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蒼空トレイル-Aozora Trail-  作者: ふらっとん
4章 春季大会

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22話 剣を掲げた兎のマーク

「高度を取ります!もう一度、みんなの目になります!」

やることはシンプル。2ラウンド目の応用だ。


「でも、飛んだら狙われちゃう!」

そうだけど、このまま何もしなければ負ける。


「最後のECMを使う!タイミングを合わせるぞ、上がるときは言え!」

「ECM、ちょっと遅らせて!

 ジャベリンを狙って飛び出す敵機がいるはず」


そこでセイバーは言葉を切る。

「撃墜カウント、いただいちゃうよ!」

通信越しにも分かるくらい、楽しげな様子で宣言した。


「だが、上からでも相当見づらいぞ」

「水面の航跡を追います!たぶん、それなら!」

見づらいのは承知の上。それでも海面で周囲を見回すよりマシだ。


「OKだ!ジャベリン、飛べ!」

「はい!ダガーをお願いします!」

機首を上に向けフルスロットル。上昇を開始。


周囲に広がっていた青黒い海面が、一気に視界の外に消えた。

同時に、脳が揺れるような感覚。胃から何か熱いものが込み上げてくるよう。

必死で押し留める。

ただのVRだからGなんてかからないのに。おかしいな。


私に続いて、海面から別の1機が飛び出した。

AX-16『ブレイズ・レイブン』のコンパクトなシルエットが見えた。

狙われてる。被ロックのアラートが鳴る。


「ECM起動!」

振り返らず、そのまま上昇を続ける。

「いっくよ~!FOX3!」


アラート音が消えた。

レーダー上では、6時方向の敵機反応が消失。


「ナイスキル、セイバー!」

おかげで息苦しさが少し良くなった。


「えへへ~!スコア、ちょっと取り戻したよ!」

「まだリードされてる、油断するな!」

「は~い!リザードと遊んでくるよ~!」


海を見下ろすと、セイバー機が海面に戻っていくところだった。

白波の動きや航跡の様子を見る。

機体シルエットから誰のものか判別する。


「メイスの9時方向にダガー!後ろから狙われてます!」

「了解だ、任せろ!」

まずはダガーが孤立しないよう、メイスに位置を伝える。


やっと敵の動きが見えてきた。

ダガーを追い込むように敵2機が追い、リザードはセイバーに圧力をかけている。

さっき撃墜されたAX-16は、リザードの僚機だったはず。

たぶん、今までメイスが抑えてた。


今は、1対1と2対2が同時に進行してる。

「セイバーへ!敵が海面をループしてます!もう一回来る!」

単純な数なら五分五分だけど。

撃墜女王セイバーをして、この環境化ではギリギリの戦いを強いられている。


「ダガーの正面に2機!右旋回!」

「了解だ、高さに気をつけろ!」

「これ飛んでる?まだ生きてる?ねえー!」

ダガーを守りながらこの環境で戦うのは、メイスでも難しいはず。


今は敵からの攻撃を避けつつ、少しずつ機銃で削り返している。

スコア差も縮まってきた。

でも、復帰したAX-16が合流されたら厄介だ。


合流を阻止する。最優先の、次の打ち手だ。


じゃあ、どこから来る?

クロウラーの戦い方を考えるなら、多分海から来るはず。

でも、単騎で空にいる私は、格好の的のはず。


レーダー照射アラートが鳴り出した。

それは敵が迫っていること。

同時に、メイスのECMの効果が切れたことを意味する。

つまり丸裸だ。


何かあればフレアで凌ぐ。指をボタンに添えておく。


遠くに見えた。

11時方向。空だ。

高度を取ってる。

意図は明白。空の目を脅威と判断した。

私を潰しに来た。


「空!交戦します!」


定石なら、私のヒュドラを警戒するはず。

でも構わず飛んでくる。

ヒュドラを積んでないことがバレてる。


だったら、ワスプの距離に来たら叩き込むのみ。


でも、違う。

先に撃たれた。

セミアクティブ式のミサイル『バーゲスト』だ。

目視で誘導するタイプ。フレアが意味を為さない。

回避は強いられるけど。

大丈夫、避けられる。

ターゲットを目視し続けなければいけない性質上、激しい動きには弱い。

機体を90度ロールさせる。


そのとき。

「ジャベリン!ブレイク!」

即座にフレアを射出し、Gをかけての急旋回。

下からのミサイルがフレアに吸い込まれた。

リザード機のヒュドラだ。突き上げてきた。


まずい。2枚で私を潰す意図だ。


アフターバーナー全開で空に駆け上がる、AX-18のシルエット。

これがトカゲ?

海の底から海面の獲物を喰らい豪快に飛び上がる。

これは鮫だ。


急いで方向転換。このままでは挟まれる。


「今行く!」

「敵、スモークです!」

「くそ!こんなときに!見えねえ!」


「うそ!全機上がったの!?」

セイバーからの通信で状況を察した。

多分、みんなも追って機首を上げている。


けど……。


冷や汗が額を、背を、伝った。

生唾を飲み込む音を自分で聞いた。


1対4は非効率的。実際そう。

でも今は状況が違う。

残り時間も迫る。


私が潰されたら、このラウンドは取られる!


みんなが来るまで、凌がなきゃ。


急いで周囲を見回す。

進行方向の先に、煙を撒きながら上昇する機体が2。

進路を変更。そっちも敵。

ミサイルアラートが止まない。

もう一度、フレア。

でも、どこに逃げても敵。


呼吸が荒いのが分かる。

打開しなきゃいけないのに。

何も。

何も、浮かばない。


TX-04のスモークとともに上昇してきたRF-29から、連装式のミサイルが4発、見えた。

フレア。ボタンを押す。


カチリと。乾いた音だけが鳴った。


他は何も鳴らない。

HUDの隅で残数0の表示が赤く点滅し、揺れた。


「ジャベリン!だめー!」

突如、目の前が真っ青になった。

スモークの中。でもHUDが、レーダーが生きてる。

これは。敵のじゃない。

ダガーのだ!


スモークの外で爆発音。光だけが僅かに見えた。

さっき放たれたミサイルが、ターゲットを見失って中空で破裂した。


「ごめんなさい!当たっちゃいましたー!」

「上々だ!後は任せろ!」

メイスと、ダガー。

ダガーは、たぶんさっきの爆発に巻き込まれて落ちてしまった。


「悪いな!出遅れた!」

でも。味方の声が、とても温かい。

「こっちの2機をやる!ジャベリンを頼むぞ!」

紙一重で救われた。

「セイバー!」

そして。


「了解~!」


目の前に、鋭角的な機影。斜めに張り出した垂直尾翼。

その尾翼には剣を掲げた兎のマーク。


最も頼もしい空の女王が。そこにいた。


「倒すよ!」

「はい!」

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