表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
4章 春季大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/34

24話 セレスティアル

「高丘学院は、去年の県大会決勝で先輩たちが破ったチームです」

「その前の年も、さらに前の年も、全国大会まで進んだ県内の強豪校ですね」

「『打倒女王。空の威信を取り戻せ』ってところでしょうか」

成田や香取たち1年生ズによるセレスティアルのチーム分析を、私は瞼の上に濡れタオルを置きながら聴いていた。


「とにかく上空に注意です」

「敵は高高度を維持して戦場を支配します」


具体性を欠くふんわりした言葉が多いものの、とにかく高所に陣取る相手だということは見えてきた。


「去年か〜。確かに強かったけど」

「そんな戦い方はしてなかったな」


今年になってから、より多くのチームが連携を意識して戦っている。

まだ競技として日が浅いからこそ、戦い方もすごい勢いで洗練されていく。

今私たちが行っている連携も、来年には通用しないかもしれない。


そんなことを考えていると、濡れタオルの感触が消えて、すぐにまた冷んやりしたものが瞼に乗った。

ひばりが新しいタオルに変えてくれたみたい。


まるで熱の子供の面倒を見るお母さんみたいだ。

……彼女のこれまでの生活においては、当たり前にやってきたことなのかもしれない。

その善し悪しは私がとやかく言うことじゃないけど。

おかげで、冷たくて気持ちいい。


「ひばり、そういうのは私たちがやるから。ひばりも休んで」

「ううん、試合じゃ役に立たなかったもの……。これくらいやらせて」


危険な囮役を成功させ、最後の最後では身を挺して私を守ってくれたのに。

「そんなことないよ」って言おうとしたときに。


「君たち。時間だよ」

山本先生からの招集がかかった。


「三条くん。体調は?」

「大丈夫です!」

タオルを引っぺがして、勢いよく立ち上がった。

さっきまでの不調が嘘のよう。視界も、頭の中もクリア。

オールグリーンってやつだ。


* * *


ステージ裏では既に、高嶺さんたちが待機していた。

全員が星のマークのメイクを、目元や頬に入れている。

ラメが入ってるのか、僅かな光にキラリと反射した。


その視線が、一斉に私たちに集まった。


「お待ちしておりましたわ。女王様」

やはり柔らかな物腰の中に、明確な敵意を感じる。


「鋭い槍をお持ちのようですが……」

一瞬だけ目を向けられて、思わず身構える。


「あの程度の相手に苦戦されるようでは、まだまだですわね」

高嶺さんは頬に手の甲をあて、オーバーな高笑いをする。

高嶺さんの後ろに控えるセレスティアルの他の面々も、それに合わせて一斉に笑う。

そして高嶺さんが右手を挙げた途端に、その笑いがピタッと止んだ。


異様。なんだ、この人たち。


「え~。強かったよ渚さんたち」

でもその挑発も、月子にはまったく響かない。


高嶺さんは大袈裟な身振りをつけて首を横に振ったあと、人差し指を月子に突き付けた。


「あなたを倒して王座に返り咲く。覚悟なさい」

それだけ言い残して、あとは沈黙。

試合開始までの僅かな待ち時間が妙に長く感じる。


* * *


試合開始前のデモシーンで、相手の編成をチェック。


「EF-3k『ミストナイト』、EX-2k『サーペント』、EX-88『ストームエッジ』……あと1機。見たことないのがいます」

主翼が前に突き出てる。変な形。


「あれがスピカの機体か。『ナイトリーパー』。モデルが存在しない完全架空機体ってやつだな」

「珍しいね~。ピーキーで使いづらいって評判なのに」


相手のTACネームは、スピカ、レグルス、アンタレス、プレアデス……馴染みのない文字列が並ぶ。


「お星様だよ」

「星……?そんな星座あったっけ」

「今度教えてあげるよ」


そんなやり取りをしているうちに、1ラウンド目スタートのブザーが鳴り響いた。


渓谷のステージで雲も多め。

上からの視界は悪そうだけど、それでも相手は高高度に出ることが予想される。

だから私たちも上昇。

高度1万mを目指すことを決めていた。

