのミサイルを、ナックルは急旋回で難なく回避。

開いた翼の先に白い筋を引いた。


なるほど、よく曲がる。格闘戦は向こうに分がある。

それでも数はこちらが優位。

でも。


「いいぞー!そのまま押さえとけー!」

猛スピードの機体が戻ってきた。

バリスタ機からのミサイルアラート。

回避のため進路を変更した私に、ナックル機が向き直る。

ミサイル。撃たれた。


急ぎ、フレアの射出。高度を下げて少しでも速度を稼ぐ。

バリスタは過ぎ去っていくが、ナックルはぴったり付いてくる。


この2人。

さっきの言葉通りにダガーをスルーして、私だけを狙うつもりか。

ダガーを脅威でないと見なしたか。


その思惑は功を奏している。状況は良くない。

6時方向に付かれている。

小回りの性能は、可変翼を開いたナックル機の方が上だ。

ここは頼る。


「お願い!」

「了解!FOX2!」


ナックルの後方7時方向から、ダガー機からヴァイパーを射出。

ナックルは即座に回避行動に入る。

敵ながらいい反応。おかげで振り切れた。ダガーにも感謝。


でも、すぐにまたアラート。ロックされている。

バリスタだ。この距離、ワイバーンが来る。


忙しいな、この戦いは。

ペースを乱されっぱなしだ。

手を打つなら、ナックルが離れた今だ。


「ダガー!」

「うん!」


ダガーへ合図を送る。ダガーの機影が私のすぐ横に並んだ。

被ロックのアラートが消えた。ロックの対称がダガーに写ったことを意味する。


「お前じゃねえよ!邪魔だ!仕方ない、このまま落ちな!」

「ダガーを?しょーがないなー」


ワイバーンが迫るのと、ナックルからのミサイル射出を確認。

ナックルが放ったのは、ヴァイパーより高速な飛翔速度を誇るシルフィード。

近距離で撃たれると避けられない。恐ろしいものを隠し持っていた。


ダガーは回避を試みるも、直撃。

2つのミサイルがそれぞれ爆ぜた。


「可哀想だけど、間に入ったお前が悪いんだぜ、ヒヨコちゃん!」

「打ち合わせと違うよー。でも、やったぜー!」

「あとはジャベリンだけ!」


1機撃墜で、敵の2人は勢いに乗っている。

これでいい。

ここまでは計画通り。淡々と。ナックルの背後を狙う。


「待って!ダガーが!まだ!」

すぐに慌てた様子でナックルが叫ぶ。

「は!?直撃しただろ!」

無理もない。レーダーからダガー機は消えていない。

ミサイルの直撃を受けてなお、ピンピンしている。


経験者の2人ならすぐにトリックに気づくだろうが。

この一瞬の油断を突く。

ロックオン。ヴァイパー射出。


「あ!ずるっ!」

それがナックルの断末魔となったが。

戦場にずるいも何もあるか。


まず1機。撃墜。


「ナイスキル、ジャベリン!」

「ありがとう!もう一回いくよ!」


高速で飛び回るバリスタを落とす。

無理に落とさなくてもスコア勝ってるけど。

きっちり勝負を付けたい。


「にゃろー!ナックルの仇だ!」

ワイバーンの射出を確認。でもアラートがない。

狙いはダガーだ。かかった。


「ダガー!そのまま突っ込んで!」

「了解だよー!」


ダガー機をバリスタの進行方向に置く。ヘッドオン。

あえなくワイバーンがダガー機に刺さるが。


「やった!今度こそ!」

バリスタは撃墜を確信している。それでいい。

私も位置取りは完了している。

高速飛翔するバリスタ本体へ。

「ヒュドラ!FOX3!」

ワイバーンの爆風が隠れ蓑になっている。

相手の視点なら、突然ミサイルが飛んでくるように見える。

マッハ4の全速力だ。当然、避けられない。

そのトップスピードが仇となる。


直撃。オレンジ色の爆風が広がり、バラクーダから主翼をもぎ取った。

バリスタ、撃墜。


「ナイスキルだよ!」

「ダガーのおかげだよ!」

隣に座るダガーとハイタッチを交わす。

「うまくいったね!」


* * *


「なんだよ今の!弾当たったろ!チートか!?」

「そうだそうだー!」

試合直後に早速の物言いが入る。

鴨川も佐倉も立ち上がって抗議しているが、当然チートなどしていない。


「あんたたち2人とも、まんまとデコイにやられたのよ」

私たちの代わりに、モニタの前に座っている香取が口を挟んだ。


「ホログラフィック・デコイ。光学迷彩で自身を隠し、電子の幻影を飛ばしてレーダーやHUDを騙す兵装よ」

「2人とも、ひばりに騙されちゃったね」

動画撮影班の2人からの解説を聞いて、鴨川と佐倉の両名は口をポカーンとさせたあと。悔しさのあまり頭を抱えて座り込んだ。


「このために、ダガー機を変えたのね」

「あははー!一本角のヒヨコちゃんだー!」

「うん!そうだよ!」


ひばりの機体の尾翼には、両の羽根の先に短剣を構えて、少し悪い顔をしているヒヨコのマークが描かれている。

少し前までは、これはTX-04『ブルーコメット』に描かれていた。


今日は、大きな三角の尾翼にそのマークが描かれている。

広く突き出したデルタ翼と、コクピットの横のカナード翼。

そしてコクピットの前から一本伸びた給油口。一本角と称されることも多い。


「EX-88『ストームエッジ』。ひばりの新しい翼だよ」


この翼なら、ひばりの力を、ひばりの思いを、もっともっと引き出せる。


「強くなったのは認めるよ」

そう言ってきたのは。

「その付け焼き刃が、通じると思うか?私たちに」

成田と市原のペア。次の相手だ。

知識も経験値も、今のペアとは段違いと思っていい。

それでも。


「やってみなきゃ、わからないでしょ」

ここを突破しなきゃ、どっちにしても大会には出られない。

「やるよ、ひばり」

「うん、任せて!」

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