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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
4章 春季大会

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25話 なんで!?

2ラウンド目。

高高度で被撃墜された際の合流の難しさと、相手のフィールドで戦わない方針とで、今度は高高度を拒否。

高度3000mを4機編成の基本、フィンガーフォーで飛ぶ。

これならどこから敵が来ても対処できる。


正面から来た。ワイバーンが2発。

「ブレイク!」

しばらくして遠くの空に機影が2。

やはりサーペントとミストナイトの2機編成。

「またあいつらか。スピカとプレアデスは上か?」

「多分ね~」


2機は下から侵攻。残り2機は上から侵攻。

こうやって上下からの挟み撃ちを狙っていたのか。


でも、今なら4対2だ。

上空の2機がどんなにエネルギー優位だろうと、

高度3000mまで降りてくるには時間がかかる。

エネルギーもロスがある。


つまり、チャンス。


「行くよ!ダガー!」

「う、うん!」


ヒュドラを選択し、接近中の前方の2機へ射出。

これで散らす。

回避を強制したあと、ドッグファイトに突入。


ダガーはいつでもスモークで割り込めるよう、少し離れたところで飛ぶ。


敵の2機はどちらも、積極的な攻撃をしてこない。

切り込みの部隊にしては大人しい。


位置取りはうまい。

何度も後ろを取られそうになった。

でも、撃つべきタイミングで撃たないような。

攻撃よりも回避に専念しているような。

さっきのラウンド、深追いからの被撃墜を警戒しているのか。


下の2機が目まぐるしく動く一方、上空にいるだろう2機は静かなまま。

ストームエッジが装備中と思われるECMすら、沈黙を守っている。

なんだか、不気味だ。


とはいえ3対2だ。数的優位。ここでスコアを稼ぐ。


そのとき空が光った。雷だろうか。

ゲーム内で、たまにそういう演出がある。

雷に打たれるとHUDが乱れて厄介だ。


でも。


「え、え!?」

ダガーの動揺の声。

後方のダガー機の反応が消えた。


「ご、ごめんなさい!」

咄嗟に振り返る。

「落ちました!」

ダガー機が炎に包まれながら、その機体がバラバラに分解し落ちていく。


なんで?


「何が起きた!」

「ごめんなさい……分かりません!」


交戦中の2機から、ダガーへの攻撃はなかった。

上空からも近寄ってくる気配なんてなかった。

ECMも、レーダーに他の機影もない。


「大丈夫!ここなら上昇の負荷がないから」

「落ち着いて戻ってこい」

「スコア、取り返しましょう!」

目の前の2機を落としてスコアを取り戻せばいい。

上空の2機は気になるが、まだレーダーに映らない。


「周辺、機影なし、です。戻ります!」

何があったのか分からないけど。このまま合流して仕切り直し。


また、空が光った。


「ええ!なんで!?」

戦闘空域から遥か離れた場所で、ダガー機がまた撃墜された。

咄嗟にキルログを確認。

スピカが撃墜したことが記されている。


「アラートもなかったのに!どうして!」

動きだってなかった。

なのに2連続の撃墜。

ダガーはますます動揺している。


「スピカの野郎!何しやがった!?」

「分からないけど……ジャベリン!迎えに行って!」

「油断するな。渓谷を盾に使え!」


指示に従い方向転換。

高度を下げて渓谷へ入る。

岩壁が横に流れる。


キャンペーンモードにも同様のステージがあった。圧迫感。

少し、息苦しい。

やっぱり地上とか低空は苦手かもしれない。


上に退避したい。そう思って空に視線を送る。

そのとき空が光った。

いや……雲間から光が一筋、走った。


雷じゃない!


「なんで!どうして!」

ダガーが3度、落とされた。

ヘッドセットから悲鳴のような声が届く。

「落ち着いて!大丈夫!今行くから!」


必死でなだめるが、私自身も動揺している。

今の光。雷でなければ、何だ。


ログではやはり、スピカが撃墜したことになっている。

ナイトリーパーの特殊兵装?