でも急上昇の負荷で、8000あたりで一気に速度を失った。

「一度立て直そう」とセイバーが言ったとき。


レーダーがノイズに塗りつぶされた。


「ECMです!」

「タイミングを見てこちらも展開する。ECCMになる。まず周辺を警戒しろ」

視線を動かし、全方位を探す。

遠くから迫る異変にはすぐに気づいた。


「ブレイク!下です!」

視界の端に白煙を上げる光が見えた。2発。私たち目掛けて昇ってくる。


長距離ミサイル『ワイバーン』。視界外からでも一方的に狙い撃てる兵装だ。


回避動作で散った私たちに、さらに敵機が下から迫る。

2機。急速接近。

大きなデルタ翼とカナード翼。垂直尾翼は1つ。機体下部の角張ったエアインテークを視認した。EX-2k『サーペント』。


もう片方はEF-3k『ミストナイト』。デルタ翼と1つの垂直尾翼。前方のカナードはない。滑らかなシルエットと、細く尖った機首が特徴的。


『どうせ高度を取るから』と合わせにいったところを、完全に裏をかかれた。

上昇でエネルギーを失ったところを狙い撃ってきた。

相手の2機は高出力。上昇にも強い。


下から刺す準備も万端ということか。


「ECM展開!」

メイスのECMが敵の妨害を打ち消し、レーダーのノイズがクリアになった。

安心したのも束の間。レーダーには敵機影が4つ。

上から1機。強襲。

「きゃあ!」

救援に向かう間もなく。ダガー機が落ちた。

主翼が前方向に張り出した機体。スピカの乗るナイトリーパー。

そのまま上昇し高高度へ。


「くそ!挟み撃ちかよ!」


「ご、ごめんなさい!今行きます!」

「待って!」


高度8000mで戦う私たちには、別の問題が浮上した。

出力の低いダガー機ブルーコメットは、上昇によって即座に速度を失う。


「ダガー単機をこの高度まで上げるのは危険です!」

私が敵なら当然、狙い撃つ。


「退くよ!あっちのECMあとどれくらい?」

「10秒ってとこだ。合図する」

「じゃあ、その前に1機やろう。みんな手伝って!」


セイバーの後ろにつき、EX-2kサーペントを狙う。

割って入ってきたEF-3kをメイスが止める。


「急げ!上からも来る!」

「ジャベリン!」

「ヒュドラ、FOX3!」

マルチロックを、上空から急降下中のスピカたち2機へ射出。

敵2機はフレアを吐いて旋回。

降下の勢いのままミサイルに突っ込んでくれることを期待したけど。反応が速い。


でも上からの攻撃は、一瞬、拒否した。

セイバーと敵サーペントを1対1に追い込んだ。これなら。


「ナイスキルだ、セイバー!」

1機分、スコアを取り戻した。


「時間だ!ECMに紛れて逃げるぞ!」

「ずらかるよ〜!」

敵のECMが切れ、メイスのECMのみが有効になった。

今は敵側のレーダーが使い物にならない時間だ。

この隙に各機アフターバーナーを全開。一斉に離脱を図る。


一瞬の間を置いて、敵ミストナイトも追ってきた。

「ジャベリン、そのままダガーと合流しろ!」

セイバーとメイスの2機が、それぞれ斜めにループを描き後方へ。

すぐさま、ミストナイトを仕留めた。


先輩たちが後方に飛んだことで、私は今、1機。

そこに上からスピカ機が降ってきた。

この状況、狙いすましたかのよう。


でもメイスのECMはまだ有効だ。

ミサイルは来ない。大丈夫。

と思ったら、青い光線が機体を掠めた。

パルスレーザー。敵がECMを展開しようと関係ない。

ロックせず直接当てる、ということか。

咄嗟に高度を下げつつ、バレルロール。斜めにループを描く。少しでも射線から外れる。


少し食らったけど、スピカは深追いすることなく上空へ戻った。

そこへセイバーとメイスが合流。


「深追いしてこない。クレバーなやつだ」


先輩たちの2機撃墜によって、このラウンドは何とか先取。

勝ちはしたけど……。

ミストナイトが深追いしてこなければ、スピカが私を落としていたら、このラウンドは負けていた。

相手のちょっとしたミスに救われたに過ぎない。

戦略を打ち破ったわけではない。


打開策を打ち立てないと。このままでは負ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