でも、あんなの見たことがない。


ダガーの被撃墜によるスコアは、同じ相手に連続して落とされたことで100、90、75と割合が掛けられている。

でも関係ない。スコアは大きくリードされてる。


私はバディのはずなのに……。同じ敵に3度も撃墜を許すなんて……。

ギリッと、奥歯が鳴った。


「なんで……私ばっかり!」

「泣くな!くそ、リスキルかよ!?」

「でも、スピカは動いてないよ?」


何よりもダガーのメンタルが心配。


「スモークを使って!こっちに来て!」


セイバーとメイスの2機は、まださっきの2機と戦っている。

撃墜には至っていない。

先輩たちにしては時間がかかっているような。


ダガーを連れて、急いで合流しなきゃ。


遠くにスモークが見えて、ダガーを目視。


そこで……レーダーがノイズに塗れた。

総毛立つ。筋肉が強張る。


「高度を下げて!渓谷へ!」

ダガーに向けて叫び、機体を反転させようとしたとき。

ミサイルアラートが鳴り響いた。


咄嗟にフレアを射出。

機体を90度近く傾けて急旋回。


渓谷に入り損ねた。


そんな私たちの目の前には。

機首が鋭く、主翼が全方向に突き出した独特なシルエット。

さらにもう1機、デルタ翼の機体。コクピット付近から伸びた一本角が嫌でも目に付く。


ナイトリーパーとストームエッジの2機編成。

スピカたちがこの高度まで降りてきてる。


「スピカです!」

「なんだと!」

「メイス、ECMを!」

「ダメだ!遠い!」

メイスのECMの効果範囲の外に出てしまっているらしい。

思わず息を呑む。


「助けに行くよ、メイス!」

「耐えろ!頼むぞジャベリン!」


サーペントたちが消極的に戦ってたのは、もしかして、このため?

いつの間にか距離を離されていた?

レーダーが潰れて確認できない。

でも、あり得る。


今はそんなことより、生き延びないと。

どうする。どう逃げる。

周囲を素早く見回す。使えそうなのは、やはり渓谷。

何が何でも下へ。

いや。でも。読まれてたら?

逃げ道を失う。

いや。でも。このまま戦うのは危険。


ぐるぐるする思考をミサイルアラートが遮った。

「スモーク!」

「う、うん!」

敵のECM影響下だ。逃げの一手しかない。

スモークに籠ってミサイルを回避。


「高度を下げて!渓谷に逃げる!」

「り、了解!」


スモークが有効なうちに、渓谷を通って少しでも先輩たちに接近を。

でも。


「アラート!また!」

再度のミサイルアラート。

渓谷に急ぐあまりスモークの範囲から出てしまった。

フレアを撒きつつ上昇。


渓谷の先に見えた。スピカの機体。

ルートを読まれている。


そのスピカが機首を上げ加速。迫る。後方からストームエッジも来た。

敵ECMの効果でヴァイパーは使えない。

ダガーのスモークを盾に機銃で戦うしかない。


機体をロールさせ横に倒す。ピッチアップで旋回。

スピカ機の背後を狙う。スピカ機も急旋回。目の前からスっと消える。

速い。鋭い。

初めて交戦する機体だが、翼の形状から察するに格闘戦もいけるタイプだ。

僚機のストームエッジも撃ってきた。方向転換し回避。


レーダーが使えない以上、目で2機を追う。

動きが激しく、目まぐるしい。捉えきれない。

相当まずいことだけ、被ロックのアラートで分かる。


視界が歪むような錯覚。

喉がカラカラになるのを感じる。


ミサイルアラート。撃たれた。

「スモークだよ!こっち!」

ダガー機の放ったスモークが見えた。方向展開しフル加速。急いで逃げ込む。

ミサイルが空を切る音が間近に聞こえた。


呼吸が浅くなる。


「スモーク、残弾0です!」

回避に手一杯でジリ貧だ。

もうフレアも使い果たした。

この煙が晴れたら……。


冷や汗が額を伝う。


時折、煙の外から機銃の音が響く。

すぐ間近のスモークを揺らしながら、光の筋が通り抜けた。

一部が機体を掠め、甲高い音を鳴らした。


動悸が激しい。息苦しい。


「くそ!間に合え!」

セイバーたちは救援に来てくれている。

でもそれは、取れたはずのスコアを手放したことを意味している。

これ以上、スコアを離されるわけにはいかない。


どうしたら……。


煙の中で、私の思考は完全に止まってしまった。

何もできずにいた。


どれくらい固まってしまったかわからないけど。


「レーダー、見えるよ!」


メイスのECMが敵ECMと干渉し出す頃には、

スピカたちは上空に帰還していた。


程なくして終了のブザーが鳴ったとき、安堵するかのように大きく息を吐いていた。

助かった。

ラウンドを取られた悔しさよりも、真っ先に思ったことがそれだ。

今は震えが止まらない。


ダガーの3度の被撃墜に対し、こちらのスコアは僅かな削り点のみ。

スコア差は絶望的。セレスティアルの圧勝だった。

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